お盆の時期になると私の家には父方の親戚が多く集まって来る。
 この話は、3年前の盆の時期に従兄弟のR君から聞いた不思議な話だ。

 その年の盆の日、私と父は集まった親戚達に振る舞うお酒の買い出しに車でスーパーに向かっていた。
 私達の棲む家は山を切り開いて作られた集合住宅街にある為、何をするにしても車での移動が基本となっている。

 スーパーでの買い物を済ませて、蛇行する坂道を登っていると、ハンドルを握っていた父が「変な人だなぁ」と呟いた。
 何が?と尋ねると、父曰く坂を登る途中に赤い日傘を差している女の人が反対車線に立っていた、との事。
 私も振り返って見てみたが、もう既に通り過ぎていたのか、女性の姿は見えなかった。

「赤い日傘は少し派手だなぁ」
と、父と笑いながら話をして、家に帰った。
 玄関には既に何足もの靴が並べられ、そのまま私達は親戚達の輪の中に入り、わいわいと談笑を始めた。

 暫くしてお坊さんが家に来ると、皆で祖母の使っている仏間へと集まる事になったのだが、この時、家に来ていた当時4~5歳だった従兄弟のR君がおかしな事を言い出した。

「庭にいる人は入れてあげないの?」

 集まった親戚達は皆一様に「?」となり、リビングから抜けられる庭先を見た。勿論、庭には誰もいない。

 R君のお母さんが「庭には誰もいないよ」と言うと、彼はしきりに「いるよ、庭にもいる。入れてあげなくていいの?」と言っていた。

 既に酔っていた親戚のおじさんが笑いながら、もしかしたら死んだおじいちゃんが会いに来てくれたのかもしれないね、などとR君に言うと、

「おじいちゃんじゃない。赤い女の人」

 と、R君は庭を見ながら言った。

 その言葉に何となく、その場にいた親戚達の空気が一瞬、冷たいものに変わったような気がした。

 何か変な空気を感じつつも、私達はお坊さんを招いて仏間に一先ず集まると、読経をしてもらいそれぞれがお焼香を上げる事になった。

 お坊さんがお帰りなる際、先ほどR君が言った事を伝えてみると、小さい子供は時々、普通の人には見えないものを見る。もしかしたらR君には、本当に見えているのかもしれませんね、と苦笑いを返された。

 その後も暫く庭先を気にしているR君に、私はどんな女の人なのか尋ねてみた。

「赤い女の人。赤い傘をさしてる」

 R君の言葉に私は背筋に冷たいものが落ちていく感覚を覚えた。
 その女の人はまだいるのか尋ねると、R君は分からないと答えた。
 彼曰く、さっきまではいたけど、何処かに消えてしまったらしい。

 居なくなったでも、帰ったでもなく、消えてしまったというR君の言葉に私は単に安心できないものを感じたが、幼い子供に何を聞いても、これ以上は仕方がないと思い、その事は頭の隅に追いやって忘れるように努めた。

 それから親戚達がちらほらと帰り始め、うとうとし始めたR君を連れて彼の両親も帰る事になった。

 見送る私に、R君のお母さん(叔母さん)が教えてくれたのは、R君は時々普通の人には見えない何かを見る事があり、そういう時は決まって良くない事が起きるという。

 叔母さんは私と父に「お兄ちゃん(私の父)達も気をつけてね」と言って、帰って行った。

 その後、暫く経ったが結局あの日以降、我が家で赤い傘の女を見たとか、何か良くない事が起きたという事はない。

 今でも家族の中て時折話に上がるが、R君が見たというその女は一体何だったのか、私と父は買い物帰りに坂道で見た、例の赤い日傘の女であろうと考えつつも、今でもよく分からないでいる。

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赤い傘なのは影が無いのを隠すための視線の誘導なのでしたっけ。
その存在がまだ何処かにいるのかわから無いって都市伝説らしいですよね。