中学3年生の頃の話。
8月30日の夜−−
僕は鞄の中を覗いて青ざめていた。
宿題のプリントがない。
毎年夏休みの宿題を終盤に片付ける僕は、今日まで宿題を教室に置いてきてしまったことに気づかなかったのだ。
このままではマズイ…宿題を取りに行かなくては!!
今思えば次の日に行けばよかったのだが、単細胞な僕はその夜の11時半過ぎに学校へ宿題を取りに行くことにした。
学校までは歩いて10分。美術室の窓の鍵が壊れているのは知っていた。中庭から入れるのだ。
学校に到着−−
真っ暗なグラウンドを突っ切り、更に真っ暗な中庭へ着いた。
やっぱり美術室の鍵は壊れていた。
最新の注意を払い、静かに窓から美術室へ侵入。
しかしそっと窓を閉めたその時…
廊下で足音が聞こえる。
どうやら警備員が近くまで見回りに来ていたらしい。
すでに静かに窓から逃げ出す余裕はない。
僕はとっさに廊下側の壁に張り付いた。
いよいよ美術室の前で足音が止まる。
そして懐中電灯のライトが、扉の窓から室内をキョロキョロと見渡す。
その間僕は壁になりきっていた。
幸い美術室の扉の鍵は閉まっていて、警備員はわざわざ室内に入ってくることはなく、次の教室へと向かって行った。
その後も僕は5分程壁になりきっていた。
もう大丈夫だろう。
僕はようやく壁モードを解き、扉に近づいた。
しかしなんてことだ!再び足音が聞こえてきた。
ばれてしまったのだろうか、再び足音は美術室の前で止まる。
その時僕は扉の真下でうずくまっていた。
見つかったらタダでは済まない事は分かりきっているので、ひたすら小さく小さくうずくまっていた。
しかしなぜだろう。
いくら経っても扉が開けられることもないし、懐中電灯で照らされることもない。足音もしない。
結局1時間くらいうずくまっていたが、とうとう痺れを切らした僕は、勇気を出して扉の窓から廊下を覗いてみることにした。
恐る恐る廊下を見てみる。
誰もいない。
いつの間にか警備員は行ってしまったのだろう。僕は安心して扉の鍵に手をかけた。
しかし不意に教室の隅に気配を感じる。
とっさに振り向く
髪の長い女の人が直立不動でこちらを見ていた
あぁぁあぁああぁ
僕は叫びにもならない情けない声を出した。
金縛りなんてしている場合じゃなかった。
全力で逃げた。
正直、おもいっきり窓を開けて中庭に出たあたりから記憶はないが、気がついたら家に着いていた。
その後朝まで震えていたけど、何も起こらなかった。22歳になる今でも何も起こっていない。
でもあの夏は結局宿題をやらなくて怒られたな。それとしばらく学校で一人でいられなくなった。
これが僕の怖かった体験です。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話