言わずと知れた(?)ホラー作家、スティーブン・キング原作の映画です。原作はもちろんとっても怖くて秀逸。人気のない、山奥の巨大ホテルにたった3人でいるという設定だけでも怖いのに、そこに潜む恐怖が次々に形になってあらわれてくる恐怖。霊的なものと、精神的なぐらつきの振幅が徐々に膨らんだものから迫ってくる相乗効果は、すごいものがあります。映画では、また違った怖さがあります。ジャック・ニコルソンの狂気的な演技も見物ですが、妻のウエンディ役のシェリー・デュヴァルの存在感の大きさに驚かされます。たたずまいが怖い!こんなにホラー映画にぴったりの女優はいません。彼女をみているだけで不吉でおどろおどろしい感じが募ってくる感じでした。ウエンディがこの映画のホラー的なものを全て背負っているんじゃないかと思わせるような雰囲気。狂気の鬼と化していくジャック・ニコルソンよりも、最初からふわふわとして「あっち側」と「こっち側」のあやうい狭間にいるような感じを抱きました。ジャック・ニコルソンはその怖さをパワーでぐいぐい押し進めていく感じとしたら、シェリー・デュヴァルは、内側からじわじわと怖さをしみ出させているようです。どっちも怖くて、どっちが正しいことを言っているのかわからなくなるのがまた怖いところです。そして、その二人にじわじわ驚かされている間に、サブリミナルのように双子の女の子やシャワー室での血を流した誰かの映像が出てきて、恐怖を増幅させていきます。また、その切り取った一瞬の画像が端正で、ホラー映画に似合わない感じの異質さが、恐怖をかきたてるのです。想像力を働かせて読み進む本とはひと味違う、視覚からの恐怖を存分に味わえる映画だと思います。
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