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"沖縄県、八重山諸島最大の島である西表島。その生態系の頂点はイリオモテヤマネコだとされているが、そのさらに上に位置する生物がいると言われている。それがヤマピカリャーである。
ヤマピカリャーとは、西表島の方言で「山の中で目の光るもの」という意味。その名前からネコ科の動物が連想されるが、やはりそれは豹のような生物だと言われている。
目撃者がいると言われる一方で、現時点では未確認生物とされている。イリオモテヤマネコの保護などを行っている環境省西表野生生物保護センターも「伝説的な話と把握し、これまでに存在は確認していない」とコメントしているようだ。
ヤマピカリャーは体長80~120センチほど。茶色っぽい体色で、ヒョウのような斑紋があり、長い尾が地面につくほど垂れ下がっていると言われている。非常に身軽で、木から木へと飛び移ったり、3メートル以上もジャンプをすると言われる。西表島西部を中心に合計47人の目撃者がいると言われ、食糧のなかった終戦直後には、ヤマピカリャーを捕まえて食べた、などという話も伝わっている。
ヤマピカリャーに関しては、イリオモテヤマネコや、野生化した飼い猫を見間違えたのではないか、と言われることもある。ちなみに特別天然記念物として知られているイリオモテヤマネコの体長はおよそ50~60センチ。四肢が短く、灰褐色の身体には縞模様や斑点がある。現在ではその存在が公に認められているが、学術的な発見は1965年と新しい。しかし島民の間では、それ以前からその存在が知られていた。
体長から言えば、イリオモテヤマネコの大きさはヤマピカリャーよりも小さいが、見誤る可能性がないとは言えない。また人に飼われている猫であっても、体長1メートル近くまで育った事例があるようだ。
しかしヤマピカリャーの目撃談には、猟師によるものが多いと言われている。山中などで動物を見た時の観察眼においては、猟師は一般人よりはるかに優れているであろう。そのため、すべての目撃証言を見間違いだと断定してしまうのには、無理があると考えられる。また、イリオモテヤマネコの体長や体色、尾の長さなどには、ヤマピカリャーとの相違点が少なくない。
なお、東南アジアなどに生息するウンピョウに似ているという証言もある。ウンピョウは漢字で書くと「雲豹」で、その名の通り、身体に雲のような斑紋がある。体長はおよそ60~100センチほどで、絶滅が危惧されている希少なネコ科の動物だ。名前では「豹」というものの、ヒョウ属ではなく、この種だけでウンピョウ属とされている。別名に台湾虎という名があるが、台湾ではすでにウンピョウは絶滅したと考えられている。目撃証言とその外見が似ていることから、ヤマピカリャーは台湾から西表島に渡ったウンピョウではないか、と考える人もいるようだ。
ヤマピカリャーの毛皮や骨などは発見されておらず、また、西表島ではこのような大きな生物が生息するのは難しいとする考えもある。しかし現在その存在が学術的に認められているイリオモテヤマネコには、島民の間では昔から「いるもの」とされながら、公には認められていなかった、つまりUMAであったという経緯がある。ヤマピカリャーについても、その存在を完全に否定してしまうのは時期尚早かもしれない。"