二〇〇三年八月十二日午後一時四十分ごろ、青森県の清水川-狩場沢間を走行していたJR東北線青森発八戸行き回送列車の運転士が、前方の線路の上をとぼとぼと歩く老婆の姿を目撃した。驚いた運転士は慌てて急ブレーキを掛けたが間に合わず、接触してしまった可能性が高いということで、すぐさま警察に連絡し、救急車の手配も済ませる。ところが、その後到着した警官や職員らが周辺を捜索したが事故の痕跡はどこにもなく、老婆も忽然と姿を消していた。
 線路を歩く謎の老婆は、事件からおよそ二ヵ月後の十月十日にも目撃された。今度もやはり運転士が電車を急停止させたのだが、老婆はまたもや姿を消してしまったのである。
 JR東日本では、この老婆の正体を「普段から農作業などで線路を歩いていている、逃げ足の速いお婆さん」と推理している。もし、そうであるのなら単なる人騒がせな事件ということになりそうだが、二度とも電車の運転士は老婆と接触したと判断し、警察に通報をしているのだ。一般に、線路上の石の衝撃すら感じ取ることができるといわれる運転士が、そのような錯覚を立て続けに抱くというのはなんとも考えにくいことである。
 また、これに類似した線路からの消失事件は、過去にも意外なほど多く起きている。一九九六年十月一六日、JR山手線御徒町駅に進入中の電車に、グレーの服を着た若い女性が飛び込むという事故が起きた。ところが、すぐさま職員が線路上に降りて確認してみたところ、そこにはなぜか女性の姿はなく、事故の痕跡は何も残されていなかったという。電車に飛び込む女の姿は運転士だけではなく、ホームにいた多くの乗客も目撃しているので、これもまた単なる幻覚とは考えにくい。結局女性の正体は不明のまま、捜索は打ち切られた。
 また、一九七二年には地下鉄丸の内線が新宿三丁目駅付近のトンネルの中で、一九六九年には東海道新幹線が高槻市の付近で、一九六一年には小田急線が梅が丘-豪徳寺間の踏み切りで、同様に線路で目撃された人影がいつの間にか消えてしまうという事件が起きている。中でも、特に興味深いのは小田急線でのケースである。運転士が人影を見たという踏み切りは、以前に三人の姉妹が事故でなくなっているという曰くつきの踏切であったのだ。運転士の見た人影の数も、ちょうど姉妹と同じ三人分であった。
 線路上から消えていった多くの人たち。やはりその正体は、鉄道事故で亡くなった人々の霊なのであろうか。

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電車って、昔から事故やら何やらで、色々とありそうな感じはしますよね…。

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