短編1
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一緒に。

ホームで電車を待っていたら、スーツ姿の若い男性がにこやかに話し掛けてきた。

「良かったら一緒に行きませんか」

何この人。新手のナンパだろうか。ちょっと顔をしかめてみせたが、彼は臆することなく続けた。

「1人じゃ寂しいんですよ。俺も男ですし、出来たら若い女性と2人で行く方がいいかなぁってね」

やっぱりナンパか。どーせ飲みに行こうとか、そういう意味合いなんだろうけど、知らない男と飲みに行くほど飢えちゃいない。

私は腕組みをして虚勢を張ると、「行かないっつってんのよ。行きたきゃ1人で行きなさいよ」とか何とか言ってやった。

彼は気を悪くした風もなく、やはりにこやかに笑いながら「そうですか。分かりました」と頷いた。彼はそのまま私に背を向けた。

少しして、電車の来訪を告げるアナウンスが流れた。嗚呼、やっと帰れる…。安堵の息を吐くと、さっきの男性が首だけ動かして私を見た。

「それでは、1人で行ってきますね」

彼はにこやかにそう言うと、線路に飛び込んだ。

彼が飛び込んだのとほぼ同時刻、電車がホームに入ってきた。

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ngt kazu様。コメントありがとうございます。

マジですよマジ。いや、フィクションですけど(笑)。

私は1度、線路に投身自殺しようとしている方を目の当たりにしたことがあります。幸い、その方は救助隊に保護されたんですが…本当、見ていてゾッとしました。

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おいおいマジかよ~(笑)
いやね笑えないか!

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心霊大好き様。コメントありがとうございます。

自殺者の心理というものは計りかねますが、一説によると、とてもリラックスしている状態らしいですね。

これから死ぬわけなんですが、不安や恐怖はない。むしろ、この世のしがらみから解放されるから、喜びに近い感情すら抱いているのだとか。

…何にせよ、自殺はあまり感心出来ませんが。

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途中で場面を想像してしまいました。

飛び込んだ瞬間・・。

自分だったら頭の中色々考えてしまうんでしょうね。

・・・。怖わ((゚Д゚ll))

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鷹司様。コメントありがとうございます。

温かいお言葉、骨の髄にまで染み渡ります。
夏といえば怪談話!というわけでして、時間を見つけて投稿させて頂ければと思います。

これからもどうぞ宜しくお願い致します。

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この予想外の展開、面白いわー。
もし、一緒に行くと答えていたら、この女の人も死んでいましたねー。
言葉遊びさんの怖話は本当面白い。これからも楽しみにしてますよー。

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