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ホラー漫画の鬼才、伊藤潤二原作による映画化。富江とは、複雑怪奇な生態の化物の事である。
富江という化物をあまり考えず表面上だけみてみると、なんとも言葉に出来ないおぞましい雰囲気を感じる。しかし冷静になって考えてみると、富江という化物は化物のくせに人間と同等の力しかないし、自身の能力で誰かを殺すこと(人間と同じく包丁もったりしないと無理って意味)は出来ない事に気付く。しかも自身では増殖能力がない。(唯一持っている「誘惑」という能力もいささか疑問である。
もしかしたら男性は富江に誘惑されているのではなく、富江は男性にしか通用しない菌の様なものを発散しており、男性達を”感染”させているのではないのだろうか。)
つまり、人間の男性がいない世界では、富江という化け物は口汚いだけで、大した害もなく、歳をとらないだけの脆弱な生き物である。しかも、自身にしか興味が無い生き物だから、人間とは分かりあえる事が何一つなく、増殖した同種族とも持ち合わせるのは憎しみだけで、決して分かりあえることがない。すなわちナルシストとしての自身の優秀な遺伝子だけを追い求める事だけが自身の生きる全てなのである。
もしかしたら富江は個体として生まれて、誰とも分かりあえない哀しみや個体としての恐怖から、自己への執着が深まり、ナルシストという方法で自己を守っているのではないだろうか?もしそうだとしたら、富江ってもの凄く脆弱で虚しい生き物だな、と思う。哀れすぎる。