サイレン 怖さなら断然ゲーム版

ちょっと期待値が高すぎたかな、と思った映画が、『サイレン 〜FORBIDDEN SIREN〜』です。

恥ずかしながら、ベースであるゲームの『SIREN』(映画版のベースは『SIREN2』だそうですが)はプレイしたことがありません。公式サイトやCMは見たのですが、それらがあまりに怖く、また難易度も非常に高いと聞いたため、諦めてしまいました。それが映画になるというので楽しみにしていたのですが、少々楽しみにし過ぎたかもしれません。

監督は『TRICK』などで有名な堤幸彦。確かに、独特のシュールな感じが出ていたように思います。

舞台は逃げ場のない孤島、しかもだんだん減っていく味方と、徐々に逃げ場のない状況に追い込まれていくというのは、好きなシチュエーションです。

しかし怖さのレベルとしては、そこまででもなかったかな、という感じがしました。全体的に、雰囲気にホラーらしさが欠けていたように思います。ゾンビのようになった人々のビジュアルも、鑑賞前にゲーム版の屍人を想像していためか、あまり怖くありませんでした。

ストーリー的にも何となく腑に落ちない点があり、オチが「主人公の狂気」だったというのも、個人的には残念に思ってしまったところです。「実は主人公にしか見えない幻覚だった」という手は、すでにそこそこ使われていますから、「最後にアッと驚く」というわけでもありません。むしろ、悪い意味で裏切られた感がありました。好みの問題かもしれませんが、やはり屍人になった島民たちは実在のもので、父親などの頼りにしていた人々もちゃんと屍人になっており、現実に絶望的となった状況の中で脱出するなり、破滅に陥るなりの結末にたどり着いてほしかったと思います。

ところで、印象的だったのは生活音でした。食器を洗うなどと言った音が妙に際立っており、リアルな感じがするのです。普通の映画と違うためか、何となく気味が悪く、好きな演出でした。実際、サウンドデザインにこだわった「サウンド・サイコ・スリラー」という触れこみだったようです。映画館で観たからこそ、この点が活きていたのかもしれません。

ゲームをプレイするのはきついけれど、映画なら観られるな、と、ゲーム版を念頭に置いて鑑賞すると、肩すかしを食らってしまう映画ではないかと思います。