マイナスイオンは健康に良い!?

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マイナスイオンの起源は古く、19世紀末から20世紀初頭に始まる。欧米で一部の学者が負の空気イオンが健康に好影響を与えるとする仮説を主張していた。西川義方らが医学書に「空気マイナスイオン」と訳語を記載し、生理学的効果を検証報告したことから国内でも知られるようになった。1940年前後には、北海道帝国大学医学部で空気イオンの医学的研究をしていた木村正一らが欧米の学者の説と自身の研究をまとめて出版した。空気イオン説が国内で言われるようになったのは、これらの医学書の記述が発端となっている。

これらの研究による検証は単純な二元論であり、すなわち、負イオンは健康に好影響を与え、正イオンは悪影響を与えるとする臨床的な実証がなされた。しかし、マイナスイオンが体に良く、プラスイオンが体に悪いという白黒二分法的な理論の科学的根拠はない。ニセ科学の一種である。
1990年代後半から、マイナスイオン商品は散発的に販売されていたが、ブームのきっかけは1999年から2002年にかけて、テレビの情報バラエティ番組「発掘!あるある大事典」がマイナスイオンの特集番組を放送したことであった。番組ではマイナスイオンの効能が謳われ、ブームに火がつき、マイナスイオンは2002年の流行語となった。

当時の家電市場は不況であり、大手家電各社はなりふりかまわず様々なマイナスイオン商品を販売したが、その効果効能の実証をしてはいなかった。2002年の家電販売店の店頭は一時マイナスイオン商品で溢れかえる事態となった。そのため、2002年上半期の日本経済新聞社発表のヒット商品番付では、マイナスイオン家電が小結にランクされた。家電以外でも、繊維製品や雑貨品各社もブームに便乗して、マイナスイオン効果を謳う商品を市場に投入した。これらの商品も臨床実証がされぬまま、情緒的に効果や効能が謳われた。