ある孤島で、日中は目上の女から小言を言われ、夜になると男たちから凌辱され続けていた女が凶行に走るというのがざっくばらんなあらすじだけど、このボンナム役であるソ・ヨンヒがとにかくすごい。役に入り込んでいるとかそういうレベルじゃなくて役に蝕まれてしまったのじゃないかというほどに鬼気迫る凄まじさがある。それは凶行に走る前の朗らかであり欝屈とした表情があるからこそ、より深くそう思えるのだけど。
バイオレンス韓国映画といえば、よくわからんとてつもないテンションでやぶれかぶれに爆進するイメージがこびりついているがこれはそういった既成概念とは明らかに異なる。他の韓国映画と同じように痛々しいし、残酷描写も気合いが入っている。だけどバイオレンスにも関わらず美しいのである。ボンナムが凶行を決意する際に太陽をにらみ続ける姿に殺伐とした修羅に魅了されてしまった。
それに普通はこういった虐げられた人が逆襲するストーリーは犯行に及ぶにつれて気持ちが昂ぶって快感に変わるものだけど、今回は犯行が近づくにつれてひりひりする痛みが伴う。
バイオレンス韓国の最高傑作と謳われているけど(勝手に日本人スタッフが後付けしたとしか思えないが)明らかに異質なのはキム・ギドクの助監督を務めていたチャン・チョルスだからなのだろう。これがデビュー作とは末恐ろしいものだ。
それとコメンタリーが山口雄大と井口昇によるバタリアンズなのも見逃せない。映画と関係ないスシタイフーンの話に脱線するのもご愛嬌。これだけバタリアンズのコメンタリーの映画が多いということは需要があるのだろうか。
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