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●マッドガッサーの生態

 マッドガッサーはアメリカの田舎町に突然現れて、集中的に毒ガス攻撃を行なった怪人である。怪人は黒ずくめで何度にもわたって現れた。UMA説もあるが、犯行は人間によるものと考えられている。

●マッドガッサーの目撃談、正体

 最初に事件が起こったのは、1933年の12月だった。バージニア州のボトトート群に住むある夫婦がガスのような臭いに気付いた。身の危険を感じた夫婦は警察に通報したが、犯人は見つからなかった。しかし警察が去った後に、またガス攻撃が行なわれた。この夫婦は地主のところに避難していたのだが、その地主の家までガスで攻撃された。家の周りでは女物の靴の後が見つかった。

 その後も類似の事件が発生し、女物の足跡や男女ののった不審な車が目撃されている。毒ガスを吸った被害者は、吐き気や口・のどの機能障害、しびれなどの症状が出て、中には命の危険にさらされ、痙攣の後遺症が残った被害者もいたという。ガスがなんだったのか、調査されたが具体的な種類については特定できなかった。

 マッドガッサーは最初の事件があった1933年から翌年にかけて、ボトトート群一帯で同様の犯行を十数回繰り返したのだという。34年1月には、住民から発砲されたが逃げ切り、警察による道路封鎖も突破して姿を消した。事件が複数回に及んだことから、住民によって自警団が組まれたり、捜査が大規模化したりしたが、その頃には模倣犯による犯行も発生した。

 相次ぐ事件の発生で住民は集団ヒステリーを起こしていた。警察は事態をおさめるために、事件の正体は煙突から漏れたガスやイタズラだったと発表した。その後は事件は収束していったという。

 しかしその後1944年には再び事件が発生した。その後事件が多発するようになり、厳戒態勢が敷かれた。武装した警察やFBIによって捜査が進められ住民までも武装したそうだが、事件の捜査はなかなか進まなかった。しかしその後、警察はマッドガッサーなどは存在しておらず、住民が集団ヒステリーや幻覚症状を起こした結果だと結論づけた。そして実際にその後事件は収束していったという。

 マッドガッサーの正体は、公式には集団ヒステリーということになっているが、様々な説がある。精神異常者が異常行動を起こしているという説や、地球外生命体であるという説、またUMAであるという説もある。しかしエイリアンやUMAであるとする説は、その目撃情報などから信憑性が低いと思われる。また事件の発生が最初の1933年から10年以上開けて何度も発生し、87年にも事件が発生していることから、精神異常者などの単独犯による犯行とも考えにくい。

 中にはナチスが極秘に開発した毒ガス兵器の人体実験であったとする説もある。軍が絡んでいたため、警察も隠蔽しようと動いたというのがこの主張だが、これも信憑性は低い。

 実際には、最初はどこからか漏れだしたガスが発端で、それから噂が拡大し、事件が大規模になるにつれて集団ヒステリーが広がったという考えが妥当だろう。それだけで説明できない部分もあるかもしれないが、事件におひれがついて大げさになっている部分があるのではないか。もしかしたら、今後またマッドガッサーによる毒ガス事件が発生するかもしれない。そのときはさらに調査が進み、より確定的な正体が分かるだろう。