短編2
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呪いの木

何年か前のお話です。

その日は、当時付き合っていた彼氏と、彼氏の友人A君と

当ても無くドライブしていました。

そして私が何気に

「そういえばこの辺に、切れない木があるの、知ってる?」

と話しはじめました。

「山の中の、道の真ん中にね、一本だけ木が生えてるんだけど、

それを切ろうとした人達が、次々と死んだりケガしたと言う・・・」

私がそこまで言い終わるかどうかという所で

A君がすかさず口を挟みます。

「ばーか、お前そんなのウソに決まってるじゃん。

・・・案内しろ。」

と、勢い良くハンドルを切り、山に向かって方向転換しました。

まあ、お約束の展開です。

山の名前はもう忘れましたが、道はうねうねと曲がりくねっていて

先が全然わかりません。

周りは切り立った山肌ばかりで、対向車もまったく来ないような

寂しい山道です。

その街頭一つない真っ暗闇の道を、ヘッドライトの光だけを頼りに

進んでいきました。

屋根だけの半トンネルみたいな道に入り、

幾つかのカーブを過ぎた時です。

「あった!あれだよ!」

目の前に、その木が現れました!

避けるように奇妙に曲がった2車線の間に

更に奇妙に曲がりくねってトンネルの屋根を突き破っている

明らかに不自然な木が、ヘッドライトに浮かび上がりました。

それはまるで、突然の強烈な光に

驚いて身をよじっているかのようでした。

そして次の瞬間、

ガクン!と車が前にのめってスピードを落とし、

木の方に向いたのです。

この時はまだ、私と彼氏は余裕があったので

「まあた、A君冗談やめてよー」

と笑いながら運転手であるA君を見ました。

見ました・・・顔面蒼白なA君の顔を。

「・・・オレじゃねぇ」

その言葉に車内の空気は凍りつきました。

「オレじゃねぇよ!アクセル床までベタ踏みだよ!

ハンドルも動かねぇ、車が勝手に行くんだよ!!」

A君は殆ど絶叫していました。

私達はなす術も無く絶句していました。

そうしている間にも車はどんどん回転数を落とし

木に向かっていきます。

フロントガラス一杯にあの奇妙な木の幹が迫ってきていました。

「もう駄目だ・・・」

A君の絶望的な呟きにみんなが、ぶつかる!!

と、覚悟したときでした。

前方からチラリと何かの光が見えました。

その瞬間!車は突然息を吹き返しグッと方向転換して

間一髪、衝突は免れました。

スピードもどんどん回復し、木の横をすり抜けました。

光の正体は対向車でした。

私達はそのまま無言で家路に着き

その後その話題は二度とされませんでした。

怖い話投稿:ホラーテラー 1ヒメさん  

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