自分が体験した話は、安全策内で面白味が無い。
また、ある程度年を取ると不思議と遭遇しにくくなる。
今回は母上の話をしようと思う。
不思議ではあるが、「怖い話」とまでは感じられ無いかも知れない。
だが、実際体験したなら?如何でしょう。
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母上は三人兄弟の真ん中、上に兄、下に妹をもっている。
田舎の港の村の生まれだ。
まだまだ長男が大事にされていた時代、妹だって末の子供だからかよく可愛がられていたらしぃ。
そうなると母上は淋しくもなるわけでして、自然とお婆ちゃんになつくわけですよ。
まぁ、お婆ちゃんとは仮の名で、母上のひぃばぁちゃんにあたる人なのですが。
母上の祖母は亡くなっています、 面倒でややこしいのでひぃばぁちゃんはお駒さんと呼びます。
母上は大層お駒さんに可愛がられたそうだ。
小遣い貰えばお駒さんと自分のおやつを買い、一緒に食べては、母親に怒られる。
母上はとんでもなくタイミングの悪いお子様だったので、夕食前に食べたりなんだのしてたんですね。
お駒さんに大好きな酒粕を与えられれば、顔を真っ赤にさせながら千鳥足でトンテンツクテンテン♪と踊り出す始末。
勿論母親に怒られる。
そんなある日、夕御飯も済ませお駒さんの部屋でおとなしく酒粕をかじっていた母上。
ふと、鏡台の上が気になった。
何の気なしに、近付けば米粒程の象がいたらしい。
お駒さんに報告したいも、熱い熱い一番風呂に入ってる。
捕まえようと試みるも、チョロチョロと動く米粒象。
やはり真っ赤な顔の母上。
当時幼稚園にも満たなかった母上は怒り紛れにバチンと叩いた。
しかし、手の内が恐ろしくなり酒粕もほってお風呂場に向かったそうだ。
「あれ、ねぇさん。まーたったんかい?」
お駒さんに酒粕をもー食べきってしまったのか?と勘違いされ、憤慨しつつも小さな母上は事の顛末を話した。
「まー。命あるもん取ったら取られるで?ねぇさん、部屋行かぁ。」(まぁ。命あるもの取ったら取られるよ?お姉さん、部屋に戻ろうか。)
お駒さんにそぅ云われて部屋に戻る。
とんでもないことをしたと、口をつぐむ母上をよそにお駒さんは首を傾げていた。
鏡台の回りをよくよく見ながら、うんうんと頷いて母上に向き直った。
「ねぇさん、あないな事はいかんで?性根悪したら性根悪される。鏡みたいにだぁで?」(お姉さん、あんな事は駄目だよ?性根悪くすれば性根悪くされる。鏡のようにですよ?)
取ったら取られる、と云うことは何が取られるとは考えたく無いものである。
しかし、お駒さんはこぅ云ったそぅだ。
「鏡とこにおやつ置いてったろ?持っていんだみたいだわ。良かったもんだ。」(鏡の所におやつを置いて行ったでしょ?持って行ってしまったみたい。良かった。)
その後もお駒さんはよく話していたが、母上がなんとなく頭に詰め込めた事柄は以上である。
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酒粕を食らった酔っ払い紛いの幼女。
まして、天然な母上の話だ。
妹とはコクゾウムシに違いないと話している。
しかし、お駒さんの話が未だに謎だ。
彼女はボケる事なく亡くなったらしい。
その他の母上の話は又次回。
作者Яёу.
今回は母上の体験談です。
不思議体験のある母上が羨ましい。
自分も子供の頃、母上の港の村で夢だかなんだかわからない体験をした事を思い出したので、また上げようと思います。
拙い文、最後までお付き合いありがとうございました。
*加筆
()内は標準語に方言を直したつもりです、読みづらく申し訳ありません。