しんしんと降る雪の中、僕は今日も最初のバスを待っていた。
最終と言っても早い。5時25分が最終なのだから。
いつもこのバス停で降りる、色白で長い黒髪と、大きな瞳の美しい女の子。
彼女はバス停を降りると、僕が座っているベンチの隣に座る。
話かけたいけど、話しかけられない…だって僕は…自分に自信が無い。
この静寂な時間が何日か続き、彼女は少し休憩したら、黙って帰って行く。
その姿を見守る事しか出来ない僕。
そしてまた今日も彼女は同じ時間にバス停を降りた。
話したい…無理とは思っていても、一度で良いから僕を見て話しをして貰いたいたい。
そぅ思ってる矢先、彼女から声をかけて来た。
『あの…いつもココに独りで居て寂しくないですか?』
驚いた僕は『僕が見えるんですか??』
と訊き返した。
彼女は少し困った顔をしたが、すぐさま『私に見えるのは貴方だけです』と優しく微笑んだ。
彼女は盲目の少女で身内は居なかった。
『生まれた時から視力を失ってしまった私が、初めて目にする事が出来たのが貴方…貴方はいつも私を優しい目で見て下さってましたね。』
『貴方が何者であっても構いません。ここは私が唯一【存在していても良い場所】私は貴方と居れば嫌な事も、何も怖くありません』
『あ、あの…貴女はずっとここで僕と居てくれるんですか?いや、そんなムシの良い話…』
彼女はまた微笑み『はい、ここに居ます。私は貴方と一緒に…それが私の幸せだから。』
初めは僕も躊躇した…彼女がここに居続けたら、彼女はいずれ朽ち果ててしまう…それを彼女が察したかの様に、
『それも私の望みです。私はここで貴方と寄り添って、お話をしていたい…貴方に包まれていたい』
その日から、バス停で僕たちのの時間が始まった。今もそのバス停のベンチで幸せに暮らしている。
もし、僕達を見かける事があれば、優しく手を降って下さい。微笑みを向ける事しか出来ませんが。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話