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山梨県甲州市大和町初鹿野 横吹諏訪神社

祟る朴の木

  1. 初鹿野諏訪神社
    山梨県甲州市大和町宮本にある初鹿野諏訪神社。
    初鹿野諏訪神社にはいくつかの有名なものがある。
    ひとつは、しめ縄がかけられているご神木の「朴(ほうき)の木」。
    ふたつ目に、樹齢2000年以上といわれている伐採された大杉の切株。
    三つ目に、「一間社、千鳥破風つき入母屋造、向拝は軒唐破風つき」とある本殿。
    現在は補強の鉄骨で覆われているものの、本殿は中国を題材とした「七賢人」や子鬼、柱には生きているかのごとく龍が巻きついており、唐破風からは鳥獣戯画のような彫り物で埋め尽くされている。
    このようなあらゆる生物(想像上の生き物も含めて)が所狭しと絡みついているような本殿は非常に珍しく、圧倒される。
    本殿の唐破風にぶら下がっているように見える飾りは、掲示板に記載がある「兎毛通し(うのけどおし)には怪鳥を懸け」である。
    風貌が映画「オーメン」に出てくるサタンのようであるため、実物を見ればすぐにわかる。
    これを懸魚(げぎょ)いうが、懸魚は神社仏閣の屋根に取り付けた妻飾りのことであり、初鹿野諏訪神社のような怪鳥のような懸魚は口に魚をくわえており、非常に珍しく貴重であるので一見の価値がある。
    全国に約25,000社あまりあるといわれている諏訪神社。
    長野県の諏訪湖近くの諏訪大社(旧称:諏訪神社)を総本社としており、山神を祭る。

  2. ご神木・朴(ほうき)の木
    初鹿野諏訪神社にある、ご神木・朴(ほうき)の木。
    触ると祟る、場合によっては死に至るという噂がある。
    初鹿野諏訪神社本殿の裏に、屋根が作られ風雨から守られている巨大な大杉の切株がある。
    2000年以上の巨木といわれており、幹は何度か枯れているが、こちらはご神木ではない。
    ご神木・朴の木には「山神」と書かれた石碑があるが、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)がこの地で休んだ際に、杖にしたものから発芽して現在に至っているという。
    ここにある掲示板には、平成元年三月 大和村教育委員会の以下の記載がある。
    「本殿の裏にある神木の朴の木は、二千数百年を経たといわれており、幹は幾度か枯れては根本から発芽し、現在に至っている。この朴木は、日本武尊がこの地に憩った折、杖にしたものが発芽したものと伝承されている。古来からこのご神木を疎かにすると、不祥の事件が起きると信じられているので、神意に逆らわないようにしている。」
    地元の教育委員会が認める、由緒正しいご神木である。

3.触ると祟られる朴の木
明治36年、初鹿野諏訪神社の横を通る鉄道が敷かれる。
この時の電車からの振動とばい煙(石炭など物の燃焼に伴って発生する煙と煤(すす)のこと)のため、巨木・大杉が枯れ始める。
これにより、大杉は伐採することになり、現在の大きな切株の姿になった。
しかし、この大杉はご神木ではないし、祟られる朴の木ではない。
ご神木とされ、しめ縄をされた朴の木は一部が枯れかかっているが生きている。
朴の木の枝葉が成長し、鉄道の運行の邪魔になるということで枝葉を伐採することになったが、この伐採に携わった業者が亡くなり、それ以来触ると祟るといわれている。
現在、鉄道会社で枝は切らずに、鉄道を鉄柵で囲んで運行に問題ないようにしている。
ご神木は本殿の真後ろに、守られるように植えられている。
ここで、特筆すべきことがある。
祟られるとされている朴の木だが、実は祟られるのは巨木・大杉の方ではなかったか、という説があることだ。
山梨県立図書館編「甲斐国社記・寺記」には以下の書がある。
「樸(=朴、朴の木)の枝を逆に地に指入置賜うに枝葉栄えて今に存す、拾抱計にして繁茂す、神木と号し杉の木八抱計りにして同所日向宮と称す」
この書によると、朴の木ではなく大杉がご神木とされている。