13日の金曜日 「13日の金曜日」シリーズ最初の作品。

言わずと知れた「13日の金曜日」シリーズ最初の作品。
これがヒットしたお陰で我らがジェイソン君はこのあとニューヨークへ出張するわフレディと対決するわ最後は宇宙にまで行くわで大忙しになるのだが、この時の製作陣はまさかそんなことになるなんて思ってもみなかったろう。
B級ホラーの元祖と称される本作だが、確かに今観てもそのフォーマットは、びっくりするくらい完成されている。
軽薄な若者たちが次々と殺されて行くスピード感溢れる展開、ラストの主人公と犯人の一騎打ち(なんで途中から素手での格闘になるんだ?)もそうだが注目すべきは俗に言う「死亡フラグ」の類型が見事に押さえられている点。
パロディホラーの傑作「スクリーム」の中で映画オタクのランディ君は、ホラー映画の三原則として①殺人鬼には処女しか勝てない(エッチしちゃダメ)②酒やドラッグはダメ。③「すぐ戻る」って言っちゃダメ(=ひとりにならない)を挙げているが、この法則を当てはめてみると本作の登場人物は揃いも揃って失格である。若き日のケヴィン・ベーコンよ、女の子といちゃいちゃしてる場合じゃないぞ。
「スクリーム」の冒頭で本作の盛大なネタバレをされてしまったのでまぁ驚きは無かったが、初めて観た人は犯人の正体にちょっとびっくりするかもしれない。
それ以外、さほど大した見所は無い。殺人シーンは今見るとびっくりするくらい大人しく、なんだかほのぼのしている。みんな殺される前に「キャー」とか叫んでくれるので心臓の弱い人にも優しい。まぁ現代のホラーを見慣れた我々からすれば仕方ないね。
かように映画自体の完成度は高く、これ一作でひとつのジャンルのフォーマットを完成させてしまったという点において、この映画は未来永劫語り継がれるだろう。しかし、現代のホラー映画好きが本作を観て、きちんと「ホラー」として楽しむことができるかは甚だ疑問だ。
「まったく怖くない」というその一点において、本作は時の経過に耐えられなかったという弱点を露呈している。「古典」として、という前置きを据えなければ楽しめない、と言い切ってしまうのは、この作品を作り上げた先人たちに対して、厳しすぎる態度だろうか。