ドーバー・デーモン

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"アメリカ、マサチューセッツ州ドーバーの町で、ごく短期間に目撃された不気味な姿の人型未確認生物。
最初に目撃されたのは1976年4月21日の夜である。17歳のウィリアム・バートレットと2人の友人は3人でドライブを楽しんでいた。車が農道を走っていると、バートレットは道沿いに積まれた石垣の上を何かが這っているのを目にした。はじめは犬か猫ではないかと思ったが、ヘッドライトがそれを照らすと人の姿をしたものが振り返り、瞼のない二つの大きな目が輝いた。
車が通り過ぎると、化け物もどこかに行ってしまった。わずかな間の出来事で、友人たちはその姿を見ていない。
2時間後、今度は15歳のジョン・バクスターがガールフレンドの家から歩いて帰る途中、何者かが近づいてくるのに気が付いた。それは背が小さかったので、近くに住む友人と思って声をかけたが返事がない。さらに近づくと相手は立ち止まった。バクスターが「誰だ」と声をかけると、それは近くの樹木の間を流れる水路に向かってすばやく逃げていった。斜面を下るときにその怪物は振り返った。
翌日の深夜には15歳の少女バビィ・ブラバムが、やはりボーイフレンドの家から帰宅途中に、通りでしゃがみこんでいる怪物を目撃した。
3人のうちバートレットとバクスターは化け物の姿を絵にしている。
衣服を着ておらず、赤ん坊のように滑らかな皮膚は、ばら色がかったオレンジ。赤や緑に変化する大きな目が特徴的だ。毛のない頭はスイカのように丸、鼻と口はない。身体に対して頭が異常に大きく、手足や首は極端に細い。バートレットの絵には細く長い指が描かれている。それは巻き毛のように丸くぴったりと石をつかんでいる。二人の絵はいずれも四つんばいの姿だ。
バクスターの証言では走る速さがとても早く、止まっているときは二本足で立つこともできる。身長は120cm程度だという。
目撃された場所がごく狭い範囲であること。時間帯が夜で、怪物が現れたのは二晩に限られる。目撃者も3人しかいないために、ドーバー・デーモンの存在は未確認生物の研究者の間でも懐疑的だ。
その正体はマサチューセッツ州に多く生息する野生のヘラジカや猿、犬、あるいは赤みがかった毛並みが特徴の子馬だという意見が多い。
未確認生物研究家のローレン・コールマンは、信憑性が疑われるこの怪物を独自に調査した。彼はバートレットたち目撃者の証言をまとめ、ドーバー・デーモンと名付けた。コールマンは3人の目撃場所が一本の線で結ばれ、それが磁石の方向と一致していることに気づいた。いずれも小川や水路に近く、怪物は水辺と何らかの関連があると考えられている。
コールマンの報告によって、ドーバー・デーモンは世界的に知られるようになった。ヘラジカ説と関連付けてアイルランドの伝説に登場する妖精プーカとの類似性を指摘する者がいる。また、目撃者の絵が“グレイ”タイプのエイリアンに似ているため宇宙人説も唱えられている。
ドーバー・デーモンの知名度が上がり、マスコミが取り上げることも多くなった。地元警官はAP通信の記者に、目撃した少年たちがでっち上げた作り話だろうと答えている。バートレットはその後画家になり、新たにドーバー・デーモンの絵を描いた。マスコミの取材に対して確かに怪物を見たと、でっちあげ説を否定している。
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