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某月某日、某所に於いて刺殺体が発見された。
第一発見者は当時7歳の少女であり、
信じられないほどの可愛らしい笑顔を神様から与えられていたその女の子は、
私の友人の娘さんであって、
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そうしてこの体験によって残念ながらあの笑顔は、
彼女の心のどこか深くに、
信じられないほどの深くに沈んでしまった。
人間とはどのような動物か、
学ぶにはあまりに幼すぎたのだ。
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遺体は某県在住29歳会社員の女性。
盆に帰省した際の独り歩きの夜道を通り魔に襲われ、
腹及び胸を集中的に腕や脚、脊椎や臀部そして顔など全身を包丁で計68ヵ所刺されており、
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犯行現場近くの民家前に設置されていた花壇のブロックで頭部を潰されて頭蓋に穴が空き、
それによって露出した脳には13匹の蝉が埋め込まれていた。
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徒歩5分のコンビニへ牛乳を買いに行ったはずが手ぶらで帰ってきた娘の報せを受けて、
父親が先ず単身で現場に出向き損壊された遺体を確認。
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警察に通報してパトカーが到着するまでのあいだ、
彼は産まれて初めて聴く音に耳を支配されていた。
人間の脳に刺さった蝉の、
どこまでも高らかな鳴き声だ。
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case1:犯人
金魚など
真菜板で屠り
流す宵
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月の浮き
根拠不明の
殺意在り
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浴びて酒
造り悪しきの
酔いに映え
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項垂れて
髪切虫の
羽根毟る
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懐に
刃を隠したる
新聞紙
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獰猛の
辿り着きたる
裏路地は
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case2:被害者
盂蘭盆会
終えて抱きぬ
宵の雲
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独り道
蜩を踏み
迫りしは
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はらわたに
差し挟まれし
風ぬるし
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地にて血の
踊太鼓を
聴きしかば
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暑さ失く
送り火の影
解夏の刻
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走馬燈
世を憐れむも
哀れかよ
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case3:第一発見者
笑みの子よ
夕凪に浮き
逞しき
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冷蔵庫
届かぬ手にて
求めしは
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冷える胸
慣れた道とて
送れども
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帰りしは
逞しき笑み
失せし君
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鳴き散らす
蝉が居たとて
泣き散りし
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犯人は自称自営業44歳の男。
住居である2階建て一軒家の2階にはミイラ化した母親の遺体が放置されており、
認知症の父親はベランダで暮らしていた。
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1階浴室では腐乱した遺体が発見されたのだが、
その全身は緑色のペンキで塗りあげられていた。
身元の判明が出来る状態ではなかったが、推定では十代女性である。
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裁判では証拠不十分で余罪が追及されず責任能力が争点とされたが、
判決は懲役12年。
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「なぜ遺体の頭部に蝉を挿入したのか」
裁判で問われた際に、男はこう応えた。
「素晴らしい俳句が浮かびましてね、
メモしておいたんです」
作者肩コリ酷太郎
お久しブリーフ!
今朝いきなり俳句の日であることに気づいたので、
夜勤明けに俳句で怪談を創ってみました。
久々に楽しく書けましたが、
面白いかなぁ……。