北海道の「地獄谷」というところに行ったときの実話。

 卵が腐ったような硫黄のにおいが充満。
 そして、地獄の名にふさわしく、熱い地面から大量の煙が噴き出しているところがありました。
 そこを眺めていると、その白い煙の向こうから「おーい、おーい」と呼ぶ声が聞こえたのです。
 
 煙で何も見えず、状況からして、人がいるはずのないところ。
 私は、もちろん返事はしませんでした。
 向こうの声が聞こえるときは、こちらの声も聞こえることを知っていたからです。

 後日その近辺での撮影で、J事務所のタレントが地面に足をとられ大火傷を負った、と新聞に載りました。
 足を引っ張ったのは声の主ではないかと、今も思っています。

 地獄と名の付くところには、得体のしれないものが潜んでいるのです。