寝ぼけていただけであればいいのですが。
私がまだ大学生で、実家に住んでいた時のこと。
バイトのない日だったので、夕方大学から帰って、仮眠を取っていました。
ふとお腹が空いて目が覚めると、外はもう暗闇。
部屋の中も電気をつけていなかったので、真っ暗でした。
私はドアの方を向いて寝ていたのですが、ドアの下の隙間から、廊下の光が差し込んでいました。
その光が、不意に途切れたのです。
誰か外に立っています。
ああ、お母さんかな。と思っていると、音もなくドアが開きました。
うちの母親は、いつも私の部屋に入る時、「とんと〜ん」と言いながら入ってくるのです。
(何故手でノックをしないのかは不明)
もちろん妹も父も、ちゃんとノックします。
そのため、母親ではないと分かりました。
その人物は中に入って来て私を見下したまま、微動だにしません。
開いたドアから僅かに廊下の光が差し込みますが、その人の顔は全く分かりませんでしたが、髪が長いので女性だと分かりました。
「なに?」
不思議と怖くはなかったので、やはり寝ぼけていたんでしょうか。
尋ねても、その人はぴくりとも動きません。
寝起きの私は機嫌が悪かったため、
「何よ!」
と怒鳴りつけました。
その時、窓の外がほんのりと明るくなりました。
隣の家の二階の部屋に、電気がついたようです。
薄暗い中、ぼんやりと見えたその人は
笑っていました。
口元だけしか見えませんでしたが、やはり女性です。
やたら歯並びがよかったのを覚えています。
これはヤバいと目を瞑って再び目を開けると、彼女は消えていました。
少しだけ開いたドアも、電気のついたお隣さんの家の窓もそのまま。
彼女だけが消えていました。
その後家族に聞きましたが、誰も私の部屋には来ていませんでした。
多分夢うつつの状態で、幻でも見たんでしょうが…
ああして一喝したにも関わらず、この間また彼女に会ってしまいました。
今度は怖くて、声も出せませんでした。
怖い話投稿:ホラーテラー ローレライさん
作者怖話