シャイニング 巧みに人間の恐怖の心理を刺激するキューブリックの演出に脱帽

原作はスティーヴン・キング、監督はスタンリー・キューブリックという名作中の名作です。
スティーヴン・キングは原作の思い入れが強い作品であり、キューブリックの脚本や演出を度々批判し、ついには自身が監督と努めた「キング版シャイニング」を制作したという、何かと話題になった作品でもあります。

私は、キング版も観ましたが、彼は小説家としては天才ですが、映画監督としては凡才でした。
小説を忠実に淡々と映像化する内容はいたって退屈で、キューブリック版の張詰めた緊張感と恐怖の演出とは比較にもなりませんでした。
もし「シャイニング」を未見であれば、キューブリック版の方を視聴することをお勧めします。

この(キューブリック版)シャイニングの恐怖は、化物や怪物が襲ってくるという表面的な演出ではなく、人間の心理に重点をおいているところにあります。
閉鎖された逃げ場のない空間に得体のしれない何かが確かにいること、日に日に何かに取りつかれたように異常な行動が目立ち壊れていく父親、他人のような表情で謎の言葉を発し警告する息子、これらを重に妻の視点を中心に展開していきます。

そして映像の演出も素晴らしいく、心理的な恐怖を増長させます。
舞台となる閉鎖された高級ホテルの広大な廊下を、静まりかえる中、キリキリキリと音を立て、息子が三輪車で進んでいきます。
映像は子供の視点で取られており、廊下のカーブを曲がるたびに、何かが出てくるような恐怖と緊張感が走ります。
出るのか?いや出ない、、、次は出るのか、いや出ない、、、結局出ないのか、、、いや、、、。

そして決して近づいてはいけないと忠告された237号室。
しかし、どうしても気になっていしまい、吸い込まれるように向かってしまう、そこで見たものは、、、。

とにかく怖いです。
人間の恐怖の心理を巧みに刺激する良作なので、是非、視聴してみることをお勧めします。