アタカマ・ヒューマノイド

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"アタカマ・ヒューマノイドは、南米チリのアタカマ砂漠で発見された骸骨型のミイラである。別名アタカマ骸骨。地元チリのマスコミが略して呼んでいる「アタ」としても知られる。
その異形な姿から世界で最も不可解な骸骨の一つとされ、発見から10年にわたりエイリアンや奇形児の死体、胎児のミイラ、作り物といった様々な推測がなされてきた。
事の発端は2003年01月9日、チリの地方紙に掲載された記事だった。アタカマ砂漠のラ・ノリアというゴーストタウンにある教会の廃墟で、オスカー・ムニョスが布に包まれたものを発見した。中には異常な姿の小さな骸骨があった。それは尖った頭を持ち、身体はわずかに皮膚が残るが肋骨はむき出しだった。
ムニョスはその骸骨を居酒屋の主人に3万ペソ(51米ドル)で売った。その後現在の所有者であるスペイン人でバルセロナの実業家ナビア・オソリオの手に渡った。
アタカマ・ヒューマノイドはエイリアンを連想させる長く尖った頭蓋骨が特徴だ。身体は頭蓋骨に比べて小さい。UFO研究家はこれが地球外生命体による地球訪問の証拠と期待し、懐疑論者と論争に発展した。
2013年4月、アメリカでアタカマ・ヒューマノイドのドキュメンタリー映画『シリウス』が公開された。この映画ではアメリカ各地の大学研究者に依頼した独自の科学的検査を紹介している。
それによると、肋骨は通常の人間なら左右12本あるところが10本しかない。さらにCTスキャンでは胸部に肺や心臓といった臓器が確認された。後頭部には穴が開いており、中絶の際に器具を引っ掛けたために出来た可能性が指摘された。
免疫学者のギャリー・ノーランは早老症の一種で早死にしたと考えた。さらに小人症の可能性も検討したが、遺伝子の検査からはその証拠が見つからなかった。
小児科の専門家はこのような症例は見たことがないという。UCLAの名誉教授ラルフ・ラックマンもアタカマ・ヒューマノイドに見られる異常は、小人症には知られていないとの見解だった。
解剖学者で古人類学者のウィリアム・ユンガーは、頭蓋骨の前頭縫合線が大きく開いており、手と足の骨が十分に形成してない点から早産の胎児ではないかと推測した。
ミトコンドリアDNAの検査で、通常は対になっている遺伝子が片方しかなく、人間としては未知のDNA配列を持つ。
X線検査では骨格が本物であること、完全な動脈の影が映し出された点から、作り物ではないかという意見は否定された。
総合的な検査により、アタカマ・ヒューマノイドの身長は15cm、性別は男性、死亡時の年齢は生後6歳から8歳で、数十年前のものという結果になった。中絶や早産といった可能性は否定されたが、各分野の研究者が行った検査は、アタカマ・ヒューマノイドのエイリアン説を否定したものの、奇形などの異常を持った人間としては前例がないという結論だった。
なお、アタカマ・ヒューマノイドに類似した小型のミイラがかつて南米にあり、その関連性が指摘されている。
2013年にアメリカで発行された、ニール・トンプソン著『奇妙な男:ロバート“信じるか信じないか”リプリーの奇妙で華やかな人生』という本があり、富豪ロバート・リプリー(1890~1949)が世界中から集めた珍奇な品々が掲載されている。この中でペルーのインディオ、ヒバロ族に関連して身長16.5cmの「アッタ・ボーイ」という小型のミイラが1933当時の写真付きで紹介されている。
ヒバロ族はかつて首狩りの風習を持ち、手に入れた首を乾燥して縮小させることで知られている。リプリーはヒバロ族の人体縮小技術に魅了されつつも、どのようにしてアッタ・ボーイを入手したか記録を残していない。著者のトンプソンは両者の類似性を指摘するが、ボリビアのミイラだろうとしている。
南米には未だ解明されない人体縮小技術があり、アタカマ・ヒューマノイドの由来を探る新たなキーワードとして注目されている。"