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とある村に身なりの汚れたみすぼらしい男が現れた。
村人たちはその容姿や、男が放つ独特の雰囲気から、いい印象を抱いておらず極力関わらないようにしていた。
しかし子どもたちは興味津々に男に近づき、数日と立たないうちに男と友達になった。

そんなある日に、男は子どもたちにある歌を教えた。

いろはにほへと
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
ゑひもせす

子どもたちは意味がわからず、呆然としていた。

そんな子どもたちに向かって男は

「この歌は最後が肝心なんだ」

とだけ言った。

数日経ったある日、村から少しなはれた町から役人がやってきて、その男を連行していった。

役人は男のことを殺人を犯した重罪人だと言う。

ほどなくして男は死刑となった。

ここで先ほど男が残したおかしな歌と、「最後が肝心」の言葉を思い返してみていただきたい。

と か な く て し す

とが(今で言う罪)無くて死す

これはつまり、男が無実の罪で処刑されたことを意味している。