その着信は急であった。
それはコンパのお誘いだった。
特に断る理由もない。
と、いうより大歓迎だ。
居酒屋に向かう足もやや浮き足立っていた。
店に着いた。
店員に予約者である友人の名前を告げ、部屋を教えてもらった。
襖を勢いよく開け放つと、よくある光景が目に飛び込んできた。
『おー!遅せーよ』
『駆け付け一杯ね!』
先日と同じ顔ぶれ…。このメンバーで飲むのはこれで二度目。
楽しい一時だった。
『今日は急に悪かったな。奢るから先に出てくれ…。支払い済ますから』
「マジか!?サンキュー。」
一足先に店の外に出て一服していた。
5分くらいしても出てこない。
便所かな…。
更に5分。まだ誰も出てこない。
再び店内に入り、仲間を探したが見当たらない。
そうしてる内に、店員さんと目が合う。私に部屋を教えてくれた人だ。
「…結局、待ち惚けでしたね」
彼らは現実では来ていなかった…。
メール着信のバイブが揺れた。共通の友人からだ。
「いえ…。来てくれましたよ。
事故ったのにね…。
最後に彼らと飲めて良かった…」
怪訝そうな表情の店員さんに背を向けて、泣き顔を隠すように店を後にした…。
次…化けて出てきたら、俺が奢るよ。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話