短編2
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電車

帰り道である。

いつもの時間の電車に身を委ね、いつものように眠りに落ちた。

片道2時間で会社に通う私にとって、通勤電車の時間は貴重な睡眠時間なのだ。朝も早起きなかわり、とにかく電車のなかでは眠ることにしている。

「T駅、T駅です。お出口、左側です」

車内アナウンスである。

いつもの事だ。

私は何故かいつもこの駅で目が覚めてしまう。

そしていつも、そこで同じ女性が車両に乗り込んで来るのを見る。

目があう。

そして、彼女は正面の席に座って、バッグを膝の上にのせる。

いつも同じなのだ。

この流れが、いつも、いつも、いつも、

全く同じように繰り返される。

不思議である。

そして、私はまた、目を閉じて眠りにつく。

これを繰り返す。

そして今日も、彼女は電車に乗り込んできた。

目があう。

彼女は正面の席に座って、バッグを膝の上においた。

そこまでは

しかし、今日は彼女の動きがいつもと違う。

彼女は一度周囲を見渡し、それが済むと私をじっと見つめるのだった。

めずらしいことだが、今日この車両の乗客は、私と彼女の2人きりだった。

それを確かめて、彼女は正面から私に話しかけてきた。

「いつもこの電車にのっていますね」

「えぇ、会社は10時までしか残業できないので、この電車が都合良いんです」

「あなたはいつもどこまで乗って行くのですが?」

「終点のH駅までです」

「そうですか」

いったん話が途切れたが、彼女はまた話かけてくる。

「3か月程前、この電車は人身事故をおこしています。ご存じですか?」

その問いかけについて考えてみた。

「いいえ、知りません」

心当たりがない。

「そうですか・・・でも」

「え?」

「大変言い辛いのですが・・・その事故で亡くなったのは、多分あなたですよ」

ぞっとする。

立ち上がり、振り返る

ガラス窓は車内の光を反射して、鏡のように車内の様子を映し出している。

だが、そこには彼女1人の姿が映るのみで、私の姿は無いのだった。

怖い話投稿:ホラーテラー コニーテールさん  

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