「無理心中しようとしたんだ」
「騙された」
「危なかった」 「最低だ」
など皆口々に言い合っていた。
火は思ったほどでておらず、チラチラと赤い炎が見える程度だったので、皆興味本位で行ってみようということになった。
近くまで行ったことで気がついた。
突っ込んできた飛行機は間違いなく日本軍のものだった。
しかし、操縦席はおろか機体はほぼ全壊しており、乗組員の確認はできなかった。
ふと施設を見ると玄関や、窓という窓は全て木の板をうちつけて封鎖してあったが、建物の半分くらいは壊れており、中の様子が伺えた。
女と言えど戦時中。
男どもの留守を守るとちかったのは伊達じゃなかった。
一人が様子を見に行くと言い出し、それに続いて5、6人で中の様子を見に入って行った。
残されたばあちゃんたち子供達は退屈になり、辺りで遊んでたんだって。
そしたら草村に足がある。
恐る恐る覗いてみるとそこにはどう見ても腕が3本ある人間が倒れていた。
脇腹のあたりから無理矢理ひっつけたみたいな腕が生えており、肌は恐ろしいくらいに白い。
幸いにも顔は見えず、すぐに残っていた大人達に報告に行った。
大人達はすぐ見に行き、そして戻って来るなり、「もう側を離れたらダメ」と言った。
中に入っていったものが出て来たらすぐに帰ると。
しばらくして出て来たもの達は皆、青い顔をして俯いていた。
「どうした?何があった?」と聞いても答えは帰ってこず、その日はもう帰ろうということで集落まで戻った。
それから島の反対側は立入禁止となり、それからしばらくして戦争は終わり、国からの人間がやってきて施設や、宿舎はすべて壊されてしまった。
島民にはなんの説明もないままに。
事件のあった日、施設の中に入った人間は皆、順々に島を出て行った。
中に何があったのか皆知りたがったが誰も話そうとはしなかった。
だが、最後の一人の番になった時、その人はみんなに話しておくと言ったらしい。
中にあったもの。
それは建物中に作られた土の階段。
地下に下りるぽっかり空いた洞穴のようなもの。
その中には、少し離れた所にはだか電球がぶら下がっており、まるでこっちへ来いと誘っているようだった。
恐る恐る薄暗い洞穴を進んで行くと鉄の扉があり、行き止まりになっていた。
その扉は簡単に開き、中は病院の治療室のようだった。
中に足を踏み入れて気がついた。
標本だらけだ。
なにか薄い黄色いような液体漬けにされた動物、爬虫類。
皆ギョッとしたそうだ。
落ち着いて見回してみると一番奥にカーテンがかかっている。
更に奥があるのか、と一人がカーテンを引いた。
カーテンの裏にあったのは3本の巨大なガラスの包。
ドラムカンの背を高くしたようなそれにも他の標本同様に薄黄色の液体が入っていた。
しかし、中に入れられていたのは動物ではなく、人間だった。
皆、思わず目を背け、逃げ出しそうになったが、ハッとして振り返ってよく見てみた。身体中にある無数の縫い後。
恐る恐る顔を確かめてみると、それは何年か前に戦争に借り出された島の男だった。
一同は絶句し、誰ともなく出て来たのだった。
そう話し、その女性も島を出て行った。
「今この島に残っとる人間で当時のもんはワシだけじゃ。みんなそんな話も知らんじゃろう。お前らが夏になったら海に泳ぎに行きよるじゃろう?あっこらは昔は兵隊の船付ける渡しみたいな場所だったんよ。あの辺は草村ばっかりで何にもないじゃろう?洞穴も死体もどうなったかはワシも知らんがの。カッカッカ…。あっこが何じゃったかは今になったらワシにもわからん。じゃが、戦争は人間をおかしくしてしまうんじゃ。やったらいかんのじゃ。」
ってばあちゃん奥に引っ込んでった。
今年は泳ぎに行けません…。
怖い話投稿:ホラーテラー 都会の田舎者さん
作者怖話