第4回「コロナをぶっ飛ばせ!」 2021秋のリレー怪談 スタート!!
◯小説の形式及び登場人物
2021、11月21日現在
舞台;私立鳳徳学園高校;明治時代に建てられた地方の進学校。元は男子校であったが平成に入り共学制に。
旧校舎には時計塔あり。ロンドン塔によく似ている。 敷地内の一角に英国人墓地と併設して礼拝堂がある。
主人公;秋永九十九(あきなが つくも)。ごく普通の男子。部活は未定。残りの書き手さんに任せます。
ヒロイン;甘瓜美波(あまうり みなみ)、転入生。すらりとした体系のボブカットの美少女。背は高め。周囲に溶け込む気が余りないが敵は少ない。悪夢の中で主人公に会う。父の都合で引っ越してきたことになっているが、実はストーカー被害に悩まされていたことが原因。
甘瓜花波:甘瓜美波の母。鳳徳学園の新米英語教師。
因みに甘瓜家の家系。
雪波→月波→花波→美波。
校長;ロビン・ウィルソン。片言の日本語を話す英国人。顔の怪我を隠す為に半分白い仮面で覆っている。あからさまに怪しすぎてかえって怪しまれない。ニックネームは便器。
マリア・ウィルソン:故人。ロビン・ウィルソンの娘。
大神遊平の元妻であり、大神遊輔の母親。
八島弘:ロビン・ウィルソンの側近。
大神遊人:大神遊輔の祖父。
大神遊平:大神遊輔の父。妻はロビン・ウィルソンの娘、マリア・ウィルソン
オカルト研究部部長・大神遊輔。金色の目を持つ。甘瓜みなみにフラれる。狼一族とヴァンパイ◯一族のハーフ?※超難関キャラw
気水百香:大神家に仕える鳳徳学園の教員。
護摩堂アキラ:鳳徳学園生徒会長。自信が秀才である事に自負を持つ、完璧主義者。 生徒会長の権限として、彼だけが校長との面談を許されている。 八島の存在に疑問を持つ。
沢カレン:鳳徳学園二年。オカルト部の幽霊部員。今どきのギャル風女子。好奇心旺盛。体育は嫌い。放課後はデートと称したパパ活。
ユウタ:沢カレンの中学の同級生
月島聖良(つきしませいら)……進路に悩む鳳徳学園の2年生。甘瓜美波の母、英語教師の甘瓜花波と親交を持つ。魔夜中に取り込まれノイローゼになり入院。その後、学園の旧校舎から身を投げる。生死は不明。
日本生まれの日本育ちで和食党だが、曾祖母が英国人のため瞳は碧眼。曾祖母はロビン・ウィルソンの父の、姉にあたる人物。
麻希子……聖良のことを「セーラ」と呼ぶ友人。普段はいい加減だが、友だち思い。聖良にトドメを刺す。
時系列は以下の通り。
・約20年前。2001年頃。甘瓜花波とマリア・ウィルソン、鳳徳学園に在籍。教師になる夢を語り合う。
・鳳徳学園卒業後、ふたりとも学生結婚をし、大学を中退。花波は美波を、マリアは大神遊輔を出産。マリア死去。
・約10年前。2011年(美波、遊輔は小学生)。英語教師として赴任してきた花波と、月島聖良が出会う。
ふたりとも魔夜中に取り込まれ、花波の魂は八島の手中に落ちる。聖良はノイローゼになり、文化祭の前後に旧校舎から身を投げる。
・現在。2021年。魔夜中の中で、聖良と護摩堂アキラが出会う。
魔夜中;悪夢の中を指して甘瓜美波がつけた呼称。
魔夜中に持ち込めるもの;ない。だが鬼火の怪人(ジャック・オランタン)を倒せるものは夢の中にも存在する。英国人墓地、といえば○○が埋まっているはず。ただこの〇〇を使うかは残りの走者次第。
◯リレー順および〆切り(※順不同・敬称略)
第一走者:ゴルゴム13(掲示板〆:10/9 23:59/「怖話」投稿予定:10/10)
第二走者:五味果頭真 (掲示板〆:10/16 23:59/「怖話」
投稿予定:10/17)
第三走者:ロビンⓂ︎ (掲示板〆:10/23 23:59/「怖話」投稿予定:10/24)
第四走者:rano_2 (掲示板〆:10/30 23:59/「怖話」投稿予定:10/31)
第五走者:あんみつ姫(掲示板〆:11/6 23:59/「怖話」投稿予定:11/7)
第六走者:一日一日一ヨ羊羽子(掲示板〆:11/13 23:59/「怖話」投稿予定:11/14)
第七走者:綿貫一(掲示板〆:11/20 23:59/「怖話」投稿予定:11/21)
第八走者:珍味(掲示板〆:11/27 23:59/「怖話」投稿予定:11/28)
第九走者:車猫次郎(掲示板〆:12/4 23:59/「怖話」投稿予定:12/5)
第十走者:ゲル(掲示板〆:12/11 23:59/「怖話」投稿予定:12/12)
○ 控え走者 (およびリレー順希望)
・ふたば
□物語の形式
①「前半オムニバス+後半なぞとき」
メインキャラ5人(前後)分の導入となるオムニバスを4~5話続けて
残り7~8話+エンディングで、たっぷりと謎解き(および恐怖体験)。
②「途中オムニバス」
主人公視点で物語が進んでいく途中途中に、主人公以外の視点で語られる話がある、という形式。
⇒(意見)まあこれについては、いざ始まってみたら自然に決まるかもしれませんね。。
□最終話について
①合議制で内容を決め、代表者1名が執筆を行う。
②マルチエンディング →その場合、複数の希望者がそれぞれ結末を用意する。
⇒①をトゥルーエンド、②はアナザーエンド(ifのエピソード)とするなら、両立するかもしれませんね。
□タイトル 候補
タイトル候補;魔夜中の殺人鬼、魔夜中の狩人、鬼火の狩人、鬼火舞う学園、鬼火の牢獄、鬼火舞う牢獄、旧校舎に鬼火舞う刻、魅惑の旧校舎~紅蓮の狩人。
・放課後の獄舎 ~転校生と鬼火の狩人~
・ミッドナイト・パーティー
・神無き月の狩人
・Faceless sneaker(顔のない 忍び寄るもの)
○現在までのダイジェスト(綿貫様まとめ)
2021.10.16 現在。
■第一話(秋永九十九)
□シーン1 悪夢の中
九十九が、どことも知れない建物の中を歩いている。
建物の1階で、頭部が縦長のカボチャのような、背の高い、謎の人物に遭遇する。
男の手には紅蓮の炎をまとう、大ぶりの鎌が。
男の背後には制服姿の少女の死体があった。
ガツンという衝突音とともに、悲鳴が響く。男の背後にもうひとり誰かがいることに気付く。
□シーン2 学校/教室の外
九月下旬。十月末に行われる文化祭に向けて、学校中が盛り上がりつつある。
転校生の甘瓜美波が、九十九に話しかけてくる。
美波は親の都合で九月に転入してきたばかりだが、その美貌とふるまいから、当初は注目を集めていた。
しかし、オカルト研究部部長・大神遊輔のラブレターを破り捨てた事件で、「甘瓜さんは甘くない」と噂が立ち、今では男女ともに彼女から距離をとっていた。
そんな孤高の美少女に話しかけられドギマギする九十九であったが、「昨日、夢を見なかった?」という美波の言葉に戸惑う。
美波は九十九をある場所へと誘う。
□シーン3 旧校舎
美波は「あなたの見た夢の場所は、この旧校舎である」と告げる。
たしかに窓の外に見える時計塔に覚えがあった。
「校内に礼拝堂と英国人墓地があるのを知ってる?」
「私は昨日、殺されかけた」
次々と謎の言葉を紡ぐ美波。
聞けば、紅蓮の鎌を持った化け物―ジャック・オー・ランタン―に、廊下の突き当りで殺されかけたのだという。
それがただの夢でない証拠にと、美波は首の付け根に現れたミミズバレを見せる。
夢の中で彼女よりも先に女生徒が殺されたが、美波の調べによると十年前に死んだ生徒であるとのこと。
「あなたも私の夢の中にいたのよ」
ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、
鳴らずの時計塔が突如鳴り出す。
■第二話(大神遊輔)
□シーン4 自室
オカルト研究部部長・大神遊輔は、先日、甘瓜美波にラブレターを出したものの、ビリビリに破かれ玉砕。そのことを校内の裏サイトにもさらされ、ショックから不登校になっていた。
悪夢を見て飛び起きる遊輔。手元の時計はPM4:44を示している。
夢の内容を振り返り、気になることが出てきた遊輔は、それを確かめるため学校に行くことにする。
□シーン5 祖父の部屋
出がけに祖父に呼ばれ、父とともに祖父の部屋に。
不登校を責められるかと思いきや、
「そろそろ文化祭だ。文化祭といえばなんだ?」と謎の問いをされる。
祖父も父も遊輔の通う高校のOBだが、私立鳳徳学園は元々は男子校で、また時代柄男女交際のチャンスなど文化祭以外になかった、と告げられる。「恋愛については奥手な家系だ」とも。
大神家には遊輔の物心がついた頃から、すでに祖母・母親の姿がなかった。
□シーン6 旧校舎①
遊輔は、美波に惹かれた原因のひとつは「甘い香り」であると考えていた。
学校に到着すると、悪夢に見たであろう旧校舎へと向かう。
現場に着いて、場所の確信を持つ遊輔。
彼は悪夢の中で、美波が何者かに襲われるのを見ていた。
□シーン7 旧校舎②
遊輔は旧校舎で美波と九十九の姿を目撃し、逢引きであると思い込む。
九十九に首筋を見せる美波に、嫉妬から正気を失う遊輔。
思わず走り出し、旧校舎の裏側、英国人墓地へと足を踏み入れる。
遊輔は旧校舎に、美波とは別の魅惑的な香りが漂っていたことに気が付く。
墓地には、誰かが掘り返したような跡があった。
墓穴の中にはあるべき棺桶の存在はなくなっていた。
頭上の空を大きな鳥のような影が横切る。
空に浮かぶ真っ赤な満月を見て、自分の身体が大きくなり、全身を毛が覆いつくす感覚を得る遊輔。
その時、突然鳴らずの時計塔が鐘を鳴らし始め、それにあわせ、遊輔は吠えた。
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タイトル案をひとつ。
・放課後の獄舎 ~転校生と鬼火の狩人~
・ミッドナイト・パーティー
・神無き月の狩人
・Faceless sneaker(顔のない 忍び寄るもの)
@ゴルゴム13 さん
第一走者お疲れ様でした!
時計塔と英国人墓地のある歴史ある学園。
謎の美少女転校生。
そして怪異。
胸が踊りますね!
(怪しい校長のあだ名が「便器」なのには笑っちゃいましたが)
この素晴らしい第一話のあとを受ける人はかなりのプレッシャー……と思いきや、五味果頭真さんが立候補とは。勇者です!
魔夜中の恐怖に巻き込まれ、九十九と美波とともに立ち向かってくれる仲間は誰なのか?
鬼火の怪人はこれから一体なにをしでかすのか?
学園の謎は?
美波の過去は?
校長は自分のあだ名に納得しているのか?
謎は深まりますね。
続きが楽しみです!
ですがまずは、ゴルゴムさん、素晴らしい走りだしをありがとうございました、とお伝えしたいと思います。
@ゴルゴム13 様
以後続くリレー作品の核となる部分をしっかりと設定していただいた上で、次回がとても気になる余韻を残した話に思わずうまいなあと笑みをこぼしてしまいました。
このレベルのものを引き継いで書く自信は正直ありませんが、もし他に希望者がいなければ第二走者を務めたいと考えてます!
まだまだ序盤だということで、一作目の伏線を回収するのではなくそれを踏まえた上でさらに話を広げることが第二走者の役割かなと思っていますが、もし僕で決定だったら、それについて相談があります。
他の方の申し出もあるかもしれないので、今は様子見で、また今日の夜あたりに出没します。
ゴルゴム13様お疲れ様でした。トップバッターという大役を引き受けていただいたこと、参加者の一人としてお礼申し上げます。ありがとうございました!
@ゴルゴム13 様
第一話投稿お疲れ様でした。芳醇なゴシックロマンのテイストが学園物の世界に、すんなりと溶け込んでいるのは、流石だと思いました。いかにも滑り出しに相応しい雰囲気作りに成功され、きっちり一番バッターのお仕事をして頂けたと思います。設定については、これは後続の皆様次第ですが、小生はいずれもアリだと思ってます。確かに、時計台はいいですね。何だか個人的には必須アイテムみたいに思えてきました。
皆様
いよいよスタートの号砲が鳴りましたね。一つ、打順について希望ですが、前にも書きましたが、出来れば皆様の投稿を3、4話程度読ませて貰った方が要領が掴めるので、小生は4話か5話以降とさせて貰えると幸いです。前半、後半は問いませんので。
第四回リレー怪談 裏設定
ここに記すのは僕の思いついた設定です。参考にしていただければ幸いですが、強制ではありません。
舞台;私立鳳徳学園高校;明治時代に建てられた地方の進学校。元は男子校であったが平成に入り共学制に。
旧校舎には時計塔あり。ロンドン塔によく似ている。 敷地内の一角に英国人墓地と併設して礼拝堂がある。
主人公;秋永九十九(あきなが つくも)。ごく普通の男子。部活は未定。残りの書き手さんに任せます。
ヒロイン;甘瓜美波(あまうり みなみ)、転入生。すらりとした体系のボブカットの美少女。背は高め。周囲に溶け込む気が余りないが敵は少ない。悪夢の中で主人公に会う。父の都合で引っ越してきたことになっているが、実はストーカー被害に悩まされていたことが原因。
校長;ロビン・ウィルソン。片言の日本語を話す英国人。顔の怪我を隠す為に半分白い仮面で覆っている。あからさまに怪しすぎてかえって怪しまれない。ニックネームは便器。
魔夜中;悪夢の中を指して甘瓜美波がつけた呼称。
魔夜中に持ち込めるもの;ない。だが鬼火の怪人(ジャック・オランタン)を倒せるものは夢の中にも存在する。英国人墓地、といえば○○が埋まっているはず。ただこの〇〇を使うかは残りの走者次第。
〇タイトル候補;魔夜中の殺人鬼、魔夜中の狩人、鬼火の狩人、鬼火舞う学園、鬼火の牢獄、鬼火舞う牢獄、旧校舎に鬼火舞う刻、魅惑の旧校舎~紅蓮の狩人。など。
それでは、皆様よくよく話し合って下さい。僕も参加しますが。
次の走者は、できれば名乗り出ていただければと思います。
それでは。
皆さま、お待たせしました、
リレー怪談第一話です。それなりの伏線は張らせて頂きましたが、第一話では使いきれなかった裏設定もあります。この後の投降でご覧ください。裏設定については議論の余地ありです。タイトル候補も含め、皆様のご意見を頂ければ幸いです。
第四回リレー怪談 第一話
どことも知れぬ建物の中を歩いていた。薄暗い廊下は歩む度に床板を軋ませる。窓の外を見れば、不吉に輝く赤い満月が時計塔を照らし出していた。
なぜ僕はここにいるのか。ここはどこなのか。
何も思い出せない。
不意に、低い唸り声が聞こえた。獰猛な大型犬を連想した僕は、とっさに耳を澄ませ、その音から遠ざかろうと忍び足で進んだ。廊下を歩いて、階段を上って、また廊下を進んで、今度は降りて………………。その間にもしばしば立ち止まっては気配を探った。
どれほど進んだだろう。どこかで、悲鳴を聞いたような気がした。誰かが、あの唸り声の主に襲われているのか。助けなくては…………しかしどうやって?
とりあえず近くまで移動することにした。もし自分も襲われたらどうしよう…………。義侠心と恐怖と好奇心が僕の心を交互に廻った。
一階まで下りた時、不意にブーツの足音が聞こえた。階段からそっと廊下を覗いた僕は、思わず叫びそうになる。
火の玉。火球。鬼火。呼称は何でもいい。それが幾つも宙を飛び交っている。その中心に、背の高い人物の姿があった。違和感を覚えて目を凝らす。
頭部が歪んでいる。
縦長のカボチャ、とでも言えばいいのか、ともかく不格好な輪郭が見て取れる。それだけじゃない。奴は手にしていたのは、紅蓮の炎を纏う、禍々しいまでの大ぶりの鎌…………。
非現実的な光景に、僕は息を呑んだまま固まっていた。だがその時、男の背後にあるものに気が付いてしまった。黒っぽい服に白い手足、そして鮮血にまみれた顔、床を黒く染める液体…………。
制服姿の少女の死体だ。その虚ろな瞳が、僕に助けを求めているようだった。
もう手遅れだ、ごめんよ、それにあんな化け物、僕が敵う相手じゃないよ…………
情けない思いが胸の中に湧き上がっては、どうしてもっと早く駆けつけてあげなかったんだ、と罪の意識を駆り立てる。
その時、ガツン、という衝突音とともに、新たな悲鳴が響き渡った。
はっとして目を凝らすと、男の向こうに、もう一人誰かいることに気が付く。
助けなきゃ、助けなきゃ、助けなきゃ、僕が、僕が、僕が僕が僕がボクガボクガボクガァァァァ!!!!
§
九月も終わりに近づき、木々が色とりどりの紅葉で秋化粧をし始めた。学校は今、十月末に行われる文化祭への気運で盛り上がりつつあった。とは言っても、学校の方針で実際に準備が始まるのは二週間前からだ。
「ねえ、秋永君……秋永九十九君、だっけ…………」
下校すべく教室を出た僕に声を掛ける者がいた。振り向くと、女子生徒が値踏みするように僕を見ていた。
甘瓜美波。九月に転入してきたばかりのクラスメートだ。高二の秋という中途半端な時期に、親の仕事の都合で東京を離れたらしい。
都心の名門女子校出身ということもあってか、彼女の容姿も振る舞いもどこか垢抜けた雰囲気が漂っていた。背は一六〇くらい。しっとり黒光りする髪はボブに切り揃えていて、涼し気な目元が彼女を大人びて見せていた。
転入当初、男子生徒が色めき立ったのも無理はない。だが、スマホも所有せず、家には直帰するなどいかにもなガードの硬さが近づき難い雰囲気を醸し出していた。
極めつけは、机に入れられたラブレターを眉一つ動かさずに未開封のままビリビリと引き裂いてゴミ箱に捨てた件だ。
手紙の主は後で特定されて、さんざん学校の裏サイトで「勇者撃沈!!」と笑い者にされたらしい。ちなみに彼はオカルト研究部の部長でもあり、男子生徒にすら薄気味悪い奴と思われていたことも事態に拍車をかけた。
可哀そうに、彼はそれ以来欠席している。失恋に加えての羞恥攻めとは、なんと過酷な。これもIT時代の闇というやつか。
以来、男子の間では「甘瓜さんは甘くない」と噂が立ち彼女に寄り付く者はいなくなったし、女子もどこか遠巻きにする状況が続いている。そんな彼女が話しかけてきたものだから、僕は色んな意味でドキリとしてしまった。
「何か用?」
かすれ声で返す僕の目を、彼女はじっと探るように見つめた。一歩、また一歩、猫に睨まれたネズミのように、僕は後ずさる。薄暗い廊下はいつになく閑散としていて、僕を助けてくれる救世主は現れそうになかった。
「秋永君…………」
壁際にまで追い詰められた僕は、彼女から目を逸らせなくなっていた。光の断片を宿した瞳が、僕を映し出している。
「昨夜、夢を見なかった?」
「え?」
意外な言葉に、僕は反応が遅れた。
「夢よ。眠っている時に見るあれのこと」
「夢……」
僕は夢を見ても、明確に思い出せる夢なんて滅多にない。これまでの経験でも、起きた瞬間には夢を見ていたかすらあやふやになることが多い。だが、昨夜の夢だけはおぼろ気ながら記憶に残っている。
「どうなの?」
「うっすらと、だけど…………覚えてる」
「どんな? 話して」
さらに身を寄せた彼女はじっと僕の目を覗き込んだ。
「わ、分かったよ」
美波ちゃん(そろそろ「ちゃん」付で呼んでもいいだろ? 心の中だけなら……)の迫力に押され、思わず数歩離れてしまう。そして気が付いた。
あれ……? 今、すごくいい匂いしてなかった? なんで自分から離れてしまったんだよ!!
密かな無念を押し隠して、僕は記憶の糸を手繰り寄せた。
「どこか、暗い廊下を歩いてた……かな……自信ないけど…………」
彼女は小首をかしげて目を細めた。
「それだけ?」
「う~ん…………そう言えば、目が覚める前…………どこかで声がしたような…………多分女性の悲鳴みたいな…………」
そうだ。あの悲鳴のような声があったから忘れずにいたんだ。
「悲鳴を聞いた後は?」
「後?…………いや、分からない……ごめん」
やや落胆したように、彼女は小さな溜息をついた。にしても、なぜこんなことを尋ねるんだろう。
「一緒に来てほしい場所がるの」
「え? い、一緒に……?」
どういうつもりだろう。まさか告白……なんてある訳ないよな。落ち着け、落ち着け。
「来てほしいって、ど、どこに?」
僕の問いに彼女はふっと微笑を浮かべた。その瞬間、心臓がドクンと跳ねる。仕方ないだろ? 笑った顔見たの、これが初めてだったんだから!!
黙ってれば美少女の彼女が、普段はにこりともせず黙ってるんだぞ!!
そんな美波ちゃんが僕にだけ(脳内補正あり)見せた破壊力抜群の笑顔にクラっと来るのは、健康な男子として当然じゃないか!!
そんな僕の動揺を知ってか知らずか、美波ちゃんは半身を軽やかに翻し、とある方角を指差した。その先にあるのは…………
夕陽の中に蹲る旧校舎。真っ白の新校舎と対照的に、赤茶けた煉瓦張りの、老朽化した古臭い建築物───。
ここ、私立鳳徳学園は財閥の出資で明治時代に創始された。長い歴史があるので、校内には随所にその名残がある。平成に入り共学制になって以来使われなくなった旧校舎もその一つ。建物自体は古いので文化財としての価値はあるのだろうけど、不気味な雰囲気が漂っていて誰も近づこうとしない。
「あそこなら、鍵が掛かってるから入れないよ。立ち入り禁止だし」
「………………」
「………………」
一つ言わせてくれ。僕は彼女の希望を男らしく寛大に受け入れただけだ。断じて、
二人きりになれるぜラッキー!!
なんて思った訳ではない。絶対だ。絶対だぞ!!
§
「これ、ばれたら停学かもな…………」
通用口の窓ガラスを割って鍵を開けた僕らは、旧校舎に足を踏み入れていた。
「ねえ、どうしてこんな所に?」
「…………」
美波ちゃんは答えずに、先に立って進み始めた。コツコツという足音に混じって古い床板が軋む音がした。とは言え元々の施工が良いのか、まだ現役で使えそうな状態だ。
しばらく無言で歩き続けた彼女が、ぴたりと立ち止まり振り返った。
「あなたが夢に見たのは、きっとこの旧校舎よ」
ここ?……まあ言われてみればそうかも知れない。確かに廊下の幅はこれくらいで、板張りなのも同じだ。その時、窓の外に視線を向けた僕は思わず息を呑んだ。
ああ、どうして気が付かなかったんだ!!
旧校舎の中央に聳える時計塔。この角度、この位置…………そうだ、間違いない。
「確かに……夢の中で、あの時計塔が見えた」
頭の中で、今何が起こっているんだと警告音が鳴り始める。なぜ彼女が、僕の夢の中身を知っているんだ?
「美波ちゃんは……」
チラ、と彼女は細い目で僕を振り返った。どうして下の名前で呼ぶの? という抗議がその瞳にありありと浮かんでいる。
「甘瓜さんは、どうしてそんなことが分かるの?」
はいヘタレです僕はヘタレです済みませぇん!!
§
「校内に、礼拝堂と英国人墓地があるのは知ってる?」
「もちろん…………それがどうかした?」
敷地の隅に、ひっそりと木立に守られるようにそれはある。時折外国人の姿も見かけるが、おそらくご遺族や子孫なのだろう。生徒はなるべく近づかないように、と入学式のオリエンテーションで釘を刺されていた。
「昨夜ね…………私、殺されかけたの」
「え?」
突然何を言い出すんだ。脈絡がなさすぎる。本気で言っているのか? いや、まさか…………。
「化け物に、鎌で切り殺されそうになったわ。あの燃え上がる鎌、紅蓮の刃……鮮明に覚えてる。ただの夢とは到底思えない」
美波ちゃんの背中。抱きしめたら折れてしまいそうなほっそりした背中。
「ちょうど、ここだったわ」
廊下の突き当りで、美波ちゃんは振り返った。
「ジャック・オー・ランタン」
「え?」
何を言い出すんだ。
「ハロウィンのカボチャのやつ?」
窓から差し込んだ西日が、彼女の鳶色の瞳を照らし出した。僕はそこに、緊張と怯えの色があることに今更ながら気が付いた。
あの美波ちゃんが何かを怖がっている。その事実に僕は軽い衝撃を受けていた。
だが、もし殺されかけたというのが本当なら、当然恐怖を覚えるに違いないのだ。さっきから冷静に振舞っているのも、動揺を表に出さないためなのだろう。きっとそれが彼女の生き方なのだ。
ガラス玉のような半透明の虹彩に魅入られながら、僕は緊張を帯びた声を漏らした。
「甘瓜さん、一応確かめさせて。殺されかけたってのは……その、本気で言っているんだよね?」
少しの沈黙の後、彼女はおもむろにブラウスのリボンを解き始めた。
「あ……ちょ…………」
焦る僕を他所に、彼女はボタンを二つまで外し、首の付け根を露出して見せる。
「見て。秋永君」
目のやり場に困っていた僕も、そう言われれば見ざるをえない。絹のような白い肌に、痛々しいまでのミミズバレの跡があった。
「これでも、思い出せない?」
思い出す? 何を? 僕と何の関係があるんだ?
「昨夜、私の前に殺された女生徒がいるの」
またも不可解なことを口走る。さっきから彼女に翻弄されっぱなしだ。もういい、やめてくれ。頭がおかしくなりそうだ。
「図書館でアルバムを調べたわ。その子、十年も前に死んでいるの。それも在校中に」
「一体、何を言って…………」
汗が額を伝う。何を、イッタイ、コイツは何ナンダナニガシタインダサッキカライッタナニヲナニヲナニヲナニヲ…………
僕を真っ直ぐに見つめて、切実なまでの口調で彼女は告げる。
「あなたもそこにいたのよ、秋永君。昨夜、私の夢の中に…………」
ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン────
鳴らずの時計塔が、突如大鐘を鳴らし始めた。窓がビシビシと振動し、彼女を照らす陽光までもが微かに震えて陰影のさざ波を作った。
その日を境に、眠りから覚めた運命の歯車が再び動き始めたのだった。
(第一話 終わり)
@ゴルゴム13 様
走行中にも関わらず、返信と温かい気遣いありがとうございました。
私もロビン様同様、もう、読まなくてもトップをきるにふさわしい方だと期待しております。
その走り しっかり受け止めたいと存じます。
はい、健康に留意いたします。
皆々様
朝晩と日中の気温差が著しくなってまいりました。
健康には十分お気をつけくださいませ。
首都圏一帯にお住いの方々、一昨日深夜の地震、大丈夫だったでしょうか。
もし、大変でしたら、遠慮なくおっしゃってくださいね。
いざというときは、もう、走行関係なく すぱさみとって走り出す覚悟でおりますから。
ロビン様
眼は、すっかりよろしいのでしょうか。
それこそ、ご無理なさいませんように。
症状によって、また、おひとりおひとり個人差があり、治療後は、過ごし方が重要と聞いています。本当は、スマホやパソコンのような液晶画面は負担が大きいのでしょうね。
お大事になさってくださいませ。
ゴルゴム先生!お疲れ様です!
いやあ、もう僕ぐらいになれば読まなくてもわかります。
ゴルゴム先生!最高のクラウチングスタートをありがとうございます!
第一話。めちゃくちゃ楽しみな反面、いつ自分にまわってくるのかという緊張で心臓がヤバいです!…ひ…
@あんみつ姫 様
激励の言葉ありがとうございます。
第二、第三走者は別の方になっていただくとして、あんみつ姫様もご無理をなさらずご自愛ください。
明日午前中には投稿できるかな?
ゴルゴム13様 皆々様
ゴルゴム13様
がんばっていらっしゃることでしょう。
今晩あたりが正念場でしょうか。
トップバッターの役目 大変かと存じますが、陰ながら応援しております。
皆々様
今更情けないことを申し上げますが、私、来週10日から17日まで時間的に余裕がなく、
もうしわけございませんが、第二走者、および第三走者に選ばないでいただきたく存じます。
走れないことはないと思いますが、たぶん身体と頭がついて行かないと思います。
勝手申しまして、ほんとうにすみません。
画像、タイトルにつきましては、皆々様のご意向に従います。
あとは、臨機応変、縦横無尽に対応できるようにできるだけ頑張りたいと存じます。
ではでは。このへんで。
自作品の執筆に専念させていただきます。
綿貫様
御返事ありがとうございます。
なんなら南でもよかったかもですが、とりあえずは美波でいかせて頂きます。
@ゴルゴム13 さん
こんばんは。
この名前を出したのが私でしたので、私からお返事します。
もともとカボチャ(南瓜)に絡めたネタのつもりでしたので、実際の文中で読みやすいように変えていただいても問題ありません(美波もきれいな漢字ですね)。
執筆チームの内輪ネタくらいの認識でよいのではないでしょうか。
むしろ読者が、甘瓜美波の字面からカボチャの連想に行き着けたとしたら、それはそれで楽しいですね。
一つ皆様に確認しておきたいことがあります。
ヒロインの甘瓜みなみですが、名前が平仮名なのが正直読みにくいです。
そこで「甘瓜美波」に改めたいのですが、よろしいですか?
@ゴルゴム13さん
あっ全然気を悪くしてませんよ!
むしろ私の発言で場が乱れてしまったのでは…?、と反省してます。私は参加する事を光栄に思っているだけなので、どうかお気遣いなく💦
いえ、ゲル様、
お気を悪くされたかも知れませんが、最終的に「魅惑の旧校舎」というタイトルがうまくはまるようなオチにできれば、それでいいと思うんです。
第一話はスタートラインですから、最初は「?」と思っても最後で納得できればいいわけです。
ですから、タイトルは他の執筆者の皆様がその後どういう展開にしていきたいかで決まると思います。
ゲル様も作者の一人ですから、僕としては第一話に「魅惑」という言葉が当てはまる余地を作っておきたいと思います。どうかお待ち下さい。
@ゴルゴム13さん
わかりました。ご意見ありがとうございます。
今の所、内容に統一性がないのでタイトルもゴルゴムさんの候補の中からゴルゴムさんなりのチョイスで出して頂いて、後はそれに繋がるような内容をみんなで考えましょう。もう書き始めていて、私の挙げた内容だと不都合が生じるようならば、もはや『旧校舎』という単語も意識しなくて大丈夫です。
それでは楽しみにしていますね😊
ゲル様、綿貫様色々と整理して下さりありがとうございます。ゲル様の仰るように、僕には魅惑という単語がいまいちしっくりこないです。全てが解決した後の最終話のタイトルとしてなら十分にありですが。
現在僕が考えているタイトルは複数の候補がありますが、ネタバレになるので今は控えます。掲示板に投稿する時に改めて皆さんの意見を伺おうと思います。掲示板に投稿する時のタイトルは第4回リレー怪談 第一話としておきます。
夢に出てくる存在、まだ第一走者のゴルゴムさんが第1話を執筆中なので、雰囲気がわからない中決めるのは難しそうですね……。
ところで、
小説、アニメ、映画等の作中で「怪異」「正体不明な存在」を表す言葉って、色々あって面白いですよね。
・放課後の魔術師(漫画『金田一少年の事件簿』)
・ぼきわん(小説『ぼきわんが来る』)
・起き上がり(小説『屍鬼』)
・奴ら(漫画『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』)
・それ(映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』)
・キャンディマン(映画『キャンディマン』)
・死者(小説『another』)
等々
ほかにも学術的なものや、方言なんかも。
「this man」「もっけ」「モモンガ」「もくりこくり(の鬼)」とか。
今回は学園ものですから、学校に関係あるものがよいのでしょうか……。
タイトルと話の提案をしておいて放置してすみません。
なかなか決めかねてる所ですのでハッキリしますね。
私としては、やはりゴルゴムさんの「夢に出てくる何か」があまりピンと来てないです。たぶんゴルゴムさん的には「魅惑」がピンと来てないのかなぁ…タイトルにそれを入れたいのか話の内容にそれを入れたいのかがわかりません。タイトルであれば話の方向性が少し変わるかもですが『旧校舎の夢』とか『旧校舎の悪夢』とかでいいじゃないでしょうか。もし、話の中に「夢に出てくる何か」を取り入れたいのであればとりあえずタイトルは『魅惑の旧校舎』にして話の一節にそれを入れれば纏まるのではないでしょうか?
もちろん、今の段階でもこのタイトルなんてどう?というのがあればどしどし候補をお願いします!