「悪魔のいけにえ」 トビーフーパーの阿鼻叫喚の世界

最怖のホラー映画といわれる「悪魔のいけにえ」です。原題はTexas Chainsaw Massacre(1974年)です。
旅をする若者の一行が、見知らぬ田舎で、ガゾリンがなくなり、ガソリンを探すために立ち寄った家で惨劇に遭う!という今では普通のアメリカンホラーです。
しかし当時はこのような映画はホラー映画ではありませんでした。サスペンスというかサイコ映画ではこのようなパターンはあったと思います。
ですがこの映画は違いました。当時覆面試写会というのがあって、映画の内容を知らされず試写会で映画を見るというものです。この映画を見た多くの観客は途中退席したそうです。
私の場合、はじめて見たのは1980年代のことです。VHSビデオで見ました。実際にあった話のような語りのあるオープニング。映し出される死体。異様な幕開けでした。
途中ヒッチハイクで拾った男の異様な行動。手のひらをナイフで切るのです。ガソリンを探しに行った家で突然登場するレザーフェイス。有無をいわせず振り下ろすハンマー。
囚われた女性は背中をフックで吊るされる。チェーンソーのエンジン音をとどろかせ追い掛け回すレザーフェイス。直接の残虐描写は一切無いにもかかわらず、全体に異様さを
漂わす映像。家族揃ったあまりにも異常といえる一家の食卓。泣き叫ぶ囚われた女性。その女性の眼球の度アップ描写。そして夕日を背にチェーンソーをもったレザーフェイスで終わる
結論出ずの尻切れとんぼのエンディング。
このようにすべて、いままでの映画のパターンを完全にぶち壊した阿鼻叫喚の世界。この映画を撮ったトビーフーパー監督が自分の作品を超えられないように、いまだこの作品を超える
ホラー映画はないと思います。
はじめて見た夜は夢にまで出てきました。この映画をきっかに数多くのこの手の映画が作られました。
すべての始まりがこの映画です。
それほど素晴らしい映画だと思います。