短編2
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港の待合室

出張の帰り、私はとある小さな港からフェリーに乗ろうとしていた。

予定の便に乗り過ごし、次まで三時間ほどある。

かといって、車で帰るのは億劫であった。

まあ、たまには独り小さな港の待合室で、波音に耳を傾けながら、のんびり読書も良いだろう。

一時間ほどたったであろうか…。

読書にも飽きてきた私は、おもむろに煙草に火を点けた。

前方の席に女性がいる…。

席といっても座っていない。

背もたれの上部から顔だけが覗いて、まるで生首のようである。

どう見ても人間ではなかった。

私は、煙草をくわえたまま、呆然とそれを見ているしかなかった。

体が動かないのだ。

睨み付ける彼女の恐ろしい表情は、私から血の気を奪うのに余りある。

そうこうしている内に、生首は、背もたれの陰にゆっくりと降りて行き、見えなくなった。

そして、再び、ゆっくりと上がってくる。

ただし、今度は一列、私に近づいている事実が、更に私を絶望のどん底に突き落とす。

また、一列。

また、一列……。

そして、遂に、私の目の前の席の背もたれから、あの顔が覗く…。

私は恐怖の余り、全身から冷や汗を流し、ぶるぶる震えていた。

もはや、諦めの境地にいる。

だが、どうしようも出来ずに、ただただその顔を見ていた。

凄く長い時間に感じた。

そして、遂に女の生首がゆっくりと口を開く。

『…ここ、禁煙だよ!!』

…気が付きませんで…。

どうも、すみませんでした。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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