中編5
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おさななじみ

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これは地元の幼馴染のお姉ちゃんから聞いた話です。幼馴染のお姉ちゃんを直ちゃんとします。

直ちゃんとは5つ離れている私にとっては憧れの存在でした。何をするにも後をついて歩いて、直ちゃんの部屋はお洒落で可愛くて自分も部屋を持てたら直ちゃんみたいな部屋にしたいと思っていました。そんな直ちゃんも今では3人目を妊娠する立派なママです。そんなある日直ちゃんとお茶をしようという事になりました。

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直ちゃんとはしばらく連絡を取っていなかったので直ちゃんの家に行くのは本当に久しぶりでした。

やっぱり直ちゃんの家はおしゃれで『子供が散らかすから汚いよ』とは言っていたものの家の中は広くアンティーク調の家具がとってもおしゃれでした。素敵なバラの絵が描かれているティーカップを差し出されその話は始まりました。

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ある日直ちゃんは子供が家の近くの公園で遊んでいたので夕方迎えに行きました。すると直ちゃんの子供は誰かもうひとりの女の子と遊んでいたのです。

近所の子であれば幾度か見掛けた事もあったでしょう。しかし直ちゃんはその子を見たことがなかったそうです。

「お友だち?」

「うん」

「お名前は?」

しかしその女の子は直ちゃんの顔を見ているだけで何も言ってくれなかったそうです。

それが段々不気味になってきて直ちゃんはその女の子をその場に置いて家に帰って来てしまったそうです。

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家に帰って来た直ちゃんは息を整えると一抹の不安が胸をよぎったそうです。

もしあの子が普段虐待をされていて家から出してもらえなかったら?話せないのは普段から虐待をされているショックから?もしまだあの公園に居たとしたら?

直ちゃんは真っ暗な道を走り公園へ向かったそうです。もしまだあの子が公園に居たのなら…抱き締めてあげてウチに連れて帰っておいしいものを食べさせてあげよう。暖かいお風呂に入れてあげて暖かいお布団で寝かせてあげたい。

しかし夜の公園は空っぽでした。

もうそこには誰も居ませんでした。

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それからも直ちゃんはあの女の子を度々あの公園で見かけるようになりました。

直ちゃんの子供も楽しそうに会話をするのも何度も見たそうです。

危なげな大人でもないし、直ちゃんの子供もなついていたということもあり直ちゃんはしばらくその子の様子を見ていたそうです。

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そんなある日直ちゃんは夢を見ます。

森を途方もなく歩く夢。

ただただ知らない見たこともない森をさ迷い、見つけたのは…あの“女の子”でした。

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女の子は一生懸命直ちゃんに話し掛けていますが、直ちゃんは何を言っているか分かりません。

そんな所でいつも目を覚ましてしまうのだそうです。

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そんなある日直ちゃんはその女の子に名前を訊ねました。

「ねぇねぇ、お名前なんて言うの?」

女の子は直ちゃんの顔を見てしばらくはきょとんとしていました。

「私は直実っていうのそれでこっちが息子の航太」

女の子は直ちゃんの顔をやっぱり見つめているだけでした。次の言葉を直ちゃんが紡ごうとした瞬間…

shake

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ニタァ…と、女の子が笑うのです。

嫌な感じのする笑い。

あんな表情が果たして子供に出来るのだろうか?

直ちゃんの思考回路がぐるぐると錯綜する中、女の子は体の向きをクルッと変え砂場に戻っていきました。

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その夜もやっぱり直ちゃんはあの夢を見たそうです。知らない森をさ迷い辿り着くのは必ずあの女の子の場所。

そしてパクパクと女の子は直ちゃんに話を掛けるがやっぱり聞こえない。

あれ?しかし直ちゃんは気付いてしまうのです。

女の子との距離が前よりも縮まっていることに。

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そんなある日実家に帰るため航太くんを連れて道を歩いていたそうです。

実家の近くにある何でもない交差点。

ふと直ちゃんは立ち止まったそうです。

何故なら…目線の先には…

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あの女の子が立っていたから。

車が行き交う中、女の子のいる場所だけがまるで時が止まったかのように見えたそうです。

そして直ちゃんは思い出すのです。

あの日の出来事を…。

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直ちゃんがまだ小さかった時の話です。

直ちゃんには同い年の幼馴染みがいました。

幼稚園が一緒だったり、ピアノの教室が一緒だったりでいつでも一緒に行動をしていたそうです。

そんなある日直ちゃんとその子は些細なことで喧嘩をしてしまったそうです。

あの子が悪いわけじゃなかったのに直ちゃんは幼馴染みの子を咎めたそうです。

「ごめんてば」

「知らないよ!!」

「許してよぉ…」

「もう大嫌い!!ついてこないで!!!」

直ちゃんはその子を突き放したそうです。

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我に返った直ちゃんが後ろを向くと横断歩道の向こう側に幼馴染みの女の子が立っていたそうです。

一生懸命直ちゃんに伝えようとしていますが、聞こえず直ちゃんは歩を進めました。

その瞬間です。

ガシャン!!!

shake

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次の瞬間にはもう幼馴染みの子は血まみれで…

息をしていなかったそうです。

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あぁ…全て思い出した。

あの子は私の幼馴染みの…『サトミ』だ。

公園で息子と遊んでいたあの女の子も横断歩道の向こう側にいたあの子も夢の中のあの子もみんなみんな“サトミ”…。

何故今まで思い出せなかっただろう。

息子はまだ幼い。幼い子は幽霊が見えるというが

私にもサトミは見えた。

サトミが大人になった私に会いに来てくれたのだろう。ならば次に会った時に謝りたい。

しばらくはいつもの公園でもサトミちゃんには会えず夢も見なくなっていたそうです。

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そんなある日念願の夢を見る事が出来たそうです。

直ちゃんは謝りたくて女の子を必死で探しました。するといつも様子で女の子が登場したそうです。

いつもよりも近く…間違いなくその子は『サトミちゃん』だったそうです。

サトミちゃんは直ちゃんに近付きぎゅっと抱き締めるとこう言ったそうです。

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『ぜったいにゆるさない』

music:5

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あれから直ちゃんはサトミちゃんのお墓にお参りに行ったそうです。

口をパクパクさせ直ちゃんに伝えたかったもの…

直ちゃんはショックだったそうです。

それから直ちゃんはサトミちゃんの月命日に必ずお墓に行っているそうです。

あれからサトミちゃんに会うことも夢を見ることもなくなったそうです。

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