短編2
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うつつ

寝ぼけていただけであればいいのですが。

私がまだ大学生で、実家に住んでいた時のこと。

バイトのない日だったので、夕方大学から帰って、仮眠を取っていました。

ふとお腹が空いて目が覚めると、外はもう暗闇。

部屋の中も電気をつけていなかったので、真っ暗でした。

私はドアの方を向いて寝ていたのですが、ドアの下の隙間から、廊下の光が差し込んでいました。

その光が、不意に途切れたのです。

誰か外に立っています。

ああ、お母さんかな。と思っていると、音もなくドアが開きました。

うちの母親は、いつも私の部屋に入る時、「とんと〜ん」と言いながら入ってくるのです。

(何故手でノックをしないのかは不明)

もちろん妹も父も、ちゃんとノックします。

そのため、母親ではないと分かりました。

その人物は中に入って来て私を見下したまま、微動だにしません。

開いたドアから僅かに廊下の光が差し込みますが、その人の顔は全く分かりませんでしたが、髪が長いので女性だと分かりました。

「なに?」

不思議と怖くはなかったので、やはり寝ぼけていたんでしょうか。

尋ねても、その人はぴくりとも動きません。

寝起きの私は機嫌が悪かったため、

「何よ!」

と怒鳴りつけました。

その時、窓の外がほんのりと明るくなりました。

隣の家の二階の部屋に、電気がついたようです。

薄暗い中、ぼんやりと見えたその人は

笑っていました。

口元だけしか見えませんでしたが、やはり女性です。

やたら歯並びがよかったのを覚えています。

これはヤバいと目を瞑って再び目を開けると、彼女は消えていました。

少しだけ開いたドアも、電気のついたお隣さんの家の窓もそのまま。

彼女だけが消えていました。

その後家族に聞きましたが、誰も私の部屋には来ていませんでした。

多分夢うつつの状態で、幻でも見たんでしょうが…

ああして一喝したにも関わらず、この間また彼女に会ってしまいました。

今度は怖くて、声も出せませんでした。

怖い話投稿:ホラーテラー ローレライさん  

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