エクソシスト 怖さともの悲しさと甘酸っぱさが漂う

これ、公開前から話題になっておりました。首が回るだの、見終わったあとはグリーンピースが食べられなくなるだの、もともと食べられないからいいだの。当時中学生だった私は、悪魔祓いなる言葉をこの映画で初めて知ることとなります。だいたい外国のホラー映画には日本映画にある湿り気が乏しいように思います。しかし、この映画は違います。神父さんからして、神父さんらしくない。まさに悩める神父なのです。あまり書いてしまうとネタバレになってしまいますが、どこから見ても正義の味方というアメリカンヒーローのような方では決してありません。これがまた、適度な湿り気を与えてくれていると思います。悪魔に取り憑かれた少女を救うため、やってきた神父。しかし、やっと退治できるわけではなく、むしろ神父の旗色が悪い状況が続きます。神父自体も悪魔に幻惑され、心を乱されます。スカッとする場面のあまりない、というか、殆どない形で進みます。怖いシーンの印象もないことはないのですが、この登場人物である神父が、とにかく一番心に残りました。当時は、男の哀愁だの、生活に疲れた男だのという感情は全くわからなかったはずですが、神父に漂っているもの悲しさが、印象的です。実は、この映画。初恋の人と見に行った初めての映画でした。緊張して彼女にろくに口もきけなかった私が、それこそ清水の舞台から飛び降りるような心持ちで「エ、エイガニイコウ」とたどたどしい日本語でさそったような記憶があります。日本広しといえども、初めてのデートに「エクソシスト」を選ぶカップルはそうそうおりますまい。そういう意味でも印象に残っている映画であります。「もう一度レンタル借りてみようかな」お粗末でした。