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短編1
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お坊さんの知ったかぶり

私の家族は至って普通で、例えば霊感なんてものも疎遠であったはずなのに、一度だけ、以前に家族全員で変なものを見たことがある。

あれは数年前の夏だった。

家族で茶の間で晩ごはんを食べていると、玄関から『ガタン』と音がした。

母が玄関に向かった途端、静かな悲鳴が聞こえた。

何事かとみんなで玄関に行くと、傘を持ったずぶ濡れのお婆さんが玄関に立っているのだ。

「どちらさまですか?」

母が震える声でそう言うと、お婆さんはゆっくり玄関の戸を開け出て行った。もちろん玄関は鍵を掛けてあったのだから、入ることはできないはずだ。

そして夜中、突然姉の悲鳴が聞こえてきた。

急いで一階に降りると、玄関に姉がいた。姉の目線の先には、あのお婆さんの傘が下駄箱の上にあった。それに気づいた父が無言で傘を外に放り投げ、私たちに一言「大丈夫だ」と言い残し、また寝室に戻って行った。

それからと言うもの、お婆さんと傘の怪奇現状は、我が家で二回も起こってしまった。

とうとう参った私たち家族はお寺に相談しに行った。するとお坊さんは「それはひいおばあさんです」と私たち家族に優しく諭した。

ひいおばあちゃんはまだ生きている。

お寺から帰り、とりあえず玄関に塩とコップ一杯の水を置いたところ、お婆さんも傘も現れなくなった。

怖い話投稿:ホラーテラー (SIC)さん  

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