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今回の話は僕の実体験となります。
僕は怖い話が好きですがいわゆる零感なので
この話は僕が唯一経験した怖い出来事です。
では
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これは僕が大学一年生の頃
季節は夏。夏休みに入りおのおの真新しい大学生の夏を楽しみだす。そんな頃
当時僕には付き合っていた彼女がおり家族ぐるみの仲のよい付き合いをしていた。
そんなバイトも休みの休日。
彼女の家に遊びに行くことになった。彼女の家は僕の家から自転車で15分の所にある。
僕は自転車で向かっていた。
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そんな彼女の家に向かう途中に神社がある。近くの道路の端に古ぼけた地蔵がある車一台通るくらいの細い道。
地蔵の近くの自販機で彼女に何か飲み物を買っていってやろうと思いジュースを二本購入した。
何度も通る慣れた道だったがふと地蔵が目に入った。
どこにでもありそうな赤い前掛けをし、目を閉じた地蔵。お供え物の花や水があったが朽ちており、見た目、どこか淋しそうにみえた。
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その時僕は気分が良かったのだろうか好奇心だろうか。
僕は自販機でもう一本ペットボトルの水を買いその地蔵にお供えした。
何か良いことあるように願いを添えて。
彼女の家についたその夜。
僕は彼女と二人でDVDを見ていた。
彼女は犬を買っており(マンションだったが)、DVDがあまり興味のない話だったので真剣に見ている彼女をよそにその犬を膝に乗せて遊んでいた。
その時。
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「ワン!ワン!」
と急に犬が吠えだした。
僕は突然吠え出したのでびっくりしたが
ああ、まだ遊び足りないのだなと思っていたのだが全然鳴き止まない。
それどころか僕のかまっていた手をするりと抜け出し、隣の書斎に入っていってなお吠えている。
後を追いかけ書斎に入ると犬は何処かへ向かってずっと吠えている。
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その先は障子。さらに先は窓しかない。手すりもベランダも何もなくここは四階である。
僕はここである話を思い出した。犬や猫は時々何もない空間をじっと見つめたり、吠えたりする。そんなときは何か人には見えていないものが見えているという。
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その吠えている先には何が居るのだろう。ずっと吠える彼女の愛犬の鳴き声はどこか怯えているように聞こえ僕は怖くなり、
「大丈夫大丈夫。何も居ないから」と言い聞かせ
犬を抱えその部屋から出た。
その後しばらく唸っていたが僕が帰る頃には普通になっていた。
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夜も遅くなり、彼女に別れを告げ家を出た。
行きに通った道を自転車を漕ぎながら帰っていると、
ふとペダルが重くなった気がした。はっと気づく。ここは地蔵がある通りだ。
気味が悪いなと思いペダルを漕ぐスピードを早める。地蔵を通り過ぎようとした時に何故かふとカーブミラーが目に入った。
カーブミラーに地蔵が映った。とたんにぶわっと悪寒が走り、後ろを見ないように無我夢中でペダルを漕いだ。
ここから離れたい一心で。
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家に着き自転車を駐輪場に止めると
後輪があからさまに空気が抜けパンクしたみたいになっているのに気づいた。
無我夢中で気づかなかったのだ。
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その次の日。
バイト先の店長に昨日の出来事を話す機会があった。
「ああ、お地蔵様に勝手にお供えするのはやめたがいいよ」
と言われた。
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店長が言うには、地蔵にもいろいろ種類があるらしく中には地縛霊などを鎮める、または供養する為に置かれた地蔵もあるのだという。
そして、そういった地蔵にはちゃんと供養、お供えする人が居るらしく
他の人が勝手にお供えすると、他に優しくしてくれる人が居ると着いて来るらしい。
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僕はその話を聞き後悔した。本当に怖かった。お供え物なんてしなければと思った。
「もしかしたら幽霊がついて来ていたのかもしれないね」
と店長は笑った。
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今、僕は大学四年になる。あれからは特に何が起きたということはない。
当時の彼女とは縁が無く別れ、独り身で就活を頑張っている。
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ある日、就活帰りに久々にその道を通った。
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そこにあった地蔵が無くなっていた。新しくそこに何かが建ちはじめていた。
僕は思った。
もし、ここにあった地蔵が霊を供養するものだったら
無くなった今
そこの霊達はどうなるのだろう。
僕はあの時のカーブミラーをふと見る。
通り過ぎる間見ていたが
地蔵があった場所が映る事は無かった。
作者だいきち
二度目の投稿になります。
今回は実体験なのであまり怖くないかも知れませんが楽しんでもらえたら嬉しいです。