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コカトリス(コカドリーユ)

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コカトリスとは、雄鶏の身体にヘビの尾、コウモリの翼をもつ怪物であり、その誕生は14世紀頃と云われている。
蛇の王バジリスクと同一視され、触れることはおろか、近づいたり視線を向けられただけで死に至るという恐ろしい怪物である。

【名前の由来】
古代ギリシアでは、エジプトのマングースを「イクネウモーン(後を追うもの)」と呼んでいたが、これがラテン語の「Calcatrix」に翻訳され、古フランス語 の「Cocatris」 を経て、英語の「コカトリス(Cockatrice)」になったと云われている。また、フランス語では「コカドリーユ(Cocadrille)」となる。
また、古スペイン語の「ワニ(Cocotriz)」を語源とする説もある。

【コカトリスの変遷】
コカトリスは、元々はその名をエジプトのマングースに由来するが、中世以降に蛇の怪物バジリスクと混同され、さらに雄鶏の要素が加わり、その姿は奇怪なものとなっている。
一般的には、雄鶏の身体にヘビの尾、コウモリの翼をもつとされている。
この雄鶏の要素に関しては、その名に雄鶏を意味する 「cock」が付いていることや、 関係の深いバジリスクが雄鶏の鳴き声を弱点とすることから連想して付けられたと云われている。
また、蛇の要素に関しては、蛇の怪物バジリスクと混同されたことのほか、蛇を殺すという話が誤って伝わったためとも云われている。

また、コカトリスと同一視されるものとして、バジリスク、バジリコック、コカドリーユがあるが、その姿や性質は決して同じとは言えない。

まず、古来より存在が信じられていたバジリスクは、アフリカの砂漠に生息する毒蛇(の怪物)である。その毒性は強烈で、直接触れることはおろか、呼気に触れただけで死ぬと云われる。古代ローマの学者プリニウスの著書『博物誌』によると、頭に王冠を思わせる白い文様がある30cmほどの蛇だという。
このバジリスクがコカトリスと同一視されるのは中世以降であるが、その場合、元は同じ姿をしていた、または雌雄関係にあると云われる。そのため、コカトリスはバジリスクの別称とされることもある。

次に、バジリコックについては、14世紀にジェフリー・チョーサーが『カンタベリー物語』において用いたバジリスクの名称であり、これはバジリスクとコカトリスとを合成したものだと云われている。

また、フランス語でコカトリスを意味するコカドリーユは、言語的には同じものを意味するが、その姿は些か異なるものである。
フランスの作家ジョルジュ・サンドは、著書『田舎の夜の幻』において、コカドリーユの伝承を紹介している。それによると、コカドリーユは小さなトカゲにような姿をしており、一目につかないところを歩き回り、一晩で驚くほどの大きさになるという。また、口から毒を吐き出し、疫病を流行らせる恐ろしい生物であり、昼間は川や沼の泥や葦の中に潜んでいるが、夜になると城館の廃墟をさまようという。この生物には鉄砲も効かず、退治するには棲みかの川や沼を干上がらせるしかないという。
また、一説によると、コカドリーユは大きな池に棲み疫病を広める大蛇であるとも云われる。

【コカトリスの出生】
コカトリスは、雄鶏が産んだ卵をヒキカエルやヘビが温めて孵化させると生まれるという。雄鶏は堆肥の上に卵を産むが、すぐにその場を離れてしまう。そこへヒキカエルやヘビが複数やってきて、卵を温めるのだという。その卵には殻も卵黄もなく、厚い膜で覆われているとも云われている。

また、生まれたばかりのコカトリスは、蛇の尾をもつひよこのような姿をしているという。
因みに、コカトリスの雛は、生まれてすぐに壁の割れ目や地面の溝などに姿を隠すと云われる。それは、コカトリスは見ただけで相手を殺す恐ろしい邪眼の持ち主だが、逆に、自分が相手を見る前に自分の姿を見られると死んでしまうからだと云われている。

【備考】
コカトリスは飼い主の家にいる人物から少しずつ血を吸い、やがて死に至らしめるとも云われる。