夏休みの初日の夜、いつもの様に俺は自分だけが知る秘密の場所に来ていた。
秘密って言っても町外れにある廃ビルで、夜景が綺麗だし誰も来ないから勝手に秘密の場所っ言ってるだけなんだけどね。
その日も何をする訳でもなく、ジュース片手に煙草吸いながら夜景を見て青春を感じてボーッとしてた。
そしたら後ろから足音が聞こえて、廃ビルって事もあって幽霊!?とか思って怖くて振り向けなかった。
足音が止まる。
勇気を振り絞って振り向いた。そこに居たのは女の子。その子は少し距離をとって俺の隣に来て夜景を見始めた。
身長は小柄、茶色でゆまきの髪、まつ毛は長くてパッチリ二重、筋の通った鼻、思わずキスしたくなるような唇。
夜景も綺麗だけど、その子も夜景に負けない位綺麗で大人っぽくて。でもこんな子がなんでここに?って思った。でもなんか話かけれない雰囲気だったから俺も夜景をまた見てた。
少し沈黙が続いた。その間色々考えた。なんて声かけようとか何話そうとか。
でも先にその子が話しかけてきた。
「夜景綺麗だね」
その子の顔見たらニコニコしてて、その顔にドキドキした。
俺「うん、そうだね」
それぐらいしか言えなかった。君も綺麗だねとか言いたかったけどね。
「毎日ここに来てるの?」
俺「まあ暇があれば」
また少し沈黙が続いた。
名前聞こうとしたら先にその子がまた話しかけてきた。
「ねえ名前は?」
俺「彰(アキラ)」
俺は思わず以心伝心してんのか?って驚いたね。
「彰君。良い名前だね。私は玲美(レミ)、よろしくね」ニコッ
俺「うん」
もう彼女の笑顔にドキドキしすぎて、うんって答えるのが精一杯。
彼女は携帯を見て
玲美「あっ!!もうこんな時間!?じゃあ私帰るね、バイバイ彰君」
彼女はニコニコしながら、帰って行った。
彼女が帰った後スッゴい後悔した、もっとちゃんと話せば良かったってね。
聞きたい事とか色々あったし。
多分この時点で彼女の事が好きになってたと思う。
トボトボ廃ビルを後にして、家に帰ってからもずっと玲美の事を考えてた。
風呂入る時もご飯食べてる時も。
もしかしたらよくある話で実は幽霊とかなのか?とか色々考えてたら、気になって明日廃ビルに行って、直接色々聞こうって決心してた。
まあ明日会う約束なんかしてないし、来るかもわかんなかったけどね。
でも明日行ったら先に来てる気がした。
だから行こうって思った。
その日は、明日会える事を願いながら寝た。
今思うと、彼女との出会いが俺を少しずつ変えていった気がする。
次の日、真夏の太陽が照りつける午前中、俺は公園のベンチにいた。
それにしても暑い…
正直夏は嫌いだ。暑いし、汗かくし、セミは五月蝿いし。兎に角夏は嫌いだ。
祐二「おーい!!彰!!待った!?しかし相も変わらずだらだらしてるなあ…お前はw」
俺「うるせえ、俺は夏が嫌いなの!!暑いのが苦手なんだよ!!」
祐二「まあそうカリカリするなよw カリカリ梅か?お前はw」
こいつは腐れ縁の祐二。唯一無二の親友。
よくケンカはするけど、こいつ以上に気が合うヤツはいない。
今日は祐二の誘いで街に買い物に行った。
なんでも彼女への誕生日プレゼントが決まらないから一緒に選んでほしいとか。
買い物してる時も俺は玲美の事を考えてボーッとしてた。
祐二「おい!聞いてんのか?お前今日おかしいぞ?どうした?暑さにやられたか?w」
俺「あっ?ああ悪りー…ちょっと考え事してた。」
祐二「お前が考え事?やっぱり暑さで…」
俺「だからちげーよ!!ボケ!!」
祐二「なんだ!?お前短気か!?遅れてきた反抗期か!?」
祐二はこれでも祐二なりに心配してくれてるんだと思う。
俺「あーもううるさいな!!いいから早く選べよ!!」
俺と祐二はいつもこんな感じだ。
祐二「よし!!これに決めた!!お前は何も買わないの?」
俺「俺はいいよ、欲しいのないし。と、いうかもう買ったから」
祐二「何!?いつのまに!?」
俺「いつでもいいだろ、お前と違って俺は一人で買い物する方が好きだからなwそれより買ったなら行くぞ」
祐二「お前俺を誘わないとは…、あっ!!ちょ待て!!置いてくなよw!!」
帰りに待ち合わせをした公園で祐二と長い事雑談をした。
薄暗くなってきてそろそろ廃ビルに行こうか考えてた。
俺「よし!!そろそろ俺は行くぞ」
祐二「ん?そうだな、解散するか!!」
俺「おう!!じゃあまたな!!w」
祐二「おう!!じゃあまた!!」
俺はドキドキしながら廃ビルに向かった。来てるか来てないかとまた会えるかもとか色んなドキドキ。
廃ビルについて、急いで屋上に向かった。
屋上につくとそこに玲美はいなかった。
いつもの静かな屋上。
息を切らしながら、いつも夜景を見る屋上の端に向かった。手刷りにもたれてうつ向いた。
沈黙が続く、夜景は変わらず綺麗、いつも通り一人の空間。
なんか笑えてきてさ、なにマジになってんだろ?とかなに期待してんだろ。とか色々考えてた。そんな自分が可笑しかった。
とりあえず笑ってみた。
だけどなんか虚しくて泣けてきた。
うつむいて暫く泣いてた。久々に泣いた気がした。
落ち着いて夜景を見ながら煙草に火つけて、大きい深いため息。
なんか何も考えないでボーッとしてた、いつもみたいに。
そしたらいきなり後ろから
「わっ!!驚いた!?w」
ビクッ!!って驚いて振り向いた。そこには玲美がいて、急に嬉しいやら恥ずかしいやらでワタワタ。
玲美「彰君目腫れてるよ?泣いてたの?」
玲美はどこか心配そうに言ってくれた。
俺「ちっちがう!!」
玲美「あれー?でもさっき鼻すすってシクシク言ってるの聞こえたよ?w」
一部始終を見てたかのように言って、玲美は俺の目尻についた涙を拭いてくれた。
俺「…見てたの?」
玲美「うんw」
俺「…いつから?」
玲美「初めからだよw」
俺「…初め?」
玲美が廃ビルについて、俺がいたから声をかけようとしたら、凄い勢いで屋上にいったから、気付かれない様についてきて様子を見てたとか。
なんか一人で笑ったり泣いたりしてたから、声をかけるか迷ったとも言ってた。
まあ自分だったら絶対に声はかけないが。
それを聞いて急に恥ずかしくなって、顔から火が出そうだった。多分耳まで真っ赤だったと思う。
玲美「なんで泣いてたの?」
俺「……。」
言える訳がない。
玲美「黙ってちゃわかんないよ?w 何でも相談のるからさ、話してよw」
俺「……もう大丈夫だよw」
玲美「本当に?本当に大丈夫?」
俺「うん!!w あのさ聞きたい事あるんだけど」
玲美「なに?」
俺はストレートに聞いた。
俺「もしかしてさ、玲美ちゃん…幽霊?」
玲美は笑いながら話し始めた。
玲美「プッ…彰君何言ってるの?w そんな訳ないじゃんw」
ひとまず安心。フゥって肩を撫で下ろした。次の質問をした。
俺「玲美ちゃんは……玲美ちゃん?聞いてる?」
余程おかしかったのかまだ笑ってる。
玲美「えっ!?あ〜ごめんごめん、だって幽霊?って真顔で聞いたりするから…プッ」
色々質問した。歳は同い年だった。兄弟は、妹が一人いるらしく、かなりお姉ちゃん思いらしい。妹は玲美にかなり似てるとも言ってたな。どこの学校か聞いたら俺と同じ。最近越してきたとか。すこし運命を感じたよ。何でここ知ってるのか聞いたら、玲美ちゃんの親父さんはこの地域の出身らしく、俺らぐらいの時に見つけてたらしい。引っ越して来た際に言われて来てみたとか。
玲美「てゆうか彰君、玲美でいいよ?w」
俺「わかったw 俺も彰でいいよ?w」
玲美「彰っ!?w」
俺「なに?」
玲美「呼んでみただけw」
玲美はどこか嬉しそうにニコニコしてた。
玲美と色々な話をした。俺と玲美はすぐ意気投合して、番号やアドレスも聞いた。
それから玲美と毎日メールしたり、電話したり、デートしたり、楽しかった。まるで夢の中にいるようだった。
それから一週間が過ぎて、夜、玲美からメールが来た。玲美に明日廃ビルに夜来てほしいと言われた。
俺はわかったとメールを返して寝た。
玲美に呼ばれた日の夕方、俺は祐二に呼ばれていつもの公園にいた。(待ち合わせの公園の事。俺と祐二のたまり場)
祐二「なに、ニヤニヤしてんだよ?w 女でも出来たか?」
俺「ちげーよ、でも好きな子はいる。」
祐二「なっ…!!俺を出し抜いたな!?」
俺「いや出し抜いてないし。まずその前にお前彼女いるだろw」
祐二「……まっそれもそうだなw まあ頑張りたまえ!!俺は今から亜矢(祐二の彼女)との約束があるからな!!」
俺「はあっ!?俺来た意味無くね?w まあ俺も玲美の所行くからいいけどw」
祐二「あっずるい!!俺もつれてけ!!」
俺「うるせー!!お前は亜矢の所に行け!!バカ!!w」
祐二「はいはい、言われなくても行きますよー!」
祐二は恋してる俺が珍しいのか嬉しいのかわからないけど、ニヤニヤしながら去っていった。
俺は廃ビルに向かった。
屋上には玲美が先に来てて、不機嫌そうに口をとがらせてた。
玲美「もう遅いよ!!なにしてたの?電話しても出ないし…」
俺「ごめんごめん、ちょっと祐二と話しててさw」
祐二の事はもちろん玲美に話してた。
玲美「もうー!!まあ許してあげてもいいけど?w」
俺「本当に?w良かったーwてか今日はどうしたの?」
玲美「ん?ちょっと話があってね…」
そういうと玲美は夜景見始めた。
暫く沈黙が続く。
玲美「彰は、私の事…好き?私、彰の事好きなんだ…」
玲美は照れ臭そうに続けた。
玲美「でね、彰が迷惑じゃなかったら…私と付き合ってください」
俺「俺でいいの?」
正直、嬉し過ぎて気を失いそうだった。
玲美「うん。私じゃ駄目?」
俺「いや俺も玲美の事好きだから付き合いたい」
玲美は今まで見たことのないぐらい嬉しそうにニコニコしながら
玲美「本当に!?じゃあよろしくね!!」
その日から玲美との交際が始まった。
毎日玲美と過ごした。ゲーセン行ってプリクラ撮ったり、祐二カップルと遊園地でダブルデートしたり、廃ビルから夜景を見ながらキスしたり。
結婚してもいいと思ってた…
自分の中心に玲美がいつもいた。
愛してた…
いや今でも愛してる…
幸せだった。何もかも全てが順調だった。
でもそんな幸せもあの日を境に、徐々に音を立てて崩れて行った……
ある日俺は玲美の家に来ていた。玲美の家族は皆仲が良くて、暖かい家族。玲美の妹にはびっしたな。妹とは聞いてたけど、双子だったとは。瓜二つだし、名前も似てた。…たしか麗奈だったような。
その日は玲美の家族とご飯を食べて自宅に帰った。
次の日の朝、祐二から電話があり公園にきてほしいとの事だったので、公園に向かった。
公園につくと祐二はすでに来ていて、うつ向いてベンチに座っていた。いつもの元気がなく、落ち込んでるように見えた。
俺「祐二!!朝からどうした?」
俺は明るく声をかけた。
祐二「おおー…悪いな、ちょっと報告しようと思ってな…」
やはり元気がない。それに目が充血してまぶたも若干腫れてる。俺は元気の無い祐二の顔に少し驚いた。
俺「どうした〜?何かあった?」
俺は心配そうにいった。
祐二「昨日…亜矢と別れた。」
祐二はボソッとそう言って、肩を落とし、深くため息をついてまたうつむいた。
俺「……。」
俺は祐二にかけてやる言葉が見当たらず、何も言えなかった。
うつむいたまま祐二は話し始めた。昨日亜矢から電話があり、いきなり別れを告げられた。訳を聞いても何も答えず、ただ一方的に別れを告げられたと。
俺「そうかあ、…まあ元気だせよ」
もっと気の効いた事を言ってやれば良かったかもしれない。けど俺にはそれぐらいしか言えなかった。
祐二「ああ、悪いな…じゃあとりあえず帰るわ、じゃまたな。」
祐二はそう言うとフラッと帰っていってしまった。
俺は家に戻って自分のベットに横になり、考えてた。祐二は大丈夫なのか?、何で別れたんだ?とか。
朝早かった事もあり、俺はいつの間にか眠りについていた。
プルルルルー…
携帯の着信音で目が覚める。
もう夕方だ。俺は寝惚けながら携帯をみた。
公衆電話からだ。電話に出るか迷う。
プルルルルー…
しつこいので俺は電話にでた。
俺「はい、もしもし?」
俺はめどくさそうに言った。
???「……。」
眠りを妨げられた上に無言電話。俺は少しイライラしながら言った。
俺「もしもし?誰?イタズラならもう電話切…」
電話の相手は俺が言い終わる前に話しかけてきた。
???「彰君でしょ?」
何処かで聞いた事のある声だ。……しかし思いだせない。
俺「そうだけど、あんた誰?」
???「玲美ちゃん浮気してるよ」
俺「はっ!?どういう事だよ、おい!!」
プープープー…
電話が切れた。どういう事だ?一体誰が…。
俺は玲美に電話をかけた。
プルルルルー…
玲美「もしもし?彰?どうしたの?」
俺「今から廃ビル来れる?」
玲美「えっ?今から?いいけど…どうしたの?いきなり」
少し驚いたように玲美は言った。
俺「ちょっとね。」
玲美「じゃあ今から行くね。」
俺「うん。じゃあ廃ビルで。」
俺はそう言って電話を切って廃ビルへ向かった。廃ビルへ行くあいだ俺はずっとあの電話の事を考えていた。
一体誰なのか、そしてなんのために。
この時俺の中に玲美への芽生えた小さな疑惑。
廃ビルにつくと玲美はまだ来てなかった。
夜景を見ながら玲美を待った。俺は苛々する気持ちを抑えた。
少し経って玲美がきた。
玲美「彰、待った!?どうしたの?いきなり」
俺は振り返り、夜景を背に向け玲美に言った。
俺「今日公衆電話から携帯に電話があって、誰か知らないけど玲美が浮気してるって…」
少しの沈黙の後、玲美は言った。
玲美「彰はそれを聞いて私を疑ってるの?」
玲美は泣きそうなのか少し声を振るわせながら言った。
俺「いや、そうじゃないけど…」
嘘だ。俺は玲美を心の何処かで疑っていた。
玲美は我慢出来ず泣きながら俺に言った。
玲美「だってほとんど毎日彰と会ってるんだよ?会わない日は、電話もメールもしてるじゃん!?彰は私を信じてくれてたんじゃないの?」
俺は泣いている玲美を優しく抱きしめながら謝った。玲美が泣き止むまで抱きしめていた。
泣き止んだ玲美は俺を見上げて言った。
玲美「彰…私を信じてくれてないの?」
俺「いや、ただ…」
いまにもまた泣きそうな顔で玲美は言った。
玲美「…なに?」
俺「ただ、少し不安になっただけだよ…」
俺はそう言って、玲美を離して夜景を見始めた。
すると玲美が後ろから抱きつき、俺に言った。
玲美「私は彰の事信じてる、彰にも私の事信じて欲しい…けどね、今すぐ私の事全部信じなくていいよ?少しずつで良いから…信じて欲しい…。」
俺は馬鹿だった。どこの誰とも知らない奴の言葉に惑わされるなんて。
俺「うん。ごめんね。」
暫く沈黙が流れる
先に玲美が口を開く。
玲美「あっ!ねぇねぇそう言えば今日ね、亜矢ちゃんと麗奈と私でカラオケ行ったんだよ!?」
俺の横に来て、玲美は笑顔でそう言った。
俺は驚き、玲美に言った。
俺「亜矢と!?本当に!?亜矢何か言ってなかった!?祐二の事とか!!」
玲美は不思議そうな顔をしながら俺に言った。
玲美「えっ?本当だけど…なんで?祐二君?何も言ってなかったよ?」
俺は玲美に祐二と亜矢の事を話した。亜矢が一方的に祐二に別れを告げた事、そして二人が別れた事を。
玲美「えっ!?本当!?何も言ってなかったよ?だって亜矢ちゃん用事があるって言ってたから、てっきり祐二君と会うのかと…ん〜…」
玲美は腕を組んで何か考えているようだ。
すると玲美がいきなり何か閃いたような顔で俺にこう言った。
玲美「あっ!!そうだ!!ねぇ祐二君のアドレス教えて?」
俺「祐二の〜?何で?」
玲美「秘密。」
玲美はニヤニヤして、何か企んでいるようなをしている。
玲美に祐二のアドレスを教えるのは気が引けるが、とりえず俺は玲美に祐二のアドレスを教えた。玲美を信じてね。
そして夏休みが終わりを告げた。
朝、眠い目を擦りながら、学校へ登校した。
体育館で校長の眠くなる話しをあくびをしながら、聞き流した。全校朝会が終わった後、教室には向かわず屋上へ向かった。
屋上のドアの上にハシゴで登り、そこですこし眠った。
玲美「彰!!彰ってば!!」
俺「ん?玲美?…なんでここにいるの?」
俺は寝惚けながらそう言った。
玲美は少しため息をつき、少しあきれたように俺に言った。
玲美「私、彰と同じ学校に転校してきたんだよ?忘れたの?因みに麗奈も一緒だよ」
俺「あ〜忘れてた。うん、ごめんごめん。てかここがよくわかったね」
俺は笑いながらそう言った。
玲美「彰の姿が見当たらなかったから、祐二君に聞いたらここだって言ってたから来てみれば…はあ〜」
玲美は呆れているようだ。
俺「あれ?麗奈ちゃんは?」
玲美「祐二君と話してる。あっ!私、彰と同じクラスだからよろしくね?」
玲美は嬉しそうにそう言った。
俺「よろしく」
また高校生活が始まった。ただ違うのは、玲美がいること。それだけで毎日が楽しかった。
玲美と麗奈はすぐみんなと打ち解けてた。祐二はいつもの祐二に戻り、少し安心した。学校帰り祐二と玲美と麗奈と俺でカラオケに行ったり、ボウリングしたり。幸せだった。
だけどそんな幸せは崩壊のカウントダウンを始めていた事にこの時の俺はまだ気付いて居なかった。
ある金曜日の学校帰り、俺は玲美と帰っていた。
俺は明日俺の家に泊まりに来ないかと、玲美を誘った。
玲美「えっ!?明日?ごめんちょっと用事あるんだ、ごめんね」
玲美は申し訳なそうに言った。
俺「用事〜?何の用事〜?」
俺はニヤニヤしながら、玲美に聞いた。
玲美「ちょっとね」
玲美は笑顔で答えた。
が何か隠しているようだった。
俺「何〜?俺に言えない事なの?」
俺はまたニヤニヤしながら玲美に聞いた。
玲美「違うよ!!もう彰しつこい!!」
少しムスッとしたように玲美は言った。
俺「ご、ごめん。」
俺はシュンとしながら玲美に謝った。
玲美「でも用事終わったら、泊まりに行く」
玲美は笑顔でそう言った。
俺「ほんと!?じゃあ待ってる」
俺は喜びながら玲美に言った。
その後それぞれ自宅に帰った。俺は自分の部屋を片付け終えて、眠りにつこうと部屋の明かりを消そうとした時、祐二から電話がきた。
祐二「もしもーし、今大丈夫?」
祐二は少しテンションが高かった。俺はそんな祐二に冷静に言った。
俺「無理!!悪いな!おやすみ」
祐二「待てって!!報告があるんだよ!気になるだろ?」
祐二は嬉しそうに俺に言った。
俺「どうせ、好きな子でも出来たんだろ?」
祐二「お見通しか!?誰だと思う?誰だと思う?」
祐二はやたらとテンションが高い。
俺「どうせ、麗奈だろ?最近遊んだり連絡とってるみたいだし。玲美から聞いてるから知ってんだよ」
俺は祐二に笑いながら言った。
祐二「なんだ、そこまで知ってたのか、つまんねーの!あっ!明日買い物行くからとりあえず寝るわ!おやすみ」
俺「買い物?誰と?何買うんだ?」
祐二「秘密だ!じゃあな!」
祐二は嬉しそうにそう言って電話を切った。
俺は何だアイツと思いながら部屋の明かりを消して眠りについた。
そして次の日。
俺は昼過ぎに起きた。携帯を見ると玲美からメールが来ていて、夕方には俺の家に来るとの事だった。
そして夕方。
ピンポーン
玲美が来た。玲美と俺の家族で食事をとり、それぞれお風呂に入り俺の部屋で玲美と遅くまで話した。明日どっか行く?とか将来の事とか色々。でも今日なにしてたのかは聞かなかった。聞いても教えてくれないのがわかってたから。
そして眠くなり手を繋ぎ、お互い寄り添うようにして眠りについた。
お昼頃俺は起きた。玲美を見ると気持ち良さそうに寝ている。起こさないようにトイレに行って部屋に戻り、煙草に火をつけた。
テーブルに目をやると自分の携帯が光っていた。嫌な予感がする…。
携帯を開くとメールが来ていた。
知らないアドレスだ。
玲美を見て、寝ているのを確認しメールを開くと画像が添付されていた。
画像を開くとそこに写っていたのは、玲美と祐二が笑顔でどこかのデパートらしき所のベンチに二人で座っている物だった。そして日付も丁寧についてあり、昨日の日付だった。
俺は玲美を起こした。
玲美は寝惚けながら言った。
玲美「ん〜?どうしたのー?」
俺「これ」
玲美「……!!」
玲美は画像を見て驚き無言だった。
俺「これ、どういう事?玲美でしょ?」
玲美「うん。」
俺「何で祐二と二人でいるの?しかも昨日じゃん!昨日の用事ってこの事だったの!?」
俺は裏切れた気持ちでいっぱいだった。
玲美「違う!!聞いて昨日…」
俺は玲美が言い終わる前に玲美に静かに言った。
俺「言い訳なんか聞きたくない、帰れよ。」
玲美「お願い!!聞いてよ!」
泣きそうになりながら玲美は言った。
俺「いいから帰れよ!!」
俺は玲美にそう叫んだ。
玲美は泣きながら何も言わず帰って行った。
それから俺は部屋で一人考えていた。色々考え過ぎて苛々は増すばかりだった。
俺は廃ビルに行こうと部屋のドアノブに手をかけ、ドアを開けようしてやめた。
廃ビルに行ったら玲美に会いそうだから。今は玲美に会いたくないから行くのをやめて寝ることにした。
次の日、俺は普段通り学校に行った。けど教室には行かずに屋上のいつもの場所に向かった。玲美や祐二に会いたくないから。
仰向けになり、空を見上げた。そしていつものように昼寝。
目が覚めるともうお昼だった。いつもより長く寝てたらしい。
ボーッとしながら煙草を吸っていると、屋上のドアが開く音がした。俺は構わずボーッとしてた。
玲美「彰…」
振り向くと玲美が梯子を登り、俺の少し後ろに来た。
俺「……。」
俺は何も話したくなかった。俺はまた前を見て煙草を吸った。
玲美「あのさ…今日の夜、廃ビルに来てくれない…?」
玲美は俺の後ろから恐る恐るそう言った。
俺は振り向いて玲美に冷静に怒りをぶつけた。
俺「行かない、なんでそうなるの?第一自分が何したかわかってんの?」
玲美は泣きながら俺に言った。
玲美「だから聞いてよ!!何で聞いてくれないの…?何で信じてくれないの…?」
俺は玲美に怒りをぶつけた。
俺「聞くもなにもあんな写真みたら何も聞かなくてもわかるだろ!?信じたくても信じれる訳ないじゃん!!」
玲美「……。」
俺は立ち上がり何も言わず玲美の横を通り過ぎて、梯子を降りて、屋上のドアを開けた。すると麗奈が下から階段を登ってきた。
麗奈は途中てとまり俺に言った。
麗奈「彰…玲美の話も…」
俺「……。」
俺は何も言わず麗奈の話を最後まで聞かないで階段を下り麗奈の横を通り過ぎて足早に自宅に帰った。
俺はみんなに裏切られたと思ってた。俺は全てを失った気がしてた。誰も信じたくなかった。
その夜、俺は食事もとらずに寝た。
次の日、俺は昼頃に起きた。母いわく起こしても起きないから寝かせておいたとか。適当な親だ。
昼食を終えた後、母に何故かケーキを出された。
俺「ケーキ?何で?」
母は呆れた顔で言った。
母「何で?って昨日あんたの誕生日だったでしょ?昨日あんた機嫌悪そうに帰って来たと思ったら、ご飯も食べないで寝たから今だしたの」
誕生日か…今まで玲美との日々が楽しくて、幸せすぎて、自分の誕生日も忘れてた…
俺はこの日、学校を休んだ。みんなに会いたくないからだ。
そして夜、玲美からメールが来た。開くか迷ったがいちを開いた。
from:玲美
題名:ごめんね。
本文:今、廃ビルにいるよ。やっぱり昨日来なかったね。でも怒ってないよ?だって私が誤解されるような事したから…。彰に渡したい物があったんだけど、とりあえず置いおくね。後、もうここには来ないから…ごめんね…でも信じて欲しかった。本当にごめん。
-end-
俺は返事を書かず携帯を閉じた。でも明日学校に行って玲美にちゃんと訳を聞こうと思った。
けどこれが玲美からの最後の連絡だとは、この時俺は思ってもいなかった…。
玲美との別れは突然だった。
プルルルルー…
携帯の着信で真夜中に目が覚めた。
俺「ん?…誰だこんな時間に…」
携帯を開くと麗奈からの電話だった。
俺「麗奈〜?…なんでこんな時間に麗奈がかけてくるんだよ…」
俺は不思議に思いながら電話に出た。
俺「もしもし?あのなあ〜…今何時だと思ってんだ?玲美の事なら明日学校で…」
麗奈は俺が言い終わる前に言ってきた。
麗奈「彰…お姉ちゃんが…」
麗奈の声が震えていた。
俺「玲美がどうした?何かあったのか?」
俺は優しく心配そうに言った。
麗奈「自殺した…」
麗奈はボソッとそう言った。
俺「はっ!?お前何言ってんだよ!?玲美が自殺なんか…」
俺は動揺を隠しきれない。
麗奈「帰りが遅いから、一回街とか公園探したけど居なくて、一人で廃ビル行くの怖かったからパパと廃ビルに行ったら…」
俺は目の前が真っ暗になった。暫く何も話せなかった。
麗奈「それで今中央病院にいるんだけど…」
それを聞いて俺は電話を切り、中央病院に急いだ。
病院につくと麗奈が入口で待っていた。
俺「麗奈!!玲美は!?大丈夫なのか!?」
麗奈「……。」
麗奈は何も言わず首を横にふり泣きながら抱き付いてきた。。俺は言葉も出なかった。麗奈が言うには玲美を見つけた時、多分草木がクッションになり、意識は無いが少し脈があり、救急車を呼んだらしいが病院についた時には息をひきとったらしい。
俺は麗奈に玲美の所に通された。
玲美には白い布が被せられていた。俺は白い布をとって玲美の顔を見た。安らかな顔をしている。
俺「…玲美?。」
俺は涙を流しながら、玲美の名前を呼んだ。
俺「ごめんな…玲美。痛かったろ?傷だらけになって…ごめんな…俺のせいだ…ごめんな…ごめんな…」
俺は泣きながら何度も玲美に謝った。
俺は自宅に帰り親にこの事を話した。玲美が自殺した、自分のせいだと。けど両親は俺をせめなかった。ただ優しく「そうか…今日はもう早く寝なさい」とだけ言われた。俺は自分の部屋にいき、一人泣いていた。
後日、早々と玲美の葬式は行われた。
玲美の葬式には祐二も来ていた。が、言葉は交わさなかった。と言うよりあっちが避けていた気がする。
俺は麗奈に呼ばれて、近くの公園で麗奈と話していた。
麗奈「あのね、お姉ちゃん彰に渡したい物があったらしいんだけど、探しても見当たらないの…」
俺は玲美のメールを思いだして、麗奈にその事を話した。
麗奈「そっか…そうなんだ。お姉ちゃん…」
麗奈は俺の胸によりかかり泣き出した。俺は優しく麗奈の頭を撫でた。
ふと視線を感じた。
公園の入口に目をみた。
誰かが走り去っていった。
その後、俺は自宅に帰り、着替え、久々に廃ビルに向かった。
廃ビルに行く途中、誰かにつけられている感じや誰かに見られてる感じがしたが、辺りを見渡しても誰もいない。だけど俺は気にせず廃ビルに向かった。
廃ビルについた。
俺は屋上に向かった。
いつもの場所からいつものように夜景を見た。
足下を見るとてすりの向こうに袋が落ちてる。
袋をあけると、プレゼント用に包んである箱と、手紙。
手紙を読んだ。手紙は玲美からの物だった。
彰へ
本当にごめんね。でもあの日これを買いに行ってたんだよ?でもあの日は二人じゃなくて麗奈もいたんだよ?二人でベンチに座ってた時は麗奈がトイレに行ってた時だと思う。けど麗奈はあんな写真撮ったりしてないと思うの。誰かはわからないけど、私が彰を傷つけた事はたしか。本当にごめんね。また仲良くしたいよ。これをつけて学校に来てくれたら嬉しいな。待ってるよ。
玲美より。
箱の包みを開けるとブラックオニキスの四角いペンダントのネックレスが入っていた。
俺はそれ首につけて、夜空を見上げた。綺麗な満月だ。
玲美が好きだった、曲が頭の中に流れる。
暫く夜景を眺めていた。
涙が止まらない。
隣を見ると玲美がそこにいる気がする。
俺「玲美…」
俺は手摺を越えて、目を瞑り飛び降りようとした。
が、飛び降りれなかった。
俺「…くそ…!なんで…俺は…」
泣きながら俺は言った。
自分が情けない。自分のせいで玲美は…
俺は後悔してもしきれなかった。死んで楽になりたかった。けど死ぬ事も出来ない臆病者だ。
暫く沈黙が続く。
ガサッ!!
袋を踏む音が聞こえ振り向いた。
ドンッ!!
俺「えっ…お前!!」
誰かに押され俺は宙に浮いた。
落ちていく中で屋上からそいつが見てるのがわかった。
俺「くそっ…なんでこんな事に…」
俺は涙をながしながら、悔しそうに呟いた。
グシャッッッ!!!!
その後、廃ビルから彰達の死体が発見された。
警察の検死の結果。
彰は屋上から落下し、後頭部を強打、即死と断定。
祐二も屋上から落下したと思われる。腕や胸元には争った形跡が。しかし死因は落下による頭部強打と断定。
麗奈は初め誰かわからないぐらい顔が潰されており、腕などに争った形跡が。死因は頭を鈍器のようなもので殴られた物と断定。
そして亜矢は屋上から落下し、即死。腕などに他同様争った形跡が。しかし足首に手形のような痣。
死因は落下による頭部強打により即死と断定。
この悲惨な事件は未解決のまま幕を降ろされた。
これで彰の話は終わりである。
ぜひ皆さんの手で解決して頂きたいと思う。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話