麦チョコ -世にも奇妙な怪談9-

中編4
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麦チョコ -世にも奇妙な怪談9-

これは、タロウという友人から聞いた話である。

タロウが通っていた小学校には、いじめがあった。

「よくドラマなんかで出てくる、クラス全員vs1人って感じではなかったんだけどな」

いじめっ子3人が1人をいじめる構図だったのだという。

いじめっ子の名前はシュンスケ、コウタ、リョウタと言い、いつもつるんでアキラという小柄な生徒をいじめていた。

「靴を隠したりとか給食を巻き上げたりとか、まあよくあるやつだよ」

アキラは小柄だが、3人は小学生には思えないほど体格が良く、力ではとてもかなわなかった。

いじめのきっかけというのはつまらないもので、きっかけはアキラの左腕にあるアザだったという。

そんなある日のこと、ある騒ぎがあった。

「コウタがいなくなっちゃったんだよ。前の日はたまたまアキラをいじめながら帰ってたからアキラにも聞いてみたんだけど、知らないって言われて」

数日間捜索が続いたが、コウタの行方は分からなかった。

コウタがいなくなってからもいじめは続いた。

しばらくして、タロウは2人が隠れてチョコレートを食べているのに気付く。

「学校ではお菓子禁止だったから、隠れて食べてたんだな。聞いてみると、アキラから巻き上げてたらしい」

食べていたのは麦チョコで、アキラが毎日持ってくるのだという。

癖になる味らしく、2人はしょっちゅうそれを食べていた。

それから数日すると、また別の騒ぎが起こった。

今度はアキラがいなくなったのだった。

コウタの時と違ったのは、置き手紙があったことだ。

手紙は教室にばらまかれており、クラスの全員が目にすることになった。

その中には、今小学校でいじめられていること、いじめっ子の名前、そしてある場所のことが書かれていた。

「そこに大事なものを隠したというんだな。子供って宝探しとか好きだろ。当然、クラスの男子で行ってみることになった」

場所というのは街外れの荒れ地にある小屋で、普段は近寄ってはいけないと言われている場所だった。

が、興奮している小学生男子にはそんなことは関係なく、シュンスケ、リョウタを先頭に騒ぎながら小屋に向かう。

怖がりながらも、小屋のドアに手を掛ける。

ドアはあっけなく開いた。

そこには...コウタがいた。

コウタは小屋の壁を背にして座っていた。

「おっ、コウタじゃん。心配してたんだぞ!」

とシュンスケが声を掛けた。

が。

シュンスケは何かに気付き、その場で嘔吐した。

何が起こったのかとタロウが小屋を覗きこむと、コウタの口から何かがこぼれるのが見えた。

その何かは群れをなして床に落ち、先頭にいた2人の足元に這い寄っていた。

ゴキブリだった。

shake

その場にいた全員が絶叫し、吐きながら逃げ帰った。

「コウタの死体だったんだよ。しかも、何故か体に大量のゴキブリが住み着いててな、中はほとんど喰い尽くされてたらしい」

コウタの死体には首を締められた跡があったものの、結局犯人は分からなかった。

小学生には相当なショックだったため、次の日は学校を休む生徒が多かったが、シュンスケとリョウタはその後も1週間以上休んでいた。

皆が心配し始めた頃、掃除中にある事件が起きた。

それは女子が机を運んでいる時に起こった。

シュンスケの机を少し傾け、持ち上げようとした時だった。

机の中から茶色いものが大量にこぼれてきた。

ゴキブリの幼虫だった。

shake

女子は絶叫し、教室は大騒ぎになった。

シュンスケだけではなく、リョウタの机からも幼虫が発見され、2人はクラスで「ゴキブリ野郎」と陰口を叩かれることになった。

その翌日、クラスにある怪文書がばらまかれ、皆は真実を知ることになる。

怪文書の内容はこうだ。

「みんな、お久しぶりです。アキラです。シュンスケとリョウタだけに教えてあげるのはもったいないので、今日は皆に美味しい麦チョコの作り方を教えてあげます。まずチョコレートを用意します。次に用意するのはゴキブリの卵です。これは普通のゴキブリじゃ駄目で、こういうやつを使います。...」

2人が食べていたのは、ゴキブリの卵だった。

怪文書の最後には、コウタの死体の写真が添えられていた。

「2人は机にあの麦チョコを隠しててさ、それが一気に孵化しちゃってたってわけだよ。あの文書の中身を見ると、真実を2人にも教えちゃったんだろうな。それで多分...あの卵、コウタの死体にいたやつの卵なんだよな」

結局2人はその後一度登校したのだが、「コウタの死体を食べたゴキブリの卵を食べてた奴ら」というのが全クラスに知られてしまい、誰にも話してもらえなかった。

その後、2人は人知れず転校していった。

全てが明らかになった後もアキラは姿を現さず、今でも行方不明らしい。

自殺しているのではないかというのが専らの噂である。

「しかし、暑いねえ」

全てを話し終えると、タロウはワイシャツの袖をまくり上げた。

左腕に大きなアザがあった。

私は、アキラくんの左腕にもアザがあったことを思い出した。

Concrete
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キモコワでした。
最後の最後でまたゾワっと。

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間違いがありました。
人生じゃなくて人物でした。
スミマセン

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