ゾンビ 米国劇場公開版 ゾンビ 米国劇場公開版はすごい

ゾンビ・ホラー。原題は「Dawn of the Dead」。ゾンビものの古典としてかなり有名であり、何度もリメイクやパロディ化されている。ちなみに漫画家荒木飛呂彦は、一番好きなホラー映画にこの作品を挙げている。
このゆるいB級映画が、なぜそこまで評価されているのかというと、ゾンビのイメージを決定的にした、というのが一番の理由であるらしい。ゾンビは群れていて、無個性で、知能が低く、ゆっくり動く。そしてゾンビに噛まれると、噛まれた人間も感染してゾンビになる。と、まあこんな感じなわけだが、ゾンビは他のホラー作品に出てくる怪物とは違って、一対一なら人間でも勝てるのである。よってホラー映画としては少し緊張感に欠ける。しかし、そのゆるさが観客にとっては癒しとなり、他のジャンルにはない独特の味わいを醸し出す。ノロノロ歩くゾンビがエスカレーターでつまずいてるところなんかを見ると、ゾンビがいとおしくさえ思えてくるのである。
そして、ゾンビのキャラクター性とは別に、この映画でもう一つ癒しの要素となっているのが、舞台のショッピングセンターである。
主人公たちは、ゾンビから逃げるために、ショッピングセンターに逃げ込む。そこには食料も武器もいっぱいあり、主人公たちは実に楽しそうに戦う。
そこでかかるBGMなんかも、もはや癒し以外の何物でもないのである。
ここまで言っていいのかとは思うが、この映画はストーリーに集中して観る必要すらないのではないだろうか。なにか家で作業するときに、テレビにこの映画をつけているだけでいい。間違いなく癒しを与えてくれるだろうし、やはりクセになる。
と、ここまでは癒しの部分だけを強調して書いたのだが、一つだけグッと来るシーンがあったのを追記しておく。
ゾンビに噛まれた男が、自分がこれからゾンビになるのを理解し、自分がゾンビになったら殺してくれと仲間に頼むシーン。ゾンビになった自分が仲間を襲うことを怖れる男の気持ちも悲しいし、それを撃たなければならない仲間の気持ちもやはり悲しい。そして、画面は別の仲間がいる隣の部屋に移って、彼らは銃声だけで隣でなにが起こったのかを理解する。この演出が実に良い。この映画で唯一、グッときたシーンである。