最初は精神病院で働く多忙なカレンの日常から始まり、次第に非日常的な、カルト集団の破滅的な行動に信者以外の人々が巻き込まれて逃げ惑うハラハラドキドキなストーリに展開していきます。
仕事を終え疲れたカレンが、帰りに夜遅くの地下鉄に乗車して間もなく起こる出来事を、乗客それぞれの視点でプレイバックして見せてくれるのは斬新でした。
そこから次々に連続して起こる恐ろしく非現実な出来事の数々に、まさかそんなことが起きるなんてと思いながらも、観ている自分もどんどん引き込まれていき、恐ろしくて理解できない出来事の数々が幻覚なのか真実なのかわからなくなっていきます。
登場人物たちは映画の前半から後半までのほとんどを暗く閉鎖的な地下で逃げ回っていて、いったいこれらの恐ろしい出来事が地上ではどんな状態にあるのかもわからないまま映画が進行していくので、その閉鎖的な空間設定も、観ているこちら側の恐怖を増幅させていきます。
世界規模で起きていることなのか、限定された地域でおきていることなのかもわからないまま、目の前で起こっていく不可解な恐ろしい出来事に遭遇していく登場人物たちに、知らず知らずのうちに感情移入していってしまいます。
カレンが勤務先の病院で担当した患者だったヴィビアンという女性の残した絵と言葉(魔女裁判、麦角菌)、カップケーキなど、科学的にも説明できる幻覚をもたらす可能性のあるヒントらしきものが出てくるのですが、ラストでカレンが見たものの正体は結局最後まで私にはわかりませんでした。
ただ、最後にカレンが恐怖で一度閉じた眼を、勇気を出して見開いたのは、映画の中盤で悪魔や怪物への恐怖をカレンが地下で出会った信頼できる青年マイクに話した時に、彼が教えてくれた恐怖への向き合い方を、ひょっとしたら実践したのかなあと思いました。
テーマ曲も印象的で映画を観終わった後に映画の暗い内容をひきずってしまうような耳に残る音楽でした。
コメントをするには会員登録が必要です