黒いキューピー人形

若い女性が電車のホームを歩いていたところ、誤って線路へ落ちてしまい、そこへちょうど電車が来て轢かれて即死するという事故があった。
警察が女性の身元を調べようとしたが、女性の遺体は激しく損傷しており、結局そのまま身元不明の無縁仏となった。

女性は賃貸のアパートを借りていた。
アパートの家賃は自動引き落としとなっており、口座残高が尽きて引き落とし不能となるまでかなりの時間を要したのだった。

引き落としが不能となり、家賃が滞納されるようになると不審に思った大家は女性の部屋へ向かった。
大家はいままでも突然家賃が滞納になるケースに遭遇していた。その時は夜逃げであった。
その為、大家は今回の件も直感的に「夜逃げじゃないだろうか?」と感じていた。

女性の部屋のインターフォンを押しても出ない。ノックしても出なかったので、大家は持っていた合鍵を使い室内へ入った。

大家の目に飛び込んできたのは、生活感が感じられ、家財道具から家電製品、生活の必需品まですべてが揃った室内だった。

「よはり夜逃げだったか」と、大家は思ったが、室内に残されていた物はどれもまだ新しそうだったので、これを売れば家賃の滞納は回収できるかもしれないと思い、どのようなものがあるのか確認をはじめた。

そうすると室内の少し奥にある珍しいものに目がついた。
黒いキューピー人形だった。
これはネットオークションで高く売れそうだ。と近寄った大家はすぐにそれはキューピー人形じゃないと悟った。

その黒いキューピー人形は、ハエやゴキブリがたかった変わり果てた乳児の遺体だった。

死んだ女性はシングルマザーだったのだ。
女性が死亡し、無縁仏となったことで、誰もこの乳児の存在に気が付かなかった。
そしてひっそりと乳児は死亡し、このような姿になってしまったのだった。

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