ブロスノ・ドラゴン

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ロシア西部トヴェリ州のブロスノ湖で、何世紀にも渡る伝説として語られてきた怪物。
ロシア語ではブロスニーまたはブロスニャと呼ばれる。
恐竜または伝説のドラゴンのような怪物とされ、体長は約5m、身体は玉虫色で魚もしくはヘビのような頭を持つ。
ブロスノ・ドラゴンの目撃は少なくとも1854年頃から記録されているが、伝説は13世紀にまでさかのぼる。
モンゴル帝国のヨーロッパ遠征軍を率いたバトゥの一団が、ヴェリーキー・ノヴゴロドの街を目指す途中にブロスノ湖で休息を取った。馬が水を飲んでいると突然、巨大な怪物が現れて馬や兵士を食べた。モンゴル軍は恐れをなして逃げたため街は侵略を免れた。
モンゴル軍はロシア全土とヨーロッパの一部を占領したが、当時ノブゴロド公国の首都だったこの街だけは怪物のおかげで生き延びたと伝えられる。
別の伝承では漁師を食べる「巨大な口」と表現されている。また、まれに巨大な砂山のような物が湖に現れるという。バイキングが盗んだ財宝を隠すため、湖の島に近づいたところ、怪物が現れて島を飲み込んだという伝説もある。
18世紀から19世紀にかけて、怪物は夜現れ人々が近づくとすぐに姿を隠すという噂が流れた。第二次世界大戦中には、怪物がナチス・ドイツの航空機を食べたという噂もある。
1996年にモスクワから訪れた旅行者がブロスノ・ドラゴンの写真を撮影している。同じ年の暮に、ジャーナリストや報道関係者、カメラマンらがブロスノ湖を調査し、怪物は伝説に過ぎないとの見解を出した。
翌97年に岸の近くを泳ぐ怪物が目撃された。周辺の住民に不安が広がり、怪物の襲撃を恐れて家の守りを固めている様子を、イタルタス(旧国営タス)通信が報道している。
2002年夏にはロシア国内のUFOや未確認生物の研究者を統合する組織「コスモポリスキ」が専門家を派遣し、水中の音波探査を行った。モスクワの新聞報道によると、湖の底から5mほどの水中で、列車ほどの大きさがあるゼリー状の物体を探知した。その物体はしばらくその場に留まっていたが、探査装置が爆発を起こしたような異常を示したため引き上げると、その物体が浮かび上がってきた。調査隊はその物体を間近に見て写真を撮影している。
それは伝えられているブロスノ・ドラゴンの姿とは異なり、白みがかった巨大な肉塊のような物体だった。この目撃は新たな謎を呼んでいる。
一般的にブロスノ・ドラゴンの正体は、変異したビーバーもしくは巨大なカワマス、イノシシ、ヘラジカなどが湖を泳いでいる姿を見間違えたとする説が唱えられている。
科学者は湖の水温は爬虫類が生き延びるためには低すぎるため、恐竜の生き残り説を否定している。
一方、自然現象による解説も提唱されている。大量に湧き出た硫化水素の大きな泡がドラゴンの頭に見えたというものだ。ブロスノ湖ではたまに水面が大きく泡立つことから、湖は火山湖で湖底の亀裂からガスが噴出しているという主張だが、そうした地形は確認されていない。
ブロスノ湖ではよく見かけられるワカサギの大群が水面近くを泳ぐときに、光の屈折で巨大な怪物の頭に見えるという説明もある。こうした現象は比較的水温が高い時に起りやすく、実際に目撃も夏場が多い。