ある村は月が昇らない事で有名で、夜には漆黒の闇に包まれた。
その村では、村人達が夜になる度、広場に集まって蝋燭やランプを灯し、様々な話をして過ごすのが習慣になっていた。
そんな村に若い二人の男がいた。
二人の男は正反対の性格をしていた。
一人はクールで冷静沈着、明晰な頭脳と判断力、そして物語を創る力を持っていた。
もう一人の男は熱血漢で曲がった事が大嫌い、嘘は絶対につかない信念のある男だった。
そんな正反対な二人にも共通点があった。
それは二人とも話好きだった事。
夜になる度、村の広場で村人達に話しを聞かせた。
冷静な男は、話すのが上手で、村人達は男の口から次々に話されるストーリーの数々にうっとりしていた。
熱血漢の男は自分の体験談を意気揚々と話し、男の堂々と話す姿に村人は感心さえしていた。
ある日、二人の男は喧嘩をした。
と、言っても熱血漢の男が一方的に捲し立て、冷静な男を非難した。
熱血漢の男は、冷静な男の話しの上手さに嫉妬したのだった。
冷静な男を嘘つき呼ばわりし、作り話は認めないと激昂した。
しかし心の中では冷静な男の才能を認めていたし、尊敬すらしていた。
ただ、村人が冷静な男をあまりにも褒め称えるのが気に食わなかった。
村人達の殆どは、冷静な男を庇い、熱血漢の男を悪者にした。
しかし一部の村人は熱血漢の男の肩を持った。
彼の嘘偽りない話が好きだった村人もいたのだ。
それでも熱血漢の男の、冷静な男に対する言葉の攻撃は続いた。
だが冷静な男がやり返す事は一切なかった。
冷静な男は謂れのない中傷に耐え続けた。
冷静な男はただ話をするのが好きだったし、熱血漢の男の話を聞くのも好きだったからだ。
自分さえ我慢していれば事態は収まると思っていたし、また元通りに二人で村人を楽しませる事が出来ると信じていた。
だから尚更、熱血漢の男の言葉に心を痛めた。
一人相撲を取る形になってしまった熱血漢の男は、とうとう「果たし状」を叩き付けた。
決闘の当日、指定した場所に冷静な男は現れなかった。
熱血漢の男は、冷静な男が逃げ出したと、勝手に勝利者気分に浸った。
しかし村人の反応は違った。
肩を持ってくれた村人すら離れていった。
熱血漢の男は一人ぼっちになった。
毎晩、村人に話しを聞かせていた頃が懐かしくなった。
今では誰も自分の話しを聞いてくれなくなった事を嘆いた。
そして愚かな自分を恥じた。
熱血漢の男は、村を出る決意をした。
最後に傷つけてしまった冷静な男に詫びをいれようと決めた。
月が昇らない村に、紅い月が昇った夜の事だった・・・。
私は月凪さんのファンですし、紅天狗さんのお話も好きです。
そしてこのサイトのファンでもあります。
このサイトに投稿して、褒められたり叩かれたりした事があるので、二人の気持ちは良く解ります。
ただ今回の一軒は、傍から見ていて気持ちのいい物ではなかったですし、淋しい気分になりました。
紅天狗さんは今回の非を素直に詫び、月凪さんは広い心で受け入れて欲しいと思います。
だから本文をあえて、侘びた形で終わらせていません。
それは紅天狗さんに直接誠心誠意込めて言って欲しいからです。
コメントや評価する立場の読者の皆さんも、もう少し投稿者の気持ちを考えた言葉を掛ける様にしませんか?顔の見えない世界なので人を傷つけるのは簡単です。
でも認めたり認められたり、お互いが成長出来るサイトの方が良いと思います。
わかって下さる方だけで結構です。
そんな温かい気持ちの方達が、このサイトを更に良くして下さる事を切に願っています。
長々と生意気言ってすみませんでした。
怖い話投稿:ホラーテラー 現役探偵さん
作者怖話