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中編4
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手紙 〜前編〜

まだ【昭和】で携帯や、

ポケベルすらなかった時代の話…。

俺(圭祐)は、

18で故郷の実家を離れ、

出稼ぎに東京で一人暮らしをしていた。

貧しい村育ちの俺には都会の人とそりが合わずに、誰とも仲良くなれないまま、家と職場の往復だけの毎日…

家にいても、無趣味だし意味もなくTVをつけてただ見てるだけで、日々のストレスを発散させられず、憂鬱な毎日だった。

俺が24歳で変わらぬ日を過ごしていたある日の夜遅く、そろそろ寝ようかとしてた時に、突然家の電話が鳴った。

故郷の母からだった。

実家のお隣の、俺もガキの頃可愛がってもらった山本さん家の祖母が亡くなり、俺も世話になったし葬式やるから帰れるなら帰ってこい…と言われた。

都会に疲れ気味だったし、人の不幸を理由にしては不謹慎だが、いい息抜きできるかと翌日、上司に無理を言い、数日休暇を頂いた。

故郷に帰るのは6年ぶり…

電車…バス…長い旅路。

故郷の町の最寄り駅の街は発展して都会のように賑やかになっていたが、俺の町がある所まで行くバスに乗ると、数分したら見慣れた…変わらない景色が続き、疲れた心が少し癒された気がする。

ようやく俺の育った町に入り、見慣れたバス停に到着。

バス停の標識は風化して辛うじて字が読める位で、時の流れを感じさせた。

約4時間、電車やバスに座り続けた体は痛く、田舎に多い坂道が俺の体をいじめる…

汗をにじませ何個目かわからぬ坂道をのぼり、ようやく俺が18年間育った家が見えた。

「ただいま…。」

カラカラと鳴る戸を開け久しぶりの実家の玄関。懐かしい家の匂い…

奥にいた母が、俺の声に気付き出迎えに来てくれた。

久々に会う母親。

さらに老けたなぁ…と俺のイヤミに笑い合う。

こうやって笑ったのは何日ぶりだ?

笑った記憶がない…

父親は仕事でまだ帰宅してなくいない。

居間に座り久しぶりの実家を見渡す…

変わってない実家が嬉しい。

まだ時間あるし、朝から食べてなかったし久しぶりに母親に手料理作ってもらう事に。

部屋の棚に写真を見つけた。

立ち上がり近くで見ると、俺が小さい頃の写真や両親の写真…

一番手前には俺が18で家を出て行く時、恥ずかしいし十数回は断ってたが押しに負け、家を出る記念に家の前で撮った家族三人の写真。

手に取りよく見ると、

俺は照れた顔、父親は満面の笑顔で俺の肩を抱く、母親は軽く泣きつつも笑顔…

それを見た瞬間、

俺の中で溜まってた何かが崩れ、涙が洪水のように流れる…。

うまくいかない仕事や人間関係、都会にいながら孤独な毎日…

6年分の涙が出た気がする。

台所の母親はそんな俺を見てクスリと笑い、濡れた手を拭きながら、棚から一枚の封筒を出した。

母親「これ…あんたが初めて仕送りしてくれた現金書留の封筒…記念に大事にしてるんよ…」

笑顔で言う母を恨む…

今出すなや…

余計涙でるじゃねぇか…

俺「んなゴミみてぇなもん…とっとと捨てちまえよ…」

親の前で泣く恥ずかしさから、手で目元を隠し言った。

母「や〜だよ〜ん!」

笑顔で子供のような口調。

年考えろや…と心でツッコミしつつトイレに行き顔を整える。

数分籠もり、落ち着かせトイレを出るとつまみがテーブルに並んでいた。

見慣れたつまみ。

口に運ぶと、ふざけてるが優しい母と同じく、とても懐かしく優しい味でまた涙がこみ上げてきたが、つまみを強く噛みながら堪えた。

しばらくして父親も戻ってきた。

基本は変わらないが頭も寂しくなり背も縮んだか?

頭を指摘すると、

「うるせーよ」

と笑いながら頭を叩かれた。

再会話をしつつ、

式の準備…

お通夜は間に合わなかったが告別式は何とか間に合った。

裾が短い喪服を着て隣の家へ…。

微かに覚えてる隣の家の玄関を通るとお線香の香り…

懐かしいおばあちゃん…

記憶が蘇る…

やばいまた泣きそうだ…

そこで1人の女性と再会した。

お隣さんの一人娘の由香。

幼なじみで小さい頃、

よく遊んで6年前の出発の時も強く握手をして別れた。

式の最中だし、

再会の挨拶はせず、

流れの会釈して御焼香。

式が終わり、

飲みの席で再会の挨拶。

俺「久しぶり由香、俺の事覚えてる?」

由香「覚えてるに決まってるじゃん。久しぶりだね、元気にしてる?都会の話聞かせてよ。」

都会に行く俺を羨み、

憧れた由香。

久しぶりの再会で俺達は話が盛り上がる。

大好きな祖母を天命とはいえ亡くした由香は泣き続けて腫れた目をしていたが、変わらぬ笑顔が、俺の心に突き刺さる。

俺「おばあちゃん亡くなって寂しいだろうし、暇つぶしでいいから俺と手紙のやり取りしない?」

言った瞬間、

俺は何言ってんだと思った。

由香「ん〜…いいよ。でもあたし字ぃ汚いよ?それでもいいなら…ってか寂しいのは圭祐じゃないの?」

笑いながら指摘する由香。

図星だが笑ってごまかす…

翌日、

由香の気分転換にと昔遊んだ場所を2人で廻る。

懐かしい話は尽きる事がなく、楽しい時間だが終わりはくる。

短い休暇だし仕事の為、

帰らねばならない。

両親に別れを告げ、

バス停で由香と話をし、

別れ際…

俺「じゃあ手紙書くからな…」

6年前と同じく、

強く握手を交わし由香とも別れた。

揺れる車内、

母の手作り漬け物が入った袋を握りしめ、

涙を流す俺。

こうして俺の帰郷が終わり、由香との手紙のやり取りが始まった。

怖い話投稿:ホラーテラー Shadyさん  

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