イリアムナ湖の怪物

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アメリカ合衆国の北部、アラスカにイリアムナ湖という湖がある。北米大陸でも屈指の大きさを誇っていてその広さは四国と同じくらいだと言われている。その周辺はイリアムナ村という集落となっていて、200人ほどの村人たちが暮らしている。またその村の近くにはニューヘレン川という川があり、イリアムナ湖にもつながっている。そこに毎年遡上してくるサーモンはとても有名で、毎年、そのサーモンを目当てに多くの人々が集まる。
そんなのどかで豊かな自然を育んでいるその湖には一方で、怪しげな怪物が住んでいるという伝説がある。その目撃情報は古く、白人たちがアメリカ大陸に移住してくる前、ネイティブアメリカンたちしか住んでいなかったころからあると言われている。その特徴は、細長く全体的に黒灰色をしているとされており、体長は3メートルから9メートルほどで、人間をも食べてしまう巨大な怪物として恐れられていた。この未確認物体はその後もちらほらと目撃情報があったものの、そこまで注目される存在ではなかった。しかし、その存在を世に知らしめることとなった事件がある。
1963年、とある動物学者が湖の上を小型の飛行機で通りかかった時のことである。湖にとてつもなく大きな動物の影が映ったのである。動物学者たちは戦慄した。飛行機と同じかあるいはそれよりも大きな動物の影が湖の中にいたのである。古くからいるとされる怪物をのぞいてはそのような生物の存在は、その湖には確認されていなかった。そのとき結局最後まで動物学者たちはその動物が水面上に出てくる姿を確認することはできなかったものの、その生物の大きさは飛行機の全長と比べると9メートル近くはあったのではないかと証言した。地元の住民でもなく、また権威のある動物のことに関して精通している学者が目撃したと証言したことで、この怪物の存在は世の中に信憑性をもって知られることとなった。それがきっかけとなって世界中にその怪物の噂が広がっていったのである。
そのことにより、多くの人々がその怪物の正体を追求しようと試みている。有力な説としては、もともと、湖には、イリアムナアザラシという種類のアザラシが生息しているため、巨大なアザラシの影をみたのではないかという説もある。また、ほかの候補として古代生物であるゼウグロドンだったのではないかという説も有力視されている。別名、バシロサウルスとも言われていて、およそ4万年前の地球に生息していたのではないかと考えられている。蛇のように細長い体が特徴である。現在のクジラの祖先と言われており、浅瀬の海に暮らしていた。化石も各地で発見されていて15メートルや18メートルくらいの大きさであったことが予測されている。このような巨大な体なので昔からヨーロッパやアメリカを中心にその化石を用いて怪物の見世物興行がさかんに行われていた。イリアムナ湖にいた怪物もこのゼウグロドンの生き残りではないかと言われている。
しかし、これらのすべての推測はただの推測でしかなく、怪物の正体を決定づけることはできていない。動物学者の影の目撃証言以外に目立った生存確認情報もなく、現在にいたるまでその存在は人々に恐ろしい噂としてのみ語り継がれている。