短編2
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僕の影

夏休みの少し前のある日の事。学校の帰宅途中に突然後ろから肩を叩かれた。

振り向くと佐野の姿があった。

佐野「葉山!いま帰りかよ~。もちっと早く歩けよ!トロイ奴だな!女みたいにタラタラしてんじゃねえってばよ!トロ山が!」

いつもの調子、汚い口調で罵れた。僕が早く歩こうが遅く歩こうが、道を塞いでいるわけでもないのだから、佐野には全く関係のない事だ。

こいつはいつもこうだ。もう何年も我慢して慣れたはずなのに、沸々と憎しみが溢れてくる。

『居なくなれ!』

『転べ!落ちろ!』

『死んじまえ』

『地獄に堕ちろ!』

馬鹿にした目で見る佐野に憎しみを込めて心の中で呟いた。

僕「ごめん…」

気持ちとは反対にいつもの癖で謝ってしまう。

佐野「邪魔なんだよ!端っこ歩け!」そう言いながら僕の肩を突いて端に突き飛ばした。

佐野「それからよ!明日二万持って来いな?」

僕「に…万?」今まで言われた金額で最高の額だった。今までは精々五百円、千円であったが、二~三ヶ月に一度で何とかしてきたけれど、さすがに無理すぎる金額だ。

僕「無理だよ…そんなお金ないよ」そう言うと佐野は僕の右足の先端を自分の左足で踏み付けた。

佐野「親はボーナス出たんだろ!?お前がなくても親はあんだろ!頭悪い奴だなほんと」

こいつはクズ野郎だ。生きてる価値はない。こんな風に一生付き纏われるのか…。そう考えると身震いした。

佐野「とにかく持ってこいよ!指令は守れ!鉄則だ。」そう言い放ち早足で翔けて行ってしまった。

こいつさえ居なきゃ…。本気で思った。

一人殺しても許されるとしたら迷うことなく佐野を殺ると確信した。

その日の晩。自分のベッドを抜け出して居間のタンスにある母親の財布に手を掛けた。生まれて初めてだ。

母親に正直に話をして事が大きくなったら、どんな仕返しがあるのか想像つかなかったし、二万円もの大金を貰えるはずはない。理由を考えたけど、期限は明日だ。間に合わない。もしバレたら謝ろう。(間違いなく気づくはずだが)

なんにせよ僕にはBADENDしかない。とりあえず明日は繋ごうと親のお金を泥棒してしまった。

怖い話投稿:ホラーテラー 独さん  

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