短編2
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愛しい我が子

子供って、可愛いですよね。

特に自分の子供となると。

よく今が一番可愛い時期だねって言われるけど、

えっ?年が経つに連れ可愛いく無くなるのか!?

そんな疑問を抱いていた。

16年前。

僕に子供が授かった。

最初はシワシワの顔に驚き、あまり抱く事も無かったが、日に日に僕にそっくりになって行く君に夢中になっていった。

1年後。

ある日突然、君は歩き出した。危なっかしい足取りで僕に向かって来る君が、とてもいとおしかったんだ。

2年後。

ようやく言葉を話す事が出来るようになった。

パパ、チュキ。パパ、チュキ

僕は四六時中、君を抱きしめキスをしたんだよ。

4年後。

保育園に入園した君は、保育園に行くのを嫌がり毎朝泣いて僕を困らせた。

僕は心配で、心配で仕事に手が就かなかったんだ。

7年後。

いよいよ小学生。小さい体に大きなランドセルを背負って、嬉しそうに「いってきま〜す」

って、トコトコ学校へ行ってたね。君の姿が見えなくなるまで、僕が見送っていたのを気付いていたのかな?

10年後。

やっと苦手だったトマトが食べれるようになったね。あの時の誇らしげな君の顔を、今でも忘れてはいないよ。

12年後。

君は初めて僕を批判したよね。

だって、君がママを困らせたから…。

あの夜、僕とママは2人で泣いたんだよ。

13年後。

君は最近、僕に話し掛けてくれなくなったね。

僕が色々と君の嫌がる事を言うからかな?

でも、みんな君の為を思っての事なんだ。

分かって欲しい…。

14年後。

最近君は家に帰って来なくなったね。

何処で何をしているのか?

ママが病気で入院したのを知ってるのだろうか?

君の元気な声だけでも僕に聞かせておくれ。

15年後。

君が人を傷つけたって、警察署から電話があった時は本当に悲しかったよ。

入院中のママに何て伝えればいいか、幾日も悩んで眠れぬ日が続いたんだ。

君はそんな事気にもせずに、毎晩何処へ行っていたんだい。

僕は、僕は……。

16年後。

ママが亡くなった。

君はママの葬式の日も帰って来なかった。

何だか僕も疲れていて、涙も出なかった。

その夜、君は帰って来るなり僕に酷い事を言った。

お願いだから今日だけは僕を困らせないで。

だって、きっとママが見てて悲しい思いをするじゃないか。

だから今日こそは、僕は親らしく居ようと思った。

全て君の為に…。

君が産まれた日の事。

君が立って歩き、初めて言葉を言った日。

君の成長を見守り続けて来た16年間。

ごめんね。

君は僕の全てだった。

君をこんな風にしてしまったのは、僕の責任だったのかもしれないね。

ごめんね。ごめんね……。

僕はそっと、我が子の首に掛けた手を解いた。

ごめんね………。

怖い話投稿:ホラーテラー 番番爺さん  

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