5年程前のある夜、何年も片思いだった女友達の有紀と星を見に〇〇高原の駐車場に向かった。
その日は天気が良く、星がはっきりと見えそうな夜だった。
俺の頭の中では、車から降りて満天の星を見ながらそっと肩を抱く…そして「クサいセリフの一つも決めて告白しよう」と意気込んでいた。
駐車場に着き予定通り有紀を誘う俺。
それに黙ってついてくる有紀。
こんな所まで来てなんだが、俺は星や星座なんて何も知らない。
だけど空を見上げると本当に綺麗な星空だった。
俺達は草原に腰を下ろす。隣には有紀。
緊張しすぎで考えていたように肩を抱く事が出来ない。
そんな俺を察したのか、有紀の方から俺の肩にもたれて来た。
有紀を見ると恥ずかしそうに俯いている。
「ゆ、有紀俺な…俺…」
頭の中が真っ白だ。
それでも意を決して告白しようとした時、突然携帯が鳴る。
(誰だよ!こんな時に!)
俺は「ちょっとごめん」と電話に出た。
友人の弘治だった。
電話に出ると弘治は焦ったように
「裕二!何回も電話したんだぞ!お前いまどこにいるんだ!?」
しばらく山際走っていたので圏外だったようだ。
高みにいるので繋がったのだろう。
「悪い、いま〇〇高原にいるんだ。有紀と」
「有紀!?そんなわけないだろ!有紀は夕方車に跳ねられてたった今息を引き取ったんだぞ!」
何?何言ってる?
俺は有紀を見た。
有紀はゆっくり立ち上がり寂しげな笑顔を向けた。
そしてか細い泣きそうな声で
「知っちゃったね…ごめんね。……裕二、私の事好きだったでしょ?弘治から聞いて知ってたんだ私。…私も裕二の事好きだったよ。もう少し早く言ってくれたら私…」
俺は泣いた。
涙が止まらない。
有紀を抱きしめるとかすかな温もりを感じた。
「さよなら…裕二、愛してる」
そう言った有紀は夜空に吸い込まれるように舞い上がっていく。
「有紀、俺お前の事が好きなんだ!愛している!行かないでくれ!」
そう叫ぶと、有紀はにっこり微笑みながら空の彼方に消えていった。
どれくらい泣いていただろう?
泣き尽くした俺は、有紀のいる病院に向かおうと車に乗り込むと、助手席には有紀が大事にしていたシルバーのブレスレットが置いてあった。
「有紀…」
ブレスレットはいまでも俺の大事な宝物だ。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話