Lineで遠く離れた鹿児島の友達に雪国の道路はどうなっているのかを、あえてホワイトアウトしている時を見計い、車で運転中にビデオで撮影して送信してみた。
車のライトに照らされた真っ白い空間、時折姿を見せる電柱だけが車が走行しているという証になる。
運転中にそのような行為は危ない。ましてや猛吹雪の前の見えない状況では、画面を見て確認しながらなんて走行は出来ない。なので画面を見ずに撮影した。撮影時間は2分位で、ちゃんと撮れたかなんて気にせず送信する。
Lineに返信が来たようだが、今は見ている余裕がない。目を離した隙に前方に何が出てくるかわかったもんじゃないからだ。それほどまでに吹雪がすごいのだ。時折姿を見せる電柱で見える距離はせいぜい10メートル、時々3メートルといったところだ。
家までは30分位走れば着くはずなのだが、かれこれ1時間は経つだろうか…
吹雪もおさまる様子がない。
家に行くにはこの道から横道に入らなければならないのだが、この吹雪じゃ曲がる所が見えない。とりあえず自分がどこにいるのかをGPSで確認する為、後続車が確認できるか不安だったがハザードをあげ車を停車させる。
画面を見ると“Lineにメッセージが届いています”と表示があったが、今はそれどころではない。素早く地図アプリを起動させ、位置を確認する。
「え?」
思わず声が出てしまった。GPSではまだ曲がる所にすら来ていない。時間的にはもう通り過ぎていてもおかしくはないのに…
後続車が来ると危ないので発進しようかとも思うが、後ろもろくに見えない状況では発進すら危なくて出来ない。どうしようか迷っている時にふと思う。時刻は午後9時を過ぎた頃なのに、対向車もなかったし、止まっている間も後続車がこなかった。いくら吹雪で前が見えなくても、ヘッドライトを見逃すはずはない。不思議におもうが、こうも前が見えないのであれば誰も運転しないのだろうと勝手に解釈し納得した。
「しかたない。このまま吹雪がおさまるまで待とう。」
暫く待ったが吹雪もおさまらないし、走っている車も見かけない。
暇なので、lineのメッセージが来ていた事を思い出し、外の白い景色から携帯に目を移す。
すると画面いっぱいに“lineメッセージが来ています”と表示があった。
さっきの動画の感想だろうと思い、わくわくしながらlineを開く。
“大丈夫なのか!?”
“おい!!大丈夫か!!!”
“無事だったらすぐ連絡よこせよ”
“冗談だろ?”
“頼むから冗談って言ってくれ”
「は?」そんなに心配しなくてもいいのにと声が漏れる。あまりに心配しているので、“大丈夫だよ、それより真っ白でしょ?”と送信する。
×表示がでて送れない。何度やっても送れない。GPSは正常なのにlineが送れない。心配している奴には申し訳ないが、しばらく待ってから送信しようと諦め、先程撮った動画を確認する事にした。
フロントガラスに映る真っ白い風景と車のエンジン音、時折姿を現す電柱。しばらく同じ画がなれ、ちゃんと撮れている事に満足し、停止ボタンを押した。
停止された画に疑問を感じた。フロントガラスに映る真っ白い風景…に赤いランプが上の方に見える。
「あれ?信号機っぽいな…」
停止された画からまだ20秒ほど録画が残っている。だが再生ボタンを押す気になれない。
何故だか解らないが、赤いランプを見た瞬間から手が震えているからだ。
先程確認したGPSでは信号はまだ先のはずだし、来るときは絶対になかったと思う。
赤いランプなんて後部座席にあるのか?そんなはずがないのは解っているが、思わず後ろを確認する。
ない…
前を向き直った拍子に停止ボタンの真上にあった指が画面に触れてしまい動画が再生された。
赤いランプが真上を通過した直後だ。
右側から大型車…
激しく回転する景色…
ガラスを突き破る音…
画面の半分を覆い隠す雪…
ライトに照らさた赤黒い自分…
画面から目を離し、まだ収まらない真っ白い世界を見て思う。
“早く、帰りたい”と。
作者欲求不満
突如思いついたので投稿します。
下手な文章で読みづらいと思いますが、読んでくれると嬉しいです。
#gp2015