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私の母には、霊感がありました。
私も遺伝したのか、初めてソレを見たのは小学校1年生の時でした。
みんなが授業開始のチャイムとともに着席する中で、見たこともない少女がひとり教室の片隅に背中を向けて立っているのです。
同級生・先生もソレの存在に気付かない様子。
私は帰宅し、母にその事を話しました。
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「ごめんね。〇〇(私の名前)も見える体質になってしまったんやね。」
「見える…?」
母の言葉に私は首を傾げるばかりで…。
幼ながらに記憶に残っているのは母から強く言われた一言。
「これから、少しでもおかしいな。と思う人やモノを見ても、絶対に目を合わせたらあかんよ。」
そんな幼少期を経て、中学生になり、高校生になり、ソレを見ることに何の抵抗も感じなくなった私は、母の教え通りに「目を合わせない」を守り、日々を過ごしていました。
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そんなある日のこと、その年一番の大雨で、普段学校へは自転車で通学していた私ですが、あまりの雨足にバスで登校することにしました。普段、バスで通学している友人とともに、二人掛けの席へ腰を据え、バスが発車し暫く経ったころ…足元に言いようのない寒気を感じました。
「ああ…いつものアレか…。」
そう思って無視を決め込んでいた私でしたが、何故だかその日はいつも感じる感覚とは違い、とても恐ろしく、冷たく、ソレの正体をこの目で見たくなってしまったのです。窓側に座っていた私はチラリと友人の座っている側の足元へと視線をやりました。
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そこには、ボロボロの服を着た少年が三角座り(体育座り)で、無機質に無気力に友人を見上げていたのです。
「ああ、この子はヤバいやつだ。」
直観的にそう悟り、窓の外へ視線を移したのち、友人の話も半分に「早く着け。早く着け。」とそう思うばかりでした。
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ようやく到着のバス停が見えた時はホッとし、早くこのバスから去りたいと気持ちだけが先走ってしまったのか…私は不覚にも席を降りる際、ソレを跨いでしまったのです。
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「しまった…!」
心中穏やかではない私は友人の手を引き、慌ててバスから降りました。
後ろを振り返ってもソレはおらず、「良かった…。」と思い、降りたバスを見てしまったのがいけなかったのです。
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ソレは今まで私たちが座っていた席の窓から私を見て先程とは裏腹に薄気味悪く笑みを浮かべていました。
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_目を合わせてはいけない。
それは霊に「自分が見えている人と思わせてはいけない。」ということです。
あの時、不覚にも跨いでしまった私は…
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あれからずっと、私の傍にはソレがいます。
もう10年も前の話です。
作者雪-2
初投稿です。
駄文ですが読んで頂けると幸いです。
※実体験より