遊星からの物体X(リメイク) 疑心暗鬼に陥る人間関係に息を呑む

『遊星よりの物体X』をジョン・カーペンターがリメイクしたSFホラー。

『ハロウィン』で子どもたちが見ていた映画が『遊星よりの物体X』だったことからも監督がこの作品にどれだけ思い入れがあるかが伺い知れる。

宇宙人が人間に乗り移り、他の人間をミンチの如く撲殺していくスタンスではなく、乗り移った人間の姿のまま侵食してくるので、誰が宇宙人なのかわからなくなり誰も信用できずに疑心暗鬼に陥る人間関係に息を呑む。SFホラーでありながら誰が宇宙人なのか探しあてる要素はサスペンスのようだ。

そういった典型的なSFホラーからは片道逸れているが、乗っ取られた人間の変態シーンは王道を踏襲しており大変気持ち悪い。あまりのおぞましさに夢にまで出てきて自分も映画のように襲われ、それが現実なのか夢なのかわからなくなるほどこれからの人生に悩まされることになるのではないだろうか。

それにしてもこの時代の特殊メイクは目を見張るものが数多い。『ゾンビ』などのトム・サヴィーニや、『死霊のはらわた』『ZOMBIO/死霊のしたたり』、それにイタリアンホラー全般など特殊メイクだけに焦点をあてても画期的なものばかり。CGがまだ盛んな時代じゃないので人工的な仕掛けの数々に創意工夫がなされている。特殊メイク黄金時代だったといっても過言ではない。

最後に主演のカート・ラッセルが今までのイメージを覆すダンディな役柄だったことを付け加えておきたい。女たちからサンドバックにされハイキックを食らっているイメージしかなかったもので。