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ケンタ君は助かりませんでした。
救急隊員さん達が来た時にはもう手遅れで、気絶したケンタ君のお母さんと一緒に病院へ運ばれていきました。
私達はお寺に残り、作戦を練る事になりました。
これで終わったわけじゃない…
次は自分の番かも知れない…
みんなの表情はもう生気を失っていました。
住職さんの死…
そしてケンタ君の死…
正常でいられる訳がありませんでした。
なんだかんだ言っても私達は小学6年生。
まだまだ子供なんです…。
私「…やっぱり、無理なんじゃないですか…?あんな恐ろしいピエロを目の前にして怖がるな、感情を無にしろなんて、絶対に無理です…」
ケンタ君は必死に怖がってる事を隠そうとピエロを挑発し、威勢良くしていたけど結局ピエロに殺された…
心の底から無にならなければ奴には勝てない。
私は近くにいたのに何もしてあげられなかった…
夢なのに鮮明に覚えている…思い出すだけで身体の震えが止まらない…
ガク「マイ!!やめろッ!!」
!?
突然大声で私に怒鳴ったガクさん。
驚いて、顔を上げるとガクさんは私を真っ直ぐ見つめていた…。
…そっか、ガクさんには心の声が聞こえるんだ。
ガク「それ以上何も考えるな…、まだ終わってないんだ。次は誰が狙われるかも分からない。お前がそんなんでどうする?爺さんの敵打つんだろ?ケンタの敵打つんだろうが!シャキッとしろ」
心を鬼にして私に喝を入れてくれたガクさん。
今ここにガクさんがいなければ、私は絶望の淵に立たされ、一瞬で住職さんやケンタ君の元にいっていたでしょう。
そうだ、まだ終わってない。
これからなんだ。
ガク「ピエロは何か言ってなかったか?小さいことでもいい。できるだけ教えてくれ」
そう言われた私は必死に夢での出来事を思い出した。
私「ケンタ君が倒れた後、もっと焦らせばよかった、次はそうするから楽しみにしてて、プランは考えておくからって言ってました!」
ガク「ってことは次に狙われた奴はそう簡単には殺さないって訳か…。」
そう言って頭を抱えるガクさん。
ハルナ「どうしよう…私…自信、ないよぅ…」
今にも泣き出しそうな震えた声で言った。
リョウ「…俺も。あのケンタでも勝てなかったのに俺が勝てるわけないよぉ…ッ!!」
リョウ君は耐え切れずに泣いてしまった。
私「…みんなごめんなさい…、元はといえば私のせいだよね…。でもね、私は最後まであきらめない!絶対に助かる方法はあるはずだから…」
だから一緒に頑張ろう?って言いたい…けど、そんなの私が言う事じゃないよね…
ハルナ「…そうだよね、私も諦めたくない!だからマイちゃんと一緒に頑張る!」
グッと顔を引き締めて、強い眼差しで私を見つめたハルナちゃん。
リョウ「俺も!!ピエロなんか怖くない!!だか…ら、み、んな…で」
バタンッ - - -
私「!?リョウ君ッ!?」
リョウ君の声が途切れ途切れになり、目を向けると白目を剥いて勢いよく倒れてしまった。
…そんな、…リョウ君…お願い!!頑張って!!負けないで!!
私は必死に祈りました。
ハルナちゃんも目を瞑って祈っています。
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ポポーン ポポポーン
ポポーン ポポポーン
!?
え?
夢の世界に行ってもいないのに、あの音が聞こえてきました。
ハルナ「…嘘、…マイちゃん…ッ」
周りを見渡すと私とハルナちゃん以外、みんな動きません。
瞬きすらしません。
一時停止状態です…。
ケンタ君の時と唯一違うのは、私の姿がハルナちゃんには見えるという事です。
私「ハルナちゃん、近くに来て!!」
私達は寄り添い、背中合わせで座りました。
ピエロがどこから現れても分かるように。
「………」
「………」
?
沈黙が暫く続きましたが姿はもちろんピエロの気配すら感じません。
私「ハルナちゃん…大丈夫?」
私は小声でハルナちゃんに様子を聞きました。
ハルナ「…………」
私「…ハルナちゃん?」
返答がない…。
私は恐る恐る、ハルナちゃんの方に向き直り、ハルナちゃんの正面に回り込みました。
!?
私の心臓がドクンと跳ね上がりました。
私「……そんな……」
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ハルナちゃんの両目がくり抜かれて空洞になっていたのです。
口はポカンと開き、埴輪のような表情…。
もはや身体の震えが止まりません…。
いつピエロが現れて、いつの間にくり抜いたのか…
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また私が傍にいたのに助けてあげられなかった…。
私「…なんで…、なんでこんな酷いことするんだよぉぉぉお!?憎んでるのは私なんだろぉ!?私を狙えばいいじゃないかッ!!出てこいよ!!弱虫ピエロ!姿を見せろッ!!」
私は泣きながら、叫んだ。
もう恐怖とかそんなんじゃない…。
憎い…、ピエロが憎くて憎くて私の身体は怒りで震えていた。
『イイゾイイゾ♪ ゾクゾクするなぁあ~ キヒヒヒヒヒ♪』
!?
頭上から気色悪い声が聞こえ、天井を見上げるとピエロは天井にへばりついていた。
ニタァっと不気味な顔で私を見ながらピエロは言った。
『どうだった?どうだった?びっくりした?俺の最高傑作♪ あ、くり抜いた瞬間見せてないよね?見たい?見たい?ねぇ、見たい?』
なんだか一人で楽しそうにワクワクした感じで喋りまくるピエロ。
ドンッ - - -
天井から床に落ちてきたピエロがパチンと指を鳴らした。
その瞬間、頭の中にちょっと前までの私とハルナちゃんの姿が見えた。
見たくないから目を瞑るが頭の中で流れる映像は、嫌でも見える…。
ハルナ「マイちゃん、大丈夫?こっちはまだピエロ現れないよ!!」
「………」
この映像の中の私は大人同様、瞬き一つせずに固まっている。
ハルナ「…マイちゃん?」
ハルナの声は徐々に不安そうな声に変わっていった。
『イヒヒヒヒヒ♪ ハ~ル~ナちゃん♪ 久しぶりィィィ 怖い?ねぇ、怖い?♪』
そう言ってクネクネしながらハルナちゃんに詰め寄っていったピエロ。
ハルナ「ひっ」
ピエロの姿を見てガクガク震えて首を横に強く振ったハルナちゃん。
『 う そ つ き 』
その瞬間ピエロの表情は無表情に変わった。
ハルナ「いやッ ごめ…なさい……」
涙を目一杯溜めて謝るハルナちゃん。
『 もー遅い 』
そう言って、何の躊躇いもなく素手でハルナちゃんの眼球をグリグリとほじり出した。
ハルナ「ギャアアアアアァァァァアッ!!!!ぁぁぁあああああ!!」
凄まじい叫び声が響いた。
『 イ~ヒッヒッヒッ♪ ギヒヒヒヒヒ 』
ピエロはハルナちゃんの泣き叫ぶ顔を見て涙を流しながら嬉しそうに笑っている。
片目をほじると、ピエロはハルナちゃんの血まみれの眼球をベロベロと舐め始めた。
眼球に付いていた血がなくなるとそれを見てニヤァっと笑い、再びハルナちゃんの前に座ったピエロ。
「あぁぁぁあ……、ッ い やぁ、やめ……て」
今にも消えてしまいそうな声でお願いをするハルナちゃん。
そんなハルナちゃんを首を傾げてとぼけたような顔をしながら見るピエロ。
そしてそのままハルナちゃんのもう片方の目に手を伸ばした。
「いやああああああぁぁ!!…マ、イ……ちゃん……助…けて…」
ハルナちゃんの悲鳴も聞こえなくなり、ピエロはほじくったハルナちゃんのもうひとつの眼球もベロベロと舐め始めた。
その二つの眼球をお手玉の様に投げて遊び始めたピエロ。
少しして飽きたのか、ムスっとした顔をして二つの眼球を見つめ、ヒョイっと口の中に眼球を放り込んだ。
ムシャムシャと眼球を頬張り、ゴクンと飲み込むと、天井を見上げてヒョイッと飛んで天井に張り付いたピエロ。
私「ハルナちゃん…大丈夫?」
そして私がようやく動き出した…。
『どう?どう?今回のプランなかなか傑作でしょ?♪』
そう言ってコミカルな動きをしてフザけているピエロ。
なんて最低なやつ!!
酷い…酷すぎる……!!
私はピエロに殴りかかった。
今まででピエロに殴りかかったのは初めてで、さすがのピエロも少し驚いていた。
『おぉっと♪ ギヒヒ♪ いいねぇ~ もっともっとだぁぁ♪』
「お前なんか早く消えろッ!!」
きっと今の私の顔は、目が釣り上がり、憎しみに満ちた顔をしているだろう。
ドクンッ ドクンッ ドクンッ - -
!?
突然心臓が強く脈を打ち始めた…。
ハッとすると、ピエロの姿が消え、大人たちが動いていた…
!?
ハルナちゃん!?
ハルナ母「きゃああああああ!!」
すぐにハルナちゃんのお母さんの叫び声が聞こえてきた…
ハルナちゃんの姿は目がくり抜かれたままの状態でした…。
ガク「なんてこった…」
ガクさんは顔を歪ませてボソッと呟くように言った。
私「………」
母「………」
私達は何も言えませんでした。
ハルナちゃんのお母さんは泣き喚きながら、無残な姿になった我が子を抱きしめています。
ガク「マイ…、お前の心にはまだ隙がある。もっと強くなれ!!ピエロなんか怖くねぇ!逆にピエロをビビらせろ!!」
……そんな
どうすればいいの?
ガク「奴がここにいていい存在じゃないのはお前にも分かるだろう?ピエロは子供だ…。お前が教えてやれ。」
私だって子供だよ…
ガク「いい加減にしろ!!目を覚ませ、マイ!早くしないと手遅れになる…。」
心の声が聞こえるガクさんに嘘はつけない…
私の考えてることは全て筒抜けなんだ。
私「…手遅れになる?もう3人もピエロに殺されてるんですよ?」
まだ手遅れじゃないみたいな言い方をしたガクさんに少しイラっとして強く言い返してしまった。
ガク「だからなんだ?人生が終わったか?そうじゃないだろう!ピエロに勝てば見えるものもあるはずだ!!」
ガクさんは顔色一つ変えず、言い切った。
!??
そう言えばリョウ君は!?
リョウ君が倒れた直後、私とハルナちゃんの所にピエロは現れた。
私「リョウ君は??」
リョウ「?どうしたの?ここにいるよ!」
よかった…元気なリョウ君の姿が見れた。
ガク「ようやく周りが見えたみたいだな…。今見えてるものだけに囚われるな。しっかり周りを見ろ。これが最後のアドバイスだ。」
私「最後って…、どうしてですか?」
ガク「次がピエロとの最後の戦いになるだろう。お前ら4人が死ぬかピエロが消えるか…。最終決戦だ」
!!
最終決戦…
いよいよピエロとの戦いが次で終わる…
そう思った瞬間、違和感を感じた…
私「お母さん?リョウ君ママ?…ハルナちゃん?」
私以外の人たちの身体が透けてきている…
!?
一体どうなってるの?
ガク「よくやった!!マイ!!」
!?
突然ガクさんの声が頭に響いた…
目の前のガクさんの口は動いていない…
ガク「お前はピエロへの恐怖を克服しつつある!そして前向きに考え始めた事で、打ち破ったんだ!!」
…何…言ってるの?
ガクさんが一体何を言っているのか全然わからなかった…。
ガク「今、お前がいる場所は夢だ…次……てば はず… だ 頑張 」
私「ガクさん!!」
突然ガクさんの声が途切れ途切れになり最後のほうが聞き取れなかった。
!?
気がつくと周りには誰もいなくなっていた。
ここは私の夢なの?
『ガキがぁああ 最後まで邪魔しやがって キヒヒヒヒ♪ 』
!?
不気味なピエロの声が背後から聞こえ、振り向くといつの間にかピエロがすぐ側にいた。
そしてピエロの隣にはリョウ君がいる。
私「…次は何をするつもりよ…」
『ん~? ず~っと考えてたんだけどぉぉ 呪い殺すなんてのはどう?ねぇ?どう?イヒヒ♪』
そう言って、変な人形をヒョイっと取り出し、パチパチと拍手をしてお辞儀をしたピエロ。
私「リョウ君、大丈夫だからね!」
ピエロの横で震えて涙でグシャグシャな顔をしているリョウ君に声をかけ、私はピエロをギロっと睨んだ。
『おぉ?強くなったねぇ~ マイちゃぁあん♪』
私「なんでこんなことするの?」
『は?楽しいからに決まってんじゃん♪ギヒヒヒ』
私「私達は楽しくない。つまんないからもうあんたとは遊ばない!」
『………はぁああ!? うるせぇぇ… ッ これならどうだ?』
さっきまでのにこやかな表情は消え、眉間にシワを寄せ、鬼の形相へと一変したピエロは人形をヒョイっと上に投げてナイフを3本スッと取り出し、落ちてくる人形に向かってシュッとナイフを投げたピエロ。
ナイフはサクサクっと人形の両目と口の部分に突き刺さった。
『キヒヒヒヒヒヒヒ♪ 見てみて? コイツの顔、見てて♪』
そう言ってリョウ君を指差したピエロ。
!?
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リョウ君の目と口からジワっと血が溢れ出してきた…。
私「!?」
リョウ君…酷いッ!!
ッッ
ダメだ…。
落ち着け…
あまり聞き取れなかったけど…
ガクさんが言った。
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私がいる場所は夢だって言ってた。
今はその言葉を信じるしかない。
私がしっかりしなければ手遅れになる…。
目を閉じて深呼吸をして、呼吸を整え、ゆっくり目を開いてみた。
光景はさっきと変わらない。
リョウ君の目と口からは血が溢れ出している…
その横で薄気味悪く笑うピエロ。
しかし…
今までとは違った。
それは私の感情だ。
今までは怖くて怖くてたまらなかった…。
目の前で友達が酷い目に遭えば自分を責めた。
だけど今は違う…
私「もういいでしょ?いつまでこんなことしてるの?リョウ君は死んだりしないよ?ケンタくんもハルナちゃんも」
『キヒ… 2人はもう死んだ!!こいつも死ぬんだァァ!!』
目が血走り、心なしか顔が垂れ下がっているようにも見える…。
私「ううん。死なない。あなたはもうここにいちゃいけない…」
それでも何故か私の心の中は穏やかだった…。
恐怖も、憎しみも、恐れも何もない。
無の境地にたったのだ。
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『フザけるなぁぁあああ 俺は死なんぞぉぉぉおお… 絶対に死なんからなぁぁあああ!!!』
ピエロは突然苦しみだし、苦痛に顔を歪めた。
これが、ガクさんの言ってた事なんだ…。
私達の感情がピエロの原動力。
私が怖がらなければ、恐れなければ…ピエロは消える。
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見る見るうちにピエロの顔は爛れ、ただの真っ赤な液体になってしまった。
!?
その瞬間、ズンと頭が重くなり、そのまま意識を失った私…。
母「マイ?………イ……マイ!?」
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暗闇でお母さんの声が聞こえてきた。
ケンタ「マイ!起きろよ!マイ!」
!?
ケンタくん!?
視界がゆっくりと開けた。
目の前がボヤけていて最初は何も見えなかったが…、
目が慣れてきて、よく見るとそこには、ケンタくん、ハルナちゃん、リョウ君がいた。
私「……みんな」
私は嬉しくて、声を殺して泣いた…。
本当に夢だったんだ…。
ガク「よく頑張ったな!マイ…」
なんだかついさっきまで一緒にいたはずなのに久しぶりに会った気がする。
ガク「当たり前だろ!さっきまでの俺たちはお前の夢の中の俺たちで俺たちじゃなかったんだから。ただ、俺だけは本物に近かったけどな…」
?
ガク「いいか?おれはお前の夢の中の俺に入り込んで、お前に色々ヒントを与えていたんだ。直接教えちまうと、ピエロに俺の存在を気付かれて追い出されるリスクがあったから遠まわしになっちまったけどな。」
私「でもよかった…みんな無事で…」
ハルナ「違うよ!私達も危なかったの…」
リョウ「そうだよ!マイがピエロに勝ったから俺たちは目を覚ましたんだ」
!?
ガク「そうさ。手遅れになるって言ったのは、こいつらはまだ生きてるって事を教えたかった…。でもお前はバカだから全然気づきやしない。だからしょうがなくここはお前の夢だって教えてやったんだ…おかげで速攻で夢から追い出されちまったがな」
…そうだったんだ…。
私「いつからですか?いつから私は夢を…?」
ガク「お前が遊園地でピエロと会った夢を見たろ?そこからずっと眠っていたんだよ、マイは」
母「マイ、あなた5日も眠ったままだったのよ?」
お母さんは泣きはらした目をしていた。
私「…私、…私ピエロに勝った。……勝ったよ?」
私は涙をいっぱいに浮かべてお母さんに報告した。
そして…
住職さん…私…ピエロに勝ちました…。
弱かった私のせいで、住職さんを助けられなくてすいませんでした。
でももうピエロが現れたって負けません。
ガク「…爺さんもきっと喜んでるさ…」
ハルナ「マイちゃん!ありがとう♪」
ケンタ「マイ、サンキュ♪」
リョウ「マイ、助けてくれてありがとう!」
母「マイ、よく頑張ったわね!お帰りなさい!!」
私「みんな…、ありがとう…。ガクさん、本当にありがとうございました!」
ガク「今日はもうゆっくり休め…」
私「はい!」
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住職さん…
ピエロに勝ちました。
みんなを守ることができました。
住職さん、本当にありがとうございました!
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ガク「…………………」
《終》
作者upa
☆::*Happy-New-Year*::☆
いつも閲覧してくださっている皆様、
今年も、皆様のご期待に添えれるような作品を作ってまいりたいと思いますので、
どうぞ今年もupaをよろしくお願い致します(´・ω・`)
さて、とうとう最終回がやってまいりました!
想像通りだった方、想像と違う結末だった方、それぞれだと思いますが、
皆様の期待に応えられている最終回になっているか不安であります(;_;)
誤字脱字あれば優しく教えて下さい♪
追記
2014年1月のアワードを頂きました!!
本当にありがとうございます♪
皆様の支えられてここまでこれました(*゚▽゚*)
本当に、本当にありがとうございました!!